【王城】料理人の為の控室・一
『ファセット』王城に仕える料理長。
巳の刻。ファセット、他二人の料理人、王城の、料理人の為の控室にて。
『第一の料理人』自分は最初の一年で、皿を五枚は割りましたよ。
『ファセット』五枚? なら、私の時よりも全然少ないじゃないか。
『第二の料理人』え、そうなんですか?
『ファセット』うん、私は、私がこの仕事に就いてからの一年で、少なくとも十枚くらいは割ってしまったよ。当時の料理長にこっ酷く叱られたもんだ、……うわあ、懐かしい。
『第一の料理人』へえ、それは意外です。料理長もミスする事って有るんですね。
『ファセット』そりゃ有るさ。今でこそ大分改善されたものの、新人時代の私は手先が器用でなかったからね。お皿の件以外にも、いろんなミスをしたよ。
『第二の料理人』しかし今では、立派な料理長だ。この国のリーダーである処の姫様も唸る料理をお作りになられる方だ。自分は貴女のその才能が、素直に羨ましいですよ。
『ファセット』才能かあ……。それは、私にはあまり縁の無い言葉だな。
『第二の料理人』またまた、ご謙遜を。
『ファセット』謙遜じゃないさ。事実だよ、事実。
『第一の料理人』……じゃあ、才能と言う言葉と縁の有る人間って、料理長の知っている中だと誰か居ますか?
『第二の料理人』あ、私達二人以外で、ね。
『ファセット』ははは……うーん、そうだなあ……。
ファセット、何も無い宙を見上げて思案。
『ファセット』……やっぱり、ココが一番……かなあ……。




