一話 なんで無音
突然、世界から音が消えた。
まだ日が高いのに、車の音がしない。ついでにいうと無音になった。
耳を澄ませても、遠くからキーンと聞こえるような耳鳴りがするだけだ。
いつもなら部屋まで飯が届けられる時間なのに、こない。
やむなく部屋を出て、久し振りにリビングへ降りる。
誰もいない。
これは困ったな~。なんて口に出しつつ冷蔵庫から材料を取り出してチャーハンを作ってテーブルに置く。
テレビを点けてもノイズがはしるばかりだ。スマホで動画を見ようとしてもなぜかインターネットが繋がらない。ダウンロードしていたゲーム実況を見ながら食べ終えると、俺は部屋に戻った。
◇
おかしい。
夜になっても、その次の日も、車一台だりとも通らない。
テレビは変わらずノイズ、インターネットも変化なし。
そろそろ暇になってきたし、着替えて家から出た。
住宅街の一角、のび太の家みたいな家から出た俺は、異常に気づいた。
誰もいない。
慌てて近くのコンビニに飛び込んだ。
誰もいない。
「誰かいませんか!」
返事はない。
「……」
やべえ、なんだこの状況。
途端に怖くなってきたぞ。
と、とりあえずエロ本とかその他諸々の食糧を持って帰ろう。
もちろん万引きになるんだろうが、誰もいないんだからいいよね。
そう考えてから、ある事に気づいた。
人がいない世界=俺童貞のまま。
これは拙い。そう考えた俺はアダルトグッズ専門店へと足を進めた。
◆
よっしゃー! 見つけた! ラブドール!
これがあれば性欲発散は完璧だね! やったね!
とりあえず家に持って帰って、他の物を漁ろう。




