【城下町】城へと続く大通り
『ココ』王城に仕える料理人。
卯の刻。ココ、城下町の、城へと続く大通りにて。
『ココ』兵士さんたちに出す昼食の材料がちょっと足りないから買ってこい、だなんて……。僕、完全にパシリにされている……。はあ……、こんなことで、一人前の料理人になれるのだろうか……。……ええと、あれと、これと、それと、……うん、たぶん大丈夫、買い忘れはない、っと……。……ん……?
二人の通行人、向こうから歩いてくる。
『第一の通行人』本当さ! 俺も信じらんないよ! 嫁の誕生日に何を買ったらいいかってきいたらさ、その店の人、銀のブレスレットを買ってあげなさいって言うんだよ。しかも、すぐに、って。そんでさ、ものは試しだ、って思って、急いで買ったんだよ。アイツ、ブレスレットが欲しいなんて素振り、一回も見せたことないのに、いざプレゼントしたらさ、それはもうお喜びだよ。飛び跳ねて、どうしてわかったの? って。
『第二の通行人』そんな話があるか? いかにも嘘くさい。たまたまじゃねーの?
『第一の通行人』たまたまでそんなの当たるかよー。
『第二の通行人』じゃあ、ほら、お前の嫁の知り合いだった、とか。だから欲しがってた物も知ってたとか。
『第一の通行人』いやいや、あの店は本物だ。何でも教えてくれるね。何だったら今度、お前も行ってみろよ。ほら、あの裏通り。あるだろ。あそこにひっそり建ってるからさ。
『第二の通行人』あそこに? 店なんかあったかな。
『第一の通行人』それが最近できた店らしくてな。店主も若い女だった。……なんか怖かったよ。
『第二の通行人』はあ? 何言ってんだ、お前。
『第一の通行人』いや、まあ、行けばわかるよ。何というか、こう、威圧的なんだよな。すげーベラベラ喋るし……。
二人の通行人、通り過ぎる。
『ココ』……へえ、あの場所、お店ができたんだ。知らなかったな……。でも、ただのお店ではないっぽいけど……。僕も今度行ってみよっと。




