【城下町】情報屋・三
『リト』ゼフィオン国を治める女王。
『ココ』王城に仕える料理人。
『シニカロレイヴ』情報屋を経営する女性。
巳の刻。リト、ココ、シニカロレイヴ、城下町の、情報屋にて。
『ココ』え……姫様は、このお方をご存じなのですか?
『リト』ええ……。シニカロレイヴさんとは三年ほど前に繋がりを持ちました。私から、彼女に助言を求めたことがあるのです……。
『ココ』三年前……それって……。
『シニカロレイヴ』その話はいい。まさか、こんな場所までわざわざ思い出を語りに来たのではないのだろう、お姫様。さあ、用件を聞かせておくれ。まあ、私には大体の予想はついているがね。おおむね、また助けを求めて、遠路はるばるここまで来たのだろう。ご苦労なことだね。王家の人間に、どころか、現王に、私はそんな苦労をさせてしまったとは罪なことをしたものだ。本当ならもっと広くて、人通りのいい、日当たりのいい場所に店を構えたかったのだけど、ははは、そううまくはいかなくてね。こんなじめっとした所からの出発さ。まったく、いやになっちゃうね。私としては……。
『リト』シニカロレイヴさん、ことは刻一刻を争います。申しわけありませんが、その話はまた後日お聞かせ願います。どうか今は、私の話を聞いてください。
『シニカロレイヴ』おおっと、あっはっは、これは失礼。ついまたわるい癖が出てしまったようだ。失礼失礼。して、ご用件は何かな。聞かせていただこうじゃあないか。
『リト』シニカロレイヴさん、昨夜、一つの村が襲撃されました……当然、あなたも知っているはずです。
『シニカロレイヴ』ふふふ。ああ、知っているとも。知っているとも。当然だろう。
シニカロレイヴ、ココの方を向き、自身に満ちた表情で薄く笑う。
『シニカロレイヴ』見ていたからね。




