【暗い森】外れ・一
『イドマ』謎の女性。
亥の刻。イドマ、暗い森の、外れにて。
『イドマ』……すっかり……夜ね……。ああ、星が綺麗…………。
イドマ、暫く夜空を見つめる。
『イドマ』……さ、行こう……。取り敢えずはこれで……、これで、一段落かな……。
と言う訳にもいかないのが、あの子達の物語なのさ。
『イドマ』……⁉ …………貴女でしたか…………今晩は。どうしたんです、こんな夜分遅くに、如何されましたか? ……シニカロレイヴ様。
シニカロレイヴ、登場。
『シニカロレイヴ』やっほー。こんばんわー。いやいや、どうと言う事は無いさ。何も無いさ。あはは。まあ、強いて言うのであれば、夜はやっぱり冷えるねー。人の身である私には辛いよ。ははは。
『イドマ』…………ふふ、貴女の人外嫌いも、変わりは有りませんね。
『シニカロレイヴ』おやおや、何を言いますか。私にそんなプロフィールは有りませんぜ。むしろ、あなたの様な強大な力を持つ者は好む方さ。後、頭の良い奴もね。
『イドマ』戯言を……。貴女だって、半分は人外の様なものです。
『シニカロレイヴ』半分は人外! あはははは。ちょっとだけ、他人より目が良いだけさ。視野が広いだけさ。うむ、それだけの事なんだ。私はちゃんと、人間だよ。あなたとは違って、ね。
『イドマ』ご用件は何です? まさか、こんな夜更けに、雑談に興じようと言う魂胆で?
『シニカロレイヴ』その、まさか、さ。その通りだよ。いやあ、察しが良くて助かるねえ。
『イドマ』お褒めに与り光栄の至りで御座います。しかし私は、貴女とはもう会わないつもりでした。
『シニカロレイヴ』それは残念だ! 私の方は、再び会う気で満ち満ちていたよ。
『イドマ』貴女と成立させた交渉の全ては、もう既に終わりを迎えたはずですが?
『シニカロレイヴ』ごもっとも。だから今私は、お約束事の続きでここに居る訳じゃあない。
『イドマ』では何故。
『シニカロレイヴ』言ったろう、雑談さ。嘘偽りは何処にも無い。あなたと話したくて来たのさ、イドマさん……いや、今ならば、こう呼ぶべきかな。マディさん……。
『イドマ』………………。
『マディ』…………ふふ…………。
『イドマ』やはり…………。
『マディ』気付いておられましたか…………。
『イドマ』…………やはり貴女には…………。
『マディ』適いませんね………………。




