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6/10

その5

前回、ちょっとやりすぎたので(笑)R-15指定に変更デスw


今回は--さてどうでしょう?(^_^;)

 

       8

 

 ズッ……ドドドドドーン! バキバキバキバキ、ドドーーーン!!


 そのすさまじい大音響にハッと我に返ったフランが、目の前に拡がるガルガンテス軍の惨憺たる有り様を見て、おそるおそる口を開いた。


「……あれって、ひょっとして、私がやった……の?」

〈すげぇだろ? これが《イグニッション・バースト》。《霊子エネルギー》の燃焼を全開にすることで、瞬時とはいえ圧倒的なパワーを生み出すオレの最強攻撃形態。まぁ《マスター》の承認無しでやったから、腕力だけの限定解放ではあったケド、《重力制御システム》とセットであんな魔獣一匹投げ飛ばすぐらいはちょろいもんさ〉


 へへん、と得意げなゼー太だったが、しかしそんな声はフランにはちっとも聞こえていない。


 フランはただ呆然と、ガルガンテス軍もろとも背中から地面にめり込んでいるギガ・ゾームと、赤い籠手パーツに覆われた自分の小さな手の平を見比べていた。


(こ……こんなバカ力……王子に見られちゃったら……)

 空中に浮いたまま、そーっと、地上に目を向けてみる。


 ぶっ壊れた天井の下で、エルフリード達は揃いも揃って、あんぐりと口を開けて上空を見上げていた。


 かぁーっ、フランの顔が再び真っ赤になる!


〈どーした? 赤くなっちゃって。もしかしてまた悪戯して欲しくなったとか?〉

「バカなこと言わないでよ! あ~ん、もう私のイメージ台無しだわ! あんな恥ずかしい姿も見られちゃったし、もうエルフリード様に合わせる顔がないよぉ! それ以前に、これじゃあもう絶対お嫁にすらいけないもの~!」


〈じゃあいっそオレがもらってやろーか? って、いてーっ!!〉

 ガンガンガンガン!! 思いっきり胸バーツを殴られて、悲鳴を上げるゼー太。


 だがその頃、仰向けになったギガ・ゾームの甲羅の隙間から、鎧をボロボロにした男が一人やっとのことで這い出してきた。


 ガルガンテス軍司令ドランである。


「し……死ぬかと思った……」

 ぜーはーと荒い息を吐くドラン。実際、彼が率いてきたガルガンテス兵はほとんどが圧死か衝撃波で吹き飛ばされ戦闘不能になっており、彼が助かったのは本当にたまたまにすぎない。まともに動けそうな兵はもはやせいぜい100名ぐらいだろうか。


「お……おのれ、あんな小娘ごときに~!」

 その小娘ごときに為す術無くやられた屈辱に、ギリギリと歯がみをするドラン。


 だがこの戦力ではもはやレルムの残兵たちにさえかないそうにない。頼みの綱のギガ・ゾームは生きてはいるが、短い足を空に向けじたばたさせるのみという実に情けない有り様である。


 が、そのとき……不意にドランの後ろから、まるで地獄の底から響くような怨念に満ちた声が聞こえてきた!


「よくも……よ~くも私の可愛いギガ・ゾームを~」


「ゲ、ゲルガ! 生きておったか!?」

 だが、振り返るドランには視線を合わせようともせず、ゲルガはただ空中に浮かぶフランをひたと見据えて、ワナワナと身体全体を震わせながら叫んだ!


「ここまで……コケにしてくれおったなぁ~!!」

 その瞳の奥で、狂気に近い鬼火が燃えあがる!


 彼ら魔獣使いにとって、自らが《同調シンクロ》することで操る魔獣は自分の半身も同然であり、そしてその圧倒的な力こそが彼らの誇りであった。


 それをあんな小娘に、まるで犬の子か何かのように放り捨てられるとは……!!


「殺す……絶対に殺す……殺してやるぞぉぉぉ!!」

 あふれんばかりの憎悪を込めて叫ぶゲルガ。そしてゲルガは額につけたサークレットに手を当てると、怒りの念波をギガ・ゾームに送った。


 それまではひっくり返った状態のまま戻ることができず、わたわたと情けなくもがくのみだったギガ・ゾームの様子が、その念波を受け取った瞬間にガラッと変わった。その6つの瞳は赤く凶暴な光を取り戻し、鋭い牙をはやした3つの口元からも、グルルルル……と獰猛なうなり声が漏れる。


「ゆけ! ギガ・ゾーム! 最強の魔獣の力を見せてやるがいい!!」


 キシェウーン! 《魔獣使い》の命令に、魔獣が咆哮を上げる! そして身体こそ仰向けにひっくり返ったままではあるが、その3つの竜の口がまるで竜巻のごとく息を吸い込むと、一瞬の不気味な沈黙の後、岩をも溶かす灼熱のブレスが、猛然とほとばしり出た!


 ゴオオオオオッ!!


 三本の炎の槍は大気を焦がし、まだ空中でケンカしている少女とそのプロテクターめがけて一直線に突き進む!


「え……きゃぁぁぁぁぁ!?」

 ゴオウッ! 悲鳴を上げるヒマもあればこそ、まるで蛇が獲物を一飲みにするかのように、ショックで固まるフランの姿が炎の奔流の中に消えていく。


「やった……」

 ヒヒヒ……ゲルガが低く、陰気に笑う。そんなゲルガに軽く引くものを感じながらも、ドランもまた勝利を確信して空を焼き焦がす勢いの業火を見上げた。


(あんな、なめまわしてやりたいような……もとい人をなめくさった露出度の甲冑ではどうすることもできまい。こうなってみれば少し惜しい気もするが、あの小娘もこれでお陀仏……)


 --だがいかんせん、その甲冑はただの甲冑では無いのであった。


 炎が引いた後も、火傷一つどころか髪の毛一本焦げた様子もなく、ふわふわと宙に浮かんでいるフランを見て、ドランのアゴがまたもやカクンと落ちる。


「あ……あは……あはは……最強の魔獣の力が……あはは……」

 その横では再びプライドをズタズタにされたゲルガが、力無く笑いながら半ば呆けたようにぶつぶつとつぶやいていた。


 だが、その一方、ガルガンテス軍の司令官と魔獣使いに精神崩壊レベルの衝撃を与えた、甲冑の少女はといえば--


「こ……怖かった……よぉ……」

 そうつぶやくと、宙に浮かびながらも、へなへなと全身から力が抜けてへたりこんでしまうフラン。無事だった安心感もあってか、その瞳に涙がじわりとにじむ。


〈ホント、お前ってばビビリだなぁ。だからオレの《霊子フィールド》は鉄壁だっつーの〉

「そういう問題じゃないわよぉぉぉ!!」


 たとえ体感温度まで含めて身体への直接ダメージは無くても、燃え盛る炎に全身を包まれるなんて経験は、あまりしてみたい類のものではない。呆れたようにつぶやくゼー太に、フランが憤然と抗議した--まさにそのとき!


 バシィィィンン!! 突然、鞭のようにしなる魔獣の尾が、気をそらしていたフランの胴を勢いよくなぎ払った!


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 不意打ちで喰らった強烈な打撃に、少女の身体が軽々と吹き飛ばされる!


「と、止めてぇぇぇぇぇ!!」

 悲鳴をあげながらクルクルとコマのように回転するフラン。だが、それでも《エルガイザー》の機体制御システムの力もあり、フランはかろうじて地面に激突する前に体勢を立て直した。


「と……止まった……」

 ホッと胸をなで下ろすフランだったが、しかしその目の前に拡がる光景に気が付くと、再び「ひっ!?」と息を飲んだ。


 ギガ・ゾームの自在に伸びる6本の尻尾が、まるでそれぞれが凶暴な大蛇のように、フランの周囲を取り囲んでいた。さらにその背後からは、魔獣の3つ頭が長く首を伸ばしてこちらを赤く光る目でにらみつけている!


 そこはやはり旧世界の《バイオ・テクノロジー》が生み出した最強の生物兵器、魔獣ギガ・ゾームである。たとえ命令を与える《魔獣使い》が呆けていたとしても、戦うために造られた魔獣の闘争心はいささかも衰えてはいなかった!  


「あ、あははは……」

 思わずひきつった笑みを浮かべて後ずさるフランに、ギガ・ゾームの6本の尾が一斉に襲いかかる!


「きゃ、きゃああああ!?」

 尖端をドリル状に回転させながら突進してくるギガ・ゾームの尾を悲鳴と共に避けながら、フランが空中をあたふたと逃げ惑う。だが6本の尾の同時攻撃はさすがに全て避けきれるものではなく、1発2発と少女にヒットし、そのたびにフランの身体はあちこちに吹き飛ばされていった--が、


(そっか……でも痛くないんだ--)

 逃げ惑い、はね飛ばされながら、ふとそのことに気が付いた時、パニック寸前だったフランはハッと我に返った。


 これだけの攻撃を立て続けにくらいながらも、そこは《エルガイザー》に守られているおかげで、衝撃はあっても相変わらずほんの少しの怪我も痛みもない。


 確かにすっごく怖い。怖いんだけど、でも痛くないんなら……別に平気かも!


 人一倍臆病で弱気なフランの心にもようやくささやかな自信が生まれ、フランは後方に飛び退いて体勢を立て直すと、ギガ・ゾームの赤く光る6つの瞳を負けじとにらみ返す。


 そうよ、私は今までのダメな私じゃ無い。今の私はエルフリード様たちを守る《エルガイザーの戦士》! さっきはあの魔獣だって--覚えてはないけど--投げ飛ばしたんだから、怖がらずに立ち向かえばきっと何とかなるはず!


「ねぇゼー太! そういえば武器みたいなものはないの? たとえば剣とか!」

 そうなると根が真面目だけにがんばろう!という気持ちになって問いかけるフランに、ゼー太はあっさりと答えた。


〈んなもん無ぇよ。オレは近接攻撃特化仕様、それも直接打撃型の《エルガイザー》だからな。なーに男は黙ってこの拳一つで勝負さ〉

「……あのー、私、か弱い女の子なんだけど……」

 格好つけたように笑うゼー太に、思わず苦笑いを浮かべるフラン。


〈まぁその代わりオレの打撃力はエルガイザー中でも最強クラスだからな! あ、パンチじゃ不満ならキックってのもあるぜ?〉 

「大して変わんないじゃ--きゃっ!?」


 またもやゼー太と掛け合い漫才になりかけたところで、今度はギガ・ゾームの竜の首の一つが牙をむいて襲いかかってくる!


 だが、こうして少し落ち着いてみれば、《エルガイザー》によって強化された感覚でならその動きは十分捕捉することができるものだった。フランは緊張しながらも、敵の動きをしっかりと認識した上でかわしてのけると、「えーい!」と思い切ってその右拳を突き出した!


 バキィィィィィ!! それは打撃としては完全に腰の引けた、いわゆる猫パンチレベルのものであったが、しかし《エルガイザー》の《攻撃補助プログラム》の助けも借りたその一撃は、過たず魔竜の左頬に突き刺さり、そのまま大きく吹き飛ばした!


「や、やった……☆」

 正直言って、何かを殴るなんていう経験は生まれて初めてのことだったが、その思わぬ威力にフランは小さく歓声を上げた。


 続いて、尾の内の3本が立て続けにフランに襲いかかってきたが、今度はさらに落ち着いてそれをかわすと、そのうちの1本に蹴りを叩き込み、見事にその尖端を破壊することに成功する!


(やれる! これだったら私だって--戦えるよ!) 

 ギャース! 尾の1本を破壊され、苦痛の叫びを上げるギガ・ゾームの姿に、確かな手応えを感じてやる気を高めるフランだったが、ところがそのとき、不意にゼー太が不満そうにため息をついた。


〈……やっぱダメだな。これじゃあ正直つまらん〉


「……え?」

 何だかまた急にイヤな予感がして、フランは自分の身体を守る赤いプロテクターを見つめる。


〈何て言うかさ、ぶっちゃけチートすぎるんだよなー、これじゃあせっかくのバトルシーンなのにどうにも緊迫感が無いというか……〉


「ね、ねぇ、ちょっと! 何の話してるのよ??」

 ぐんぐん膨らんでいくイヤな予感にうろたえるフランだったが、相変わらずゼー太は少しも耳を貸す様子もなく、一人ぶつぶつとつぶやき続ける。


〈やっぱせっかく観衆もたくさんいるんだから、もっとサービスするべきだよな。うん、決めた! そうしよう!〉


「ねぇ、ちょっと!? 何するつもり--」

 その妙にウキウキとした声の響きに、イヤな予感どころかもはや確信的な危険を感じて、フランがゼー太を問い詰めようとした--まさにそのとき!


 キシェウゥゥゥン! 尾の一本を破壊され怒りに燃えるギガ・ゾームが、高らかに咆哮すると同時に総攻撃を開始した! 


「わ、わわわわわわわわ!?」

 一斉に襲いかかる5本の尾を、不意を打たれたフランは慌てながら何とか4本まではかわしたものの、最後の1本がその右足に勢い良く絡まる! そして魔獣の尾は少女の右足パーツを万力のような力で締め付けたかと思うと、続いてその身体を上空に向けて勢い良く放り投げた! 


「きゃあああああああ!!」

 さらに上方に投げ飛ばされたその身体に対し、待ち受けていた魔竜の首の1つがはたき落とすような強烈なヘッドバットをかます! かろうじて腕をクロスさせて防ぎはしたものの、フランはそのまま軽々と吹っ飛ばされ、轟音と共に地面に叩きつけられた!


 あああああ!! あまりの豪快なやられっぷりに、戦いの行方を固唾を飲んで見守っていたレルムの人々の口から思わず悲鳴があがる。


「……ゆ、油断しちゃった……」

 相変わらずダメージこそは無いものの、さすがに頭がくらくらして、砂塵の中よろめきながら起ち上がるフランに、だが少しの間も置くこと無く、次々とギガ・ゾームのドリル尾が襲いかかった!


「きゃ、きゃあああああ!!」

 何とか空に飛び上がってかわしたものの、逃がすものかとばかりにドリル尾がそれを追尾する! その攻撃をあるものは避け、あるものははじき返しはしたものの、再びその一撃がプロテクターの胸部に激しく命中し、衝撃にフランは大きくのけぞった。


(だめ! いったん距離を置かなきゃ--!)

 咄嗟にそう判断したフランは、そのままのけぞりながら大きく後方に飛び退くと、姿勢を制御し直しつつ、はぁはぁと乱れた呼吸を整えた。


 そして再び空中で対峙する《エルガイザーの戦士》フランと魔獣ギガ・ゾーム--!


 --一方、地上ではいつしか正気を取り戻したゲルガが、その光景を喰い入るようにして見つめていた。


「ギ……ギガ・ゾーム……お前というヤツは……」

 その闘志あふれる姿に、ゲルガの目から思わず熱い涙があふれ出す。


 そうだ、我々はまだ負けたわけではない。彼の半身である魔獣が戦意を失っていないのに、《魔獣使い》たるこの自分がそんなことでどうするのだ! ゲルガは自分の心に喝を入れると、再び額の《サークレット》に手を当て、念を込めた。


 ギラッ! 《魔獣使い》からの念波を受けて、ギガ・ゾームの6つの瞳が、更なる凶暴さを見せて赤く輝く。そんな魔獣の姿を頼もしげに見つめながら、ゲルガはニタリと陰湿な笑みを浮かべて見せた。


 --しかもどうやらあの小娘の鎧とて、どうやら無敵というわけではないらしい。攻撃が『効き出した』というのなら、攻め続けてくれよう!


「うむ! さすがは最強の魔獣よ! やるではないか!」

 その背後から、司令官のドランがむさ苦しい顔を乗り出してきた。何故か望遠鏡を右目に当てたドランは、興奮した様子で視線を上空に向ける。


「間違いなく『攻撃は効いている』ぞ! ゲルガよ、この機を逃さず、どんどん追撃を加えるのだ!」


 その叫びを受けて、その背後に控える生き残りのガルガンテス兵も、そうだー! 『効いてるぞ』! がんばれー! と一斉に拳を突き上げる。まるでさっきまでの意気消沈ぶりが嘘のような盛り上がりっぷりだった。


(……? ど、どうしちゃったんだろ、急に?)

 何だかやけに敵側のテンションが上がっているのを見て、空中に浮かぶフランはきょとんと首をかしげた。


 そういえば《エルガイザー》に聴力を増強されている耳にはさっきからやたらと『効いてる』という単語が聞こえてくる。でも、相変わらずかすり傷どころか、痛みすら感じていないフランには、そう言われても全然ピンとこない。


 まぁ確かに胸のあたりはまだ、さっきの攻防の余韻にドキドキしてるけど--って、え、胸のあたり??


 瞬間、急激にイヤーな予感が襲ってきて、フランはそーっと赤いプロテクターに覆われた自分の胸元を見下ろした。


 そして、そんな少女の目に映ったのは--


「--え”?」

 自分の形良くふくらんだ左胸を覆うプロテクターが、いつの間にか大きく砕け、ひび割れている。いやそれどころか1/3ほどはすでに剥がれおち、その真紅のプロテクターの隙間からは雪のように白い胸のふくらみがのぞくと同時に、その淡いピンク色をした先っぽの一部までもが、ぽろり☆と顔をのぞかせていた!


「きゃ、きゃあああああああ!?」

 魔獣から逃げ惑っていた時とは違う種類の悲鳴をあげて、瞬時に顔を真っ赤にしたフランが両手で胸を抱えてうずくまる!


 道理でガルガンテス兵達がやけに興奮しているはずだった。そしてその目がみな、殺気とは何か違った形でギラギラと血走っていたのも、つまりはそういうことだったのだ! 


「あ~ん、見られちゃってたなんて、最悪だよぉぉ!」

 気が付かないうちにそんなきわどい姿を人目にさらしていたなんて……できることなら消えてしまいたいぐらいの羞恥に泣きべそをかくフランだったが、やがてハッと重要なことに気が付いて、自分が装着する《エルガイザー》のあちこちに視線を走らせた。


「……!?」

 こうして気が付いてみれば、破損しているのは左胸のパーツばかりではなかった。ザッと点検しただけでも、籠手状の両腕のパーツ、そしてブーツ状の右足パーツにも大きくヒビが入り、胸パーツと同じく一部が欠落している。


 振り返ってみれば、それはついさっきのギガ・ゾームとの攻防で、攻撃を受けた箇所ばかりだった。全然痛みを感じなかったから平気なつもりでいたけど、もしかして《エルガイザー》は--というかゼー太は、私をかばいながら自分自身は酷いダメージを受けていたの??


〈……いや、別にそういうわけじゃないんだけどな〉

 そんな彼女の動揺を察したかのように、それまで沈黙していたゼー太の思念がフランの頭に伝わってくる。


「で、でも、あちこちが壊されちゃってるよぉ!?」

 しかしそこは元々心優しいフランである。ひび割れ、破損したプロテクターに、傷つき、苦痛にうめくゼー太の姿をついつい重ねてしまい、泣きそうな顔でそう叫ぶ。


 だが、次のゼー太の一言が、そんなフランの優しい心を、実にあっさりと打ち砕いた。


〈あ、これ? これは《実戦演習モード》用の演出なんだよね〉


「------え?」


〈いやな、《エルガイザー》はあまりにも防御力がありすぎてさ、ついつい《使用者マスター》が戦闘の緊迫感を無くしてしまい易いっていう欠点があるんだよね。だから実戦訓練をする時には、わざと攻撃を受けたらその部位が破損するようにして、緊張感を高めるっていう風にするのさ。まぁあくまでも演出であって、オレ自身は別にほぼノーダメージなんだケドな〉


 そういってケラケラと笑うゼー太に、しばらくの間ピシッと凝固していたフランが、やがてわなわなと震え出す。


「……な……何でそんなことする必要があるのよぉぉぉ!!」

〈えー、だってこの方が面白いじゃん? やっぱエロピンチなサービス展開は、こういうバトルにおいては基本だよねー☆〉


「あ……あ……あなたっていう人はぁぁぁぁぁ!!」

 つい先ほど感じていたイヤな予感の正体が、まさかこんな悪だくみだっただなんて! しかも一瞬とはいえ、本気でこいつのことを心配したと言うのに!!


 と、さすがのフランが思わず激昂の叫びをあげた--まさにそのとき!


「--!?」

 不意に色んな意味で本能的な身の危険を感じ、ビクッと動きを止めたフランが、しばらくして恐る恐る顔を上げる。


 そしてその瞳が、爛々と赤く輝く6つの魔竜の瞳とバッタリと合い、さらにはその周辺にやる気満々の5本のドリル尾が今まで以上に勢い良く回転しているのに気が付いたとき--フランは思わず引きつった笑みを頬に浮かべると、次の瞬間、声を限りに悲鳴を上げた!


「き、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 そしてその悲鳴と共に空中をあたふたと逃げようとするフラン。


 だが、まるでその悲鳴を引き金とするかのごとく、その瞬間、ギガ・ゾームの3つの竜の首と5つのドリル尾が、逃げ惑うフランに向かって一斉に襲いかかっていった!

次回完結予定デス! ただし掲載は未定!(苦笑)

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