【王城】書庫
『リレイド』ゼフィオン国に仕える遊撃隊兵。
子の刻。リレイド、王城の、書庫にて。調べる。
『リレイド』……。…………。……あー、ダメだ。ダメだ、ダメだ、ダメだ。欲しい情報がどこにもない。この事件は絶対に、ただの事件じゃないと思うんだけどなあ。何かしら関係の深そうな、そんな前例があると思ったんだけどなあ。何かこう、常識では考えられないようなことが絡んでいる気がする。駄目もとで来たものの、二時間頑張って一切収穫なしはキツイよ……はあ、もう真夜中じゃん。明日早いのに……寝よ寝よ……ん? 誰……?
足音――セルミニト、入室。
『セルミニト』む……誰かいるのかね?
『リレイド』大臣! どうされたのですか、こんな夜中に?
『セルミニト』おお、そなたは遊撃隊の……。ええと、リレイドと申したかな?
『リレイド』は、はい。こんな一兵士の名前を憶えていただいたこと、真に光栄であります。
『セルミニト』そんなに畏まるでない。ここは公の場に非ず。それにおぬしは、おぬしが思っている以上に有名人なのじゃぞ。女性が兵士の道を選ぶのは、今時珍しいからのう。……どうした、という質問じゃったな。なあに、少し調べものじゃよ。一週間前と今回の、一連の事件についてな。して、リレイド殿は?
『リレイド』わ、私も同じにござ……同じ、です。何か有益な情報がないものかと……しかし、私は何も見つけられませんでした。歴史書などを読んでも、過去にこのような襲撃が起きた事例はないようで……大臣は、どのようにお考えですか? 今回の事件のこと……。
『セルミニト』どのように、か。難しい質問じゃのう。わしにはわからぬ。わからぬからこそ、ここへ来た、とも言えるの。じゃが、分からなくとも直感はできる。そしてこういう時のわしの直感は、大体当たるのじゃ。……当たってしまうのじゃ……。
『リレイド』では……では、大臣は……何を感じましたか?
『セルミニト』……これがただの事件でないことは、わしやそなただけでなく、他の者も感じているじゃろう。このじじいの直感はな、この事件、ただでは終わらぬ、と告げておるのじゃ。しきりに、強く、無視できないほどにな……。




