【ニューロッジ島】船着き場
『ラム』ゼフィオン国防衛隊を指揮する不老不死の隊長。
『ゲニス』ニューロッジ島で診療所を営む所長。
巳の刻。ラム、ゲニス、ニューロッジ島の、船着き場にて。
『ゲニス』なるほど……、では女王の魔術によってここまで飛んできた、というわけか……随分と一兵士に厚く構うではないか……、危険な状態だというのに。
『ラム』ええと、この兵士、一体何を言っているんだ、と受け取られるかもしれませんが……私、女王と永遠を誓った仲なので……。
『ゲニス』…………。
『ラム』ええ……まあ、その辺りの話は追々しますよ。船はもうすぐ来るのでしょう?
『ゲニス』ああ、そうだな……、感謝しろ、私に漁師の友人がいて、運が良かったと思え……、でなければ公的機関に頼るしかないからな……、そうなると今から二刻ほど待つことになる。
『ラム』はい。……それにしても、魔法をあっさり信じるんですね。
『ゲニス』む、……と言うと?
『ラム』ゼフィオンでこそ魔法の存在は十分に浸透していますが、中には魔法の存在を認めない人間も、少なからずいるので……。
『ゲニス』ほう……、まあ、そこに関しては、何も不思議なことはない……、世界のレベルで見れば、徐々にではあるものの、魔法でさえ科学的な解明が進んでいるのだ……、未知の存在から既知の存在となりつつあるのだ……既に魔法は、信じられない意味不明な何か、ではないのだよ……。
『ラム』へえ……そうなんですか……。
『ゲニス』そうとも……、……しかし……まあ、……不死身の人間となると……話は別だな……、令状にそこら辺の詳細が書かれていなかった辺り、お前さんとこの女王はそこそこに狡猾な奴らしいな……、不死身という言葉に戸惑われ、逃げられるような事態を避けるため、あえてその事実を伏せたのだろう……。
『ラム』まあ、……結果的にそれは、いらない考慮でしたけどね……。
『ゲニス』まったくだ……未知から逃げる研究者はいない、ということを、女王はわかっていないのだな……。
『ラム』考える時、自分を基準にしがちなんですよ、彼女。
『ゲニス』む……、そんなことを言って、後々女王に首を刎ねられても知らんぞ……。
『ラム』ええと……ま、まあ、その辺の諸々はまた後で……。あ、ほら……あれじゃないですか、船……来ましたよ。急ぎましょう……。




