【王城】女王の書斎・六
『ラム』ゼフィオン国防衛隊を指揮する不老不死の隊長。
『リト』ゼフィオン国を治める不老不死の女王。
未の刻。ラム、リト、王城の、女王の書斎にて。
『ラム』皆が同じ考えですよ。一様に、天罰はまだか、と。兵達を含め、民も訝しんでおります。女王様はお優し過ぎる……、同じ不老不死の人間として、奴等に情が移ったのではないか……と…………。……これでは、城門に人波が押し寄せて来るのも……時間の問題かと……。
『リト』……情ねえ……。分かってるわよ……。
『ラム』姫様……方向転換をした先も、また道です。
『リト』……いいえ。絶対に、絶対に、しない。このまま……このまま進むの……。
『ラム』…………。
リト、窓辺に立ち、風に当たる。
『リト』……私は……優しくなんかないのに……。
『ラム』……どうしてそう思う?
『リト』だって……だって、優しくないんだもの。他人を傷付けてばっかりだし、嘘も吐くし、馬鹿だし、能無しだし……。……私くらい心の汚れてる人……そうそう居ないわよ……。
『ラム』……他人を傷付けない人は居ないし、嘘を吐かない人も居ない。完璧な人も居ないし、万能な人も居ないよ。人はそんなに……凄くない……。
『リト』……凄くない……。でも私は……王様なのよ……。私が凄くなきゃ、私が凄くなきゃ……どうするって言うのよ……!
『ラム』君は王様である以前に、一人の女の子だろう? リトがそんなに苦しむ必要は……。
その時、一枚の紙片、風に乗って部屋に舞い込む。
『リト』…………何かし……?
『ラム』待って、僕が拾う。
ラム、床に落ちた紙片を拾い上げる。
『リト』……どう……? ただの……紙……?
『ラム』………………いや。
ラム、紙片の一面をリトに見せる。
『ラム』……メッセージだ……。
直後、部屋の扉が勢いよく開く――一人の防衛隊兵、慌てた様子で入室。
『リト』な、何事ですかっ⁉
『防衛隊兵』姫様っ、た、大変ですっ! 獄中の、女の方がっ、女の方がっ!
『ラム』落ち着け、何が有った!
『防衛隊兵』き、急に……急に……、苦しみ出しました……!
ラム、リト、瞬時に、顔を見合わせる。




