【ニューロッジ島】島で唯一の診療所・三
『ラム』ゼフィオン国防衛隊を指揮する不老不死の隊長。
『ゲニス』ニューロッジ島で診療所を営む所長。
辰の刻。ラム、ゲニス、ニューロッジ島の、島で唯一の診療所にて。
『ゲニス』ゼフィオンの王でも何でも、私にとっては他人以外の何物でもない……どこかの誰かが死のうと私には関係のない話だ、悪いが帰っていただきたい。
『ラム』もちろん無償でとは言いません。治療が成功した暁には多額の報酬を……。
『ゲニス』金などいらぬ……私をそんな下卑た人間だと思っているのなら失礼な話だ……立ち去れ。
『ラム』あなたを説得させ、ゼフィオンにお連れするのが、この私に任された役目です。まだ立ち去るわけにはいきません。……あなたは医者なのでしょう? せめて、患者を診るくらいのことは……。
『ゲニス』違う。
二人、沈黙。遠くの方から微かに何かが沸騰する音が聞こえる。
『ラム』違う……と、言うのは……?
『ゲニス』はー、そうだ……私がさっきから気に食わんのは、お前さんが私のことで、少々勘違いしていることだ……すべての話がそれを前提として進んでいることだ……牽強付会がすぎている……それが非常に不愉快なのだ。
『ラム』それならぼ、ぜひ、教えてください。私は何を勘違いしているのですか。
『ゲニス』私は医者ではない。
再び沈黙。遠くの音も聞こえず、辺りは静寂に包まれる。
『ラム』え……。
『ゲニス』わからぬか、私は医者ではないと言っているのだ、私は研究者だ、医者ではない……研究者だ……。




