【城下町】情報屋・四
『リト』ゼフィオン国を治める女王。
『ココ』王城に仕える料理人。
『シニカロレイヴ』情報屋を経営する女性。
巳の刻。リト、ココ、シニカロレイヴ、城下町の、情報屋にて。
『シニカロレイヴ』はい、確かに。まいどあり~。……ところで、そこの子にも、諸々知る権利があるのではないかい。話に付いてこれていないようだけれども。
『リト』……そう、ですね。私から説明させてください……ココさん、シニカロレイヴさんは、千里眼の持ち主なのです。
『ココ』千里眼……。
『シニカロレイヴ』ふふふ、信じられない、って顔だね。そりゃあ、そうだろう。でもね、ココくん……ああ、私は君の名前を知っているさ、当たり前だろう……よく考えてごらん。そこにいらっしゃるお姫様は魔法を使うだろう。そこにいらっしゃるお姫様しか、魔法は使えないだろう。それと同じことさ。彼女には魔力があり、私には千里眼がある。彼女のことを魔法使い、と呼ぶのなら、さしずめ私は超能力者さ。当然君は姫様の魔法を信じているだろう、同じように、私のこの力も信じてほしい。私なら、そう考えるね。
『リト』あら、急に寛容になったのね、情報に関して。槍でも降るのかしら。
『シニカロレイヴ』なあに、女王様の身内には、できるだけ多くの人間に私のことを知っておいてほしいだけさ。たとえそれがコックでもね。……私も一度、君の料理を食べてみたいよ。さぞ美味なことだろうね。
『リト』……あなたが昨夜のうちに、城に来てくれてさえいれば、私は兵を遣わすことなく、迷うこともなく、あなたに頼ったでしょう。襲撃であなたが死んだとは思いませんでしたよ。あなたがそう簡単に死ぬような人物でないことは……知っていますもの。
『シニカロレイヴ』お褒めにあずかり光栄の至りだよ。嬉しいね。
『リト』あなたは、村の住民たちに逃げるよう呼びかけることさえしなかった。襲撃のことを私に伝えようともしなかった。それどころか、あなたは、私の捜索術を全て回避して、今まで姿をくらましていた。いえ、それだけじゃない、あなたは一週間前も、全てを知っていながら、知らぬ存ぜぬを突き通した。あなたに少しでも良心があれば、ことは一週間前で終わっていたというのに……理由は問いません。余分な出費がかさむだけです。……あなたの捜索をすぐに切ったのは正解でした。
『シニカロレイヴ』なんだい、怒っているのかい。可愛いね。私が男だったら惚れているよ。
『ココ』ま、待ってください……あなたは、シニカロレイヴさんは、あの村にいたんですか? 知ってほしいというなら、教えてください。
『シニカロレイヴ』うむ。そうとも。私は……。
『リト』この方は、あの村の住人でした……一昨日までは。
『ココ』お、一昨日まで? つまり、村が襲撃されることを知っていて、だから、事前に逃げることができた……っていうことですか?
『シニカロレイヴ』うん、そうだよ。その通り。だから言ったろう、私は見ていたのさ。すべてを見ていたのさ。私はすべてを把握している。




