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7話 旅で団欒

 上中下の3話構成で考えてたのに収まりそうにない…。

ぐだぐだですが、それでも宜しければどうぞお読みください。

「ぐっ!……はぁ…はぁ、あ、あったま痛っ」



 フミアキが目を覚ましたのは翌日、頭の中を鈍痛が走る事で意識が戻る。

 ベットに寝かされている事に気付き、ゆっくりと頭を上げて部屋を見渡す。



「……やれやれ、どう言った魔法かね。なんとも懐かしい」



 この場所は、2年前までフミアキが使わせて貰っていた部屋だった。



「移動中、熊?事故って…気が付いたらグリゴスさん家って。何がどうしてこうなった」



 起き抜けの頭に鈍痛を抑えて、意識が途絶える前を思い返す。

 記憶を掘り起こす事と、鈍痛がせめぎ合って、暫し思考停止に陥る。




「あ、兄ちゃん!起きたんだね!」



 そこへ、何とも高い子供の声が元気よく張られて、フミアキが改めて悶える。



「お、おはよう…グリス君?ちょっと声抑えて貰えますかね」



「あ、ごめんね。どう起き上がれそう…?」



 つい口を突いて出てしまった言葉に後悔する。

 子供に取って声が高い事も大きく声が出てしまうのも当たり前の事であり、まして自分を心配しての行動で尚更である。



「すいません。少し頭が痛くて、ですね。もう大丈夫なので気にしないで下さい」



「朝ご飯だけど、どうする?部屋まで持ってこようか?」



「いえ、それには及びません。グリゴスさんにも挨拶しないといけませんから」



 やんわりとグリスの提案を断り、登る痛みを表情筋に力を入れて黙らせる。

 心配そうにこちらを見てくるも、子供に気を使わせない様に何時も通りを装う。



「おう、やっと起きたか、とっとと飯にするぞ」



「お久しぶりです。グリゴスさん、それに、パルさん。お二人とも変わりないようで」



「あらあら、フミアキ君は相変わらずねぇ。もう、身体の方は大丈夫なの?何時も思うんだけど、無理しちゃ駄目よぉ。フミアキ君は何にも言わないんもんだからおばさん心配になっちゃうのよ。どう、向こうでいい人でも見つかったかしらぁ。仕事の方は順調みたいなんだけど、偶にはこうやって顔出してくれると嬉しいわぁ。そうそう、前もって言ってくれるとフミアキ君の好きな物用意するだけどね、突然だったもので、あんまり大した用意も出来なくてごめんねぇ。あぁ、でも身体に触るから、朝は軽くしておいた方がいいかしらぁ」



「だぁ!母ちゃんはちっとは黙っとれ!話が進まんぞ、お前も突っ立っとらんでとっとと座れ。母ちゃんの長話が止まらんからな」



 椅子を引いて食卓に着く。

 この家の住人に合わせて作ってある為にフミアキにとっては若干低めであるが、昔使っていた食卓台が置かれている事にほろりと感謝の念が湧いてくる。

 その食卓台は、よく見ると二人分あった。



「…」



「…」



 期せずして隣に座る女性と目が合う。

 カーマインの髪をショートに散らして、アンティックゴールドの瞳と勝気な眉がフミアキを覗いている。

 そのまま見つめ合ってしまうも不似合いな瞳の若い女性に留められる。

 歳は10代後半だろうか、強気な眉がピンと二本乗る往古の黄金色の瞳は、アンバランスな印象をフミアキに与えた。

 しかし、古色の瞳に若い生命に溢れた眉、新旧が渾然一体に作らた美しい造形だったから。



「……なによ」



「あ、あぁ、いえいえ、なんでもありません。おはようございます。初めまして、で、よろしいですかね、フミアキと申します」



「…」



「かあー!フミアキ、何時もいってんだろうが!その鯱張った言い方はやめろ!飯が不味くなる!嬢ちゃんも嬢ちゃんだ、飯時にそんな顔してんな。いくら息子の恩人だろうが、あんまし過ぎるとたたっき出すぞ!」



 家主から、バックアタックと後方支援が同時に飛んでくる。

 性格が大雑把な為か面倒は個別に対処するより、引っ括めて両断するのがグリゴスの持ち味だった。



「ふんっ、コリーよ」



「はい?」



「…だから、あたしの名前。コリーよ」



 ぶっきらぼうに述べて、視線を外す。釣られてフミアキも視線を食卓に戻す。

 それを合図に、グリゴス家の遅めの朝食がようやく始まった。











 食事が終わり揃って緑茶を啜る。

 巌窟族の育てる茶葉は、巌窟族そのものと言わしめる程渋い事で有名であり、岩窟族以外では滅多に口にされないが、物好きが愛飲する事でも有名だったりもする。

 因みにこの巌茶は、子供には渋すぎる為飲ませるのは禁止されていたりする。

 禁止されると手を出すのが子供の常だが、余りに苦く渋いので子供は誰も嫌う、まるで薬だと顔を顰める。ので、グリスは朝食が終わればすぐ外に出ていった。



「フミアキ、お前どう言う了見で戻ってきた」



「あんた」



「わぁーってる。お前、叶えたい夢がある。そう言って出てったな。お前は、光具造りの才がある、こりゃ、儂ら巌窟族でも届かん所にあるやもしれん。ここで光具造りを修得し、鍛え上げりゃぁの話だがな。

巌窟族の光具ぬちだったら、喉から手が出るくらいのモンだ。それを捨ててお前は行ったな、叶えたい夢があるってよぉ」



「…」



「そんだけの気概を持って出て行った。ならよ、なんで高々2年で戻って来た。もうお前の夢は叶っちまったんか?もういいのか?」



「グリゴスさん、私の造る光具は『外法』です。今まで巌窟族の方々が造り積み重ねた技法に泥を塗ってしまいます。貴方達の技に尊敬する、だから私は光具造りを本職にする事は出来ません。この技は埋めて置くのがいいんですよ。一般常識がある者なら激怒するでしょうし」



「はぁー…、変わんねぇなフミアキよぉ。高が異色の技術だ、100年もすりゃお前の遣り方が世の常になるかもしれんぞ」



「それなら私がせずとも、時代が技術を求めましょう。その時が来たのなら、私が心の中で先駆したとほそく笑む、それだけでいいです。それに、私にはまだまだやりたい事が一杯ありますから、『槌を取り替えるな』とは岩窟族の先達の言葉ですよね。私は筆を握るだけで手一杯ですよ」



「あー言やこー言う、お前って奴は本当に七面倒くせぇ。わーったから、要件を言え。態々訪ねてきたって事は、なんかあんだろ」



「いやですね、グリゴスさんの顔を見に来だけですよ?それに、パルさんの美味しいご飯とお茶を飲みに来るだけでも価値はあります!」



 先程までの巌茶の様な空気が一気に薄くなる。

 代わりにグリゴスの顔が渋くなり真っ赤になって沸騰し始めた。

 パルが「あらら、おばさんからかっちゃ、ダメよぉ」と嬉しそうに言ってる事にも原因があるのかもしれない。



「フーーミーーアーーキーー!!そこに首置け!!巫山戯やがって、今日と言う今日は許さねぇからな!いや、今日こそ許さねぇぞ!!」



「わーわー!冗談!冗談ですって!グリゴスさん落ち着いて落ち着いて!」



 黙れ!逃げるな!首を置いてけ!え?これなんて置いてけ堀の妖怪?などと追い掛け追い逃げの二人劇場を始めてしまった。



「……ねぇ、これ、止めなくていいの?」



「うふふ、懐かしいわね。フミアキ君が居た頃は毎日がこんなもんよぉ。最近はご無沙汰だったし、あのひとったらあんなに喜んじゃってぇ」



 これに驚いているのはコリーただ一人で、二人はとても自然に逃走劇を繰り、パルは笑顔で湯呑を片付けている。慣れたモノであった。












「で、命の恩人の誕生会があるから、御山に入る許可と鍛冶場を貸してくれってか」



「誠に持って仰る通りに御座います。何卒グレゴス様の御力を持って、二つの御許可を采配して頂きたく存知上げます」



 ギン!と眼光が、まだ足りんのか?と問い掛けてくる。

 もう既に、フミアキの身体はぼろぼろで倒れる寸前だが、グレゴスの前正座して会話している。

 これでもフミアキを気絶させずにお仕置きするには、技術を要するので骨が折れるが、実に巧みな仕置き具合であろう。



「……いいだろう。だがよ、お前一人で御山に行ったらどうなるか分からねぇ。嬢ちゃん、こいつに付いてってくれんか」



「なんであたしがっ」



「フミアキは体力がねぇ。グリスと喧嘩しても負けんだろう。そんなんが御山に入っても、火見るよりあきらかだ」



「あたしが付いてく意味が分からないわよ」



「そうですよグリゴスさん。コリーさんも用事があってここに来たんでしょうし」



「なんなら護衛の報酬も付けてやる、儂が造った光具の3級、それに『準範士』も乗っけてやるぜ」



「はっ?!『準範士』?!それって上から二つ目……!」



「これでも日々成長してますよ。昔の私と思わないで頂きたい」



「正確にや、上から三つ目だがな。いい加減『準』はとっちまいたいがよ」



「普通に言ったら、『範士』が最高位でしょ…ウソ…本当に?光具鍛冶に疎い奴でも、『範士』が類い稀な功績を残す様な存在ってくらい知ってるわよ……」



「魑魅魍魎の巣食う王都に2年も生き延びたのは伊達ではないのですよー」



「どうだ悪かねぇだろ。儂の見立てなら、お前さんは『速さ』中でも『剣速』で押す戦法を使うと見た。だが、そう言う奴等は得てして防御が軽くなる。そりゃそうだ、重いモン身に付けてりゃ『速さ』が死んじまう」



「……合ってるわよ。3級の光具でも『準範士』が乗れば、逆に使い易いわね」



「化け物共をちぎっては投げちぎっては投げ、その中で遂に私は覚醒をし…」



「嬢ちゃんも知ってんだろうが、巌窟族の光具『防主』方陣はそうそう貫けるもんじゃねぇ。お前さん強くなるぜ」



「好条件ね。高々護衛で、しかも丸頭を守る為になんでそこまでやるのかしら」



「そして化け物に囚われた謎の美女を救いだ…あ、パルさんお茶ありがとうございます」



「はんっ、儂らの神聖な御山を、丸頭の血で汚したくないだけだ。なんだ嬢ちゃん、忙しくて“お使い”もできねぇのかよ?」



「へぇ、言ってくれるわね。あの“ケチ”で“頑固”で有名な四角頭が、随分太っ腹な話をするから、本当に報酬が出るか心配になっちゃってね。あぁ、見れば大した太っ腹よね」



「ふぅ…、パルさん今年の巌茶はいい出来ですね。この深い渋み、うん、作り手の苦労が立派に報われていますよ」



「…」



「…」



「えぇ、全くそうですね。いやいや、そんな。本当の事ですよ。パルさんはまだ全然いけますって、グリゴスさんが居なければ私が」



「…」



「…」



「好感触、また、そんな事言うと私も本気を見せてしまいますよ。はははっ、ついにゴートさん家のゴーン君も春が来ましたか。羨ましいですね」



「…」



「…」



「いえいえ、私なんて未だに男やもめですよ。いや本当。まぁ独り身が長かったですからね。あぁ、そうですね、ガーガリ君がね。それは困った…ぶわっくしょ」



「「うるせぇ(さい)!!!」」



「おぉう、何ですか二人して。て、もう話し合いは終わったんですか?」



「やぁかましぃぃぃぃ!お前が御山に入りたいっつーから儂が骨折ってやってるに、さっきからぺらぺらぺらぺら脳みそのねぇ話を喋りくさってからによぉ!」



「こっちは大事な話をしてんのよ!あんた、本当にやる気あんの?!」



「あのですね、ガーガリ君も今難しい年頃なんですよ?あの位の年の子は、手を出すのも、放っておくのも微妙な感じなんで加減がしずらいんです。どうしたモノでしょうかね」



「ガンスん所の糞倅なんぞどうでもいい!いいか!とっとと嬢ちゃん連れて御山に行ってこい!これは儂が決めた!もう覆らん!これで仕舞だ!母ちゃん、儂が出る!ガンスん所のハナタレめが、性根叩き直してやる!」



 「いってらっしゃい」と、パルに送られて怒って出ていってしまった。

 呆然と見送るのは二人の男女、コリーが「はぁ…」と諦めた様に息を漏らした。



「しょうがないわね、山の護衛は引き受けるわ。で、その山って何処の?とっとと行くわよ。あーもー頭痛い」



「え?え?」



 フミアキを引き摺りながらコリーが家を後にする。

 そんな三者三様をパルは笑顔で見送るのであった。


 用語解説?

バックアタック 後方から強襲される。これをやられると高い確率で

        後衛があぼんする。


光具ぬち 光具造りの職人の事。


(つち)を取り替えるな 巌窟族では自身の槌を大切にします。

            真新し槌は新人。古い槌は熟練工。

            槌を取替取替してるぬちは信用されません。


あー言やこー言う あー言やこー言う。フミアキみたいな人。


光具3級 数字が若ければ若い程、なんかよくわからないけどすごくなります。


準範士 ぬちの職位。『 』>範士(はんし)>準範士>教士(きょうし)錬士(れんし)>弟子>見習い

    錬士から一人前。教士から弟子をとれます。

    大抵のぬちは、教士までです。準範士は巌窟族でも20人未満。

    範士に至っては、2人です。


化け物と美女 フミアキの妄想。


ゴーン君 (岩窟族で)イケメン君、幼馴染のペートちゃんと

     散々じれじれした挙句、喧嘩→仲直り→春到来→リア充ちね。


ガーガリ君 ペートちゃんに横恋慕するも、イケメンに撃破される。

      根は悪い子ではないが、直情的過ぎる傾向がある。

      振られたショックで絶賛悪(ワル)中。

      グリゴスさんの鉄拳が飛ぶ。


 暇を見て、各話のあとがきにて用語解説?を付け足していきたいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


※12/18改稿&お詫び。用語解説を書くほど設定凝っていないので、この話のみとさせて頂きます。後設定書くと、書いたつもりになってしまって本編で忘れそうな為に…。

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