【王城】厨房へと続く廊下
『ココ』王城に仕える料理人。
『ファセット』王城に仕える料理長。
巳の刻。ココ、ファセット、他数名の料理人、王城の、厨房へと続く廊下にて。
『ファセット』………………。
『ココ』………………………………。
『ファセット』……ふうむ、お察しするに、何か考え事が有るようだね。
『ココ』えっ…………いえ、そんな事は…………。
『ファセット』ううん、その顔は絶対にそうだ。間違いない。君は分かり易いからね。
『ココ』そ、そうなんですか? じゃなくて、えーと、大した事じゃありません。つまらない事です。
『ファセット』だとしても、私は放ってはおけない質でね。教えてよ。
『ココ』ホントに大丈夫ですよ……。
『ファセット』まさか、やっぱり買い忘れが。
『ココ』違いますから。…………分かりました、言います。実は先程、買い物が終わってお店から出た時、リレイドを見たんです。
『ファセット』ははーん……、君の嫁の。
『ココ』止めて下さい、結婚はまだしてないです。
『ファセット』……もしかして、浮気を疑っているのか。
『ココ』一言も言ってないです。
『ファセット』ならどうしたと言うんだ。見ただけって言うのなら、別段不思議な事も無いだろう。彼女も、休憩時間の買い物に来ていただけなのかもしれないじゃないか。
『ココ』それが、そうではないっぽくて。
『ファセット』ほうほう、と言うと?
『ココ』誰かを尾行していた様なんです。
『ファセット』尾行?
『ココ』はい。でもそれが、誰を尾行しているのかが分からなくて、それが気になっていたんです。それだけの話です。
『ファセット』成程。つまり要約すると、私にはどうしようもない考え事だ、と言う事だね。
『ココ』まあ、そうですね……。
『ファセット』よし、ならばこの話は終わりにして、さあ、早く厨房へ戻ろう。
『ココ』そっちから言えと言ったのに。
『ファセット』聞こえない聞こえない。ほら、急ごう。
『ココ』……はい。




