flannel
『あんな、死ぬってどんな感じやろ?って最近考えるねん。』
彼女はぐっと伸びをして、つま先に手を伸ばしながら言った。
『うちのおねぇの友達がな、こないだ死んだんて。ほんならな、うちのおねぇ学校で授業中に号泣したらしくて早退してきたんよ。』
『家でもずーっと泣いててな、ようそんな涙でるなーて思うて、別に親友でもないんに。』
そう言いながら彼女は靴下を脱いで上履きの上に放り投げた。
高所の強い風に迷惑そうな顔をしながらスカートを押さえて彼女はフェンスのまえで深呼吸をしてから小さく呟いた。
『…こんな高いとこ怖くて飛び降りるん、無理やわ。』
その場にしゃがみこむとスカートの下に着ている体操着のハーフパンツがちらりというよりも大胆に覗いた。
女子に動きやすいと近頃はこの格好が流行っていたようだった。
『あんな、うち転校生やんか?しかも関西弁やし浮いてるやん。』
『やから窮屈やねん、女子もみーんな固まっとるし、一応グループには属したけどもやな、それも自ら進んでってわけやないし。』
『あ、こないだな先生なんて言うたと思う?』
《仲良し3人組ね》
『なーんもわかってへん。』
『女の3人組なんて一人はおまけみたいなもんやん。2人が歩いてる後ろに一人でくっついて歩くんやで?』
『ほんなんただの子分やん。』
『だーれもうちの気持ちわかってくれへんねん。』
『せやから山之内くんがおった時は良かったな。距離感絶妙やったもんなぁ。漫画の話もできたし、あとゲームも。』
彼女はコンクリートの床にそのまま寝転び話し続けた。
『なーんで死んでしまったん。』
『しかも飛び降りて。』
『めっちゃ痛かったんちゃうの。』
『漫画返せてないんやけど!』
『あと、続き貸してぇや。』
『泣かれへんでごめんな、あんまり悲しないねん。暇つぶしの相手いなくなって残念やなとは思ったけどな。』
『なかなか最低やなぁ。うち。』
『なぁ、どないなん?死んだ後。死後の世界とかあるん?あとなんや、輪廻転生とか。』
『死人にくちなしか。』
『山之内くん、何が嫌やって死んだん?全然そんな素振りなかったやんか。』
『あ、あかん授業始まってまうわ。』
そう言いながら彼女は慌てて靴下を履いて上履きを乱暴に拾った。
屋上の重いドアが開かれ彼女はその中に吸い込まれていった、中は真っ暗で見えない。