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聖戦に舞う不死鳥たち  作者: 戯画葉異図
第四幕 推断し、向かう。
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【城下町】城へと続く大通り・七

   午の刻。旅人、城下町の、城へと続く大通りにて。


『旅人』おお……ここからでも見える……なんと立派な城であろう…………。……しかし…………他の国の城に比べれば、むしろ小さい方か…………。ここの王は、慎ましやかな人物と見えるな…………。話を聞いてくれると良いが………………。………………む…………、人ごみが………………。何か…………有ったのだろうか………………。


   旅人、人ごみの中の一人――商人だろうか――に話しかける。


『旅人』失礼、何か有ったのですか?

『商人』え? あ、ああ、そうなんですよ、実は。

『旅人』宜しければ、教えて頂けませんか?

『商人』いやね、さっき……と言ってももう半刻くらい前なのかな? ……に、そこを女兵士が通ったんですよ。今ここに集まってるの、商売仲間なんですがね、それで、その時も我々はここに居たんです。私、女兵士なんて珍しいものも居たもんだな、って。思ってたらですよ、その女兵士に、誰かがトマトを投げたんです。

『旅人』トマト?

『商人』ええ。可笑しな話でしょう。しかしこれが笑えない。と言うのも、そのトマト、どうも我々の方から飛んでったらしいのです。…………いやいや、まあ最後まで話を聞いて下さい。トマトが投げられた、その直後、すぐに別の兵が、二人ほど来ましてね、我々に問いました。誰が投げた、誰か投げる瞬間を見てはいないか、と。私としては、ここに居る連中がそんな、子供じみた事するはずねえよな、って思いましたし、実際、その全員が、私は投げてないし見てもいない、と答えました。兵士は何回も我々を問い詰めましたが、それでも返事は変わりません。でもそれじゃあ、変です。トマトが勝手に飛んでった事になっちまう。そんな不可思議話、銅貨一枚にもなりません。……あ、あんた、買いますかい?

『旅人』い、いえ……結構です……。

『商人』はあー、まあ、そうだよな。まあまあ、そんな事はいいや。ええと、何処まで話したっけ。……ああ、そうそう、それで、我々の返事が一向に変わらないのを知って、兵士達はそれで帰って行きました。まあ、仕方無いですな。えーっと、それからです、今話していた問題は。我々だって、どうも納得がいかなくてね。変な疑いをかけられて、正直気分は良くない。商売そっちのけで、誰だ誰だと騒いでいた処です。

『旅人』ふむ、確かに妙な話ですね。

『商人』でしょう? 女兵士に当たったトマトの位置からして、確かに方向は我々の方なんです。それは認めますがね、我々だっていい大人ですよ。子供じゃあないんだ、子供じゃ……。

『旅人』ええ、それは勿論そうですが…………ん?


   旅人、不意に、誰かに足をつつかれる――子供。


『商人』何だ何だ?

『旅人』どうかしましたか。何かご用でも?

『子供』えと…………あの…………僕、見たんです…………。

『商人』何っ、犯人をか?

『子供』あ……、ち、違います…………そうじゃなくて……犯人じゃなくて…………その…………。

『旅人』……何を見たんです?

『子供』……えっと……その……トマトが……飛んでる瞬間を…………。何処ら辺から……飛んできたのか……を……。

『商人』な、何だってっ。それで、何処から?

『子供』………………あっち………………。


   子供、指差す。


『旅人』……や……屋根の……上………………ですか………………? ……あっ………………。

 どういう事でしょうか。

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