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聖戦に舞う不死鳥たち  作者: 戯画葉異図
幕外 済世劇
305/346

『異変』

 我々が問題視するのはここから起きた出来事だ。「我々」というのはもちろん私、シニカロレイヴと、そこに突っ立ってる管理人、ヴォルシアだ。正確にはもっと人数はいるのだが、まあ、この二人がその代表という認識で結構だよ。それでいい。


 私は今から、ノイズレッドが絶望に叩き落され、悲しみに暮れて永眠草を喰らい、そしてそこから何が、どんな事態が発生したのかを、分かり易く説明したいと思う。


 まず始めに、道端で倒れている彼女を発見したのはヴォルシアだ。彼は偶然そこを通りかかった。偶然ね。


 彼は至極真っ当に驚くとともに、そのとき受け持っていた任をすぐさま放棄して彼女を町に連れ帰った。城下町の医者に診てもらい、彼女が永眠草を喰らった可能性があると告げられた。意識はなく、生活反応も乏しく、だが心臓は動いている。呼吸もしている。まるで眠ってしまったよう。そして口内にはわずかだが植物の破片が残っている。そんな人間が森で発見されたとなると、まず考えられたのが永眠草だ。


 医者の判断は全く正しい。私が後押しをしてあげられるね。


 さて、本来ならば彼女はそのまま医者のもとで治療を試みたりするのだが、ヴォルシアはそれを断った。断って、「私に任せてもらえませんか」と提案した。これは異例の申し出だ。医者は始めこそ当惑するも、彼の裁量、技量、その他云々の力を承知していたので、彼の提案に従うことにした。


 彼はちょっとした有名人なのさ。なあに、君たちは知らなくてもいいことだ。教える義理もないね。


 では彼は何故、ノイズレッドを引き受けたのか。それは、彼がとある異変に気が付いていたからに他ならない。彼はその異変に彼女が関係しているとみて、彼女を引き受けたんだ。異変の原因究明とでも言うのかな。


 ほら、よくあるだろう。推理小説とかでさ、犯人を突き止めるために、いろいろと調査を進める場面。それと同じさ。異変の原因を探るために、異変に関係していると疑われている彼女を調べる。


 ……あははは、一体何の異変なのか、まだ言ってなかったね。でも、それを説明しようとすると、それはひどく難しい話になってきてしまうんだ。「ズバリ、何々の異変だよ」の、何々に当てはまる適切な言葉が存在しないんだ。完璧な言語化が不可能、言葉にできない概念さ。ああ、本当に不便だよね、言葉って。


 だから私は仕方なく、妥協案として、最も近似しているであろうこの単語で代用するより他にないんだ。


 ズバリ、世界の異変だよ、って。

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