【王城】東の牢獄・二
『ラム』ゼフィオン国防衛隊を指揮する不老不死の隊長。
『ライブド』ミーグとコンビを組む不老不死の少女。
辰の刻。ラム、ライブド、その他防衛隊兵二人、王城の、東の牢獄にて。
『ライブド』ミーぃぃ! へ、返事っ、返事を……してくれぇぇ……! 会いたい……会いたいよ……、あ、会わせろ……! ミー! ミー! 何処……⁉ 何処だよ……⁉ ミーにっ……、ミーに……会わせろぉぉぉ……!
『第一の防衛隊兵』す、少しは静かにしろ……。無駄だ……いくら叫んでも……。
『ライブド』ミーぃぃぃ……!
『第二の防衛隊兵』……放っておけ。いずれまた消耗して、静かになる。
『第一の防衛隊兵』………………。
『ラム』……私はもう行く。次の交代時間まで、くれぐれもよろしく頼んだよ……。
『第一の防衛隊兵』は、はいっ。
『第二の防衛隊兵』お任せ下さい。
ラム、退場。
『第二の防衛隊兵』……とは言ったものの、やはり、……不安は残るな……。
『第一の防衛隊兵』ああ……。
『第二の防衛隊兵』あんなにピリピリした隊長、初めて見たかもしれん。
『第一の防衛隊兵』俺も……。
ライブド、未だ静まらず、頻りに叫ぶ。
『第二の防衛隊兵』……まあ、それが普通だよな……。
『第一の防衛隊兵』……見ろよ、コイツ、……泣いてやがる……。
『第二の防衛隊兵』あ? ああ、…………あの相方がそれだけ……大切なのだろうな……。あっちは城の挟んで反対側だ。声なんて、届くはずも無いのだがな…………。
『第一の防衛隊兵』こんな奴……本来ならば死んで良いはずなんだ……多くの人間を殺してきたんだから……即刻死刑が妥当なはずなのに……。
『第二の防衛隊兵』お前、姫様の意向に反対するのか。
『第一の防衛隊兵』違う……。死刑制度の廃止には……俺も反対はしてねえ……。でもよぉ…………でもよぉ…………悔しいじゃねえか…………。コイツと……あのガキと、二人で……何人が死んで……何人が悲しい思いをした…………。悔しいじゃねえか…………。
『第二の防衛隊兵』……何にしても、コイツは死なない。死刑執行は不可能だ。……何だったら今、ここで、お前がその牢に入って、そこの悪魔をズタズタにしてもいい。敵討ちのつもりで、殺すつもりで手を汚せばいい。でもそれは無意味だ。すぐに治っちまうからな。コイツは今、武器を持ってないし、……誰にもバレないぜ……。
『第一の防衛隊兵』なら、餓死させれば……。
『第二の防衛隊兵』兎に角っ……。
『第一の防衛隊兵』俺が気に食わねえのはそれだけじゃない……。理解出来ねえのは、厨房の奴等とかがよぉ……人殺しなんかの為に飯作ってるって事だ……。どうしてだよ? なあ? どんな感覚してたらそんな、そんな事……。
『第二の防衛隊兵』落ち着け。殺人鬼共を許せない気持ちは分かる。ここに居るのが怖いのも分かる。でも、お前がここで平常心を失っても、何にもならんぞ。……どころか、それによってコイツが逃げるような事になったら、それこそ、お前の望む顛末ではないだろう……。いいから、落ち着け……。
『第一の防衛隊兵』………………。
『第二の防衛隊兵』……お前と……お前と同じ感情を……、姫様も抱いている。姫様だけじゃない。皆、同じだ。皆、コイツ等を許せない。でもな、だからと言って、悔しいだのどうのと考えてても、埒が明かないんだよ。死んだ人が蘇る訳でもないしな。だから皆、各々自分なりのけりを付けて、為すべきことを為してるんだ。……それだけなんだ……。
『第一の防衛隊兵』………………。
『第二の防衛隊兵』姫様がきっと、お前の納得するような結末まで……事を運んでくれるさ……。
第二の防衛隊兵、第一の防衛隊兵の肩に手を置く――振り払われる。
『第一の防衛隊兵』分かってんだよ……そんな事……。俺だって………………。
『ライブド』…………。




