アルク12
自分の方が結構忙しくなり、更新のペースも落ちてしまいました。
6月までにはどうにか終わりまで持っていきたいのですが……
彼女が学校に来なかったのは、結果から言えば3日間だけだった。
これは休日に入ったこともあるけれど、しかし、その3日はとても退屈だった。
僕には彼女に関しての未来が視えない。
だから、来ないと分からない。
まあ、それだけが理由ではないけれど学園には行かないといけない。
その結果、思ったのが
「寂しいな」
ということである。
週が開け、学園祭まで残すところ2週間となった日、アルクは学園にきた。
「どうしてたのアルクちゃん」
「風邪引いちゃって」
「治っても病み上がりだから無茶は厳禁ですわよ」
「うん。ありがと」
風邪か。ならいいけど。……いや、よくはないんだけど。
「あ、ごめんね、パルくん。ひとりで任せちゃって」
「いや、僕も休んでた時期があるから別に。大したことはもう終わってたし」
「でも、もうちょっとしたらみんなも混じって準備を始めるんだよね?」
「そうだね。明日からそれが始まるよ」
「直前でよかったよぉ」
「それは、僕になんか任せられないってこと?」
「むしろ全部任せても――」
「大丈夫じゃないから。アルクにしか分からないところとかいろいろあるから」
主に僕が休んでいたところに関して。
「そう?」
「そうだよ」
と言ったところで鐘が鳴った。予鈴だ。
「おら、席に着けい」
先生が入ってくる。アルクは慌てて席に着こうとして、こけかけていた。
「うぅぅあぁぁーーー」
放課後になった。アルクは6限に先生から猛アタックを受け、精神が疲労しているようだ。
今日は確認にとどめておこう。ちょうど明日から他のクラスメイトも巻き込んで準備を開始する予定だ。主に何人か人手が必要そうなことを手伝ってもらうことになっている。
「おぉぉうー」
しかし、アルクさんやい。女の子なんだからそんな声出すのはどうかと思うぞ。
「あらまひらいよぉ」
呂律が回っていない! なんかやばいぞ!
……なにがやばいかは言わない。
「パルくぅん、たしゅけてぇ」
いや、僕には無理です。
「このぉ、はくじょうもんがぁ」
っていうか頭痛いだけだよね? 酔ってないよね?
「だいたいパルくんは……くぅ」
寝た! もうこれ絶対お酒飲んだ反応だよね!
「はぁ」
起きるまで置いておこう。多分風邪も引かないだろうし。でも、そういえば病み上がりか……。
上着を彼女の肩に乗せて、僕は彼女の寝顔が見れる位置に移動する。
綺麗な寝顔だった。……欲目?
誰もいない教室に一人だけいる感じだった。
彼女の寝息が聞こえるのかもしれないけれど、それよりは外の音の方が忙しなくうるさい。
「次いくぞー!」
「こーーーい!」
カーンと金属のものが何かを打った音がした。多分、バットでボールを打った音だと思う。
部活塔の方からはトランペットの音や、トロンボーンの音色が聞こえる。
なんというか。これが平和って言うことなのだろうか。これが日常と言うものだろうか。ほんの6年前まで戦争をしていたとは思えない光景だった。
カーンともう一度音がした。
窓から覗く森は赤く、日は徐々に弱まってきている。
少し、眠い。でも、寝るわけにはいかない。
当分前に読みかけだけど、既に内容は分かっている本を取りだし、読み始めた。
この空間には時たま、ページをめくる音がなる。それだけがこの場所を支配していた。
でも、それは。とても心地よかった。
「んぅ?」
どれほど時間がたっただろうか。日はその力を弱め、少し世界が暗くなってきた。
「あれーパルくんだー」
「おはよう、もう夕方だけど」
「おはよー」
彼女は少し目を瞬かせ
「ってパルくんっ!?」
「うん。そうだけど」
「あれ? 私なにを」
とりあえず彼女をじーっと見つめてみる。あ、僕の服落ちた。
「ここはどこで、私は誰なんでしょう?」
「自分くらいは分かるでしょ!」
「えーっと。アルカンシエル・ソレユ?」
「ソレイユ! 何でそんなことになっているのやら」
とか言いながらさりげなく立ち上がり、服を回収する。
「私にも良く分かんないよ」
「そう」
バットがボールを打つ音がした。
「ねぇ、パルくん。今日やることってある?」
「今日はないよ。明日からならいっぱいあるけど」
「いっぱい?」
「明日からはみんなを巻き込んでの作業になるからね」
明日から看板の作成とか、装飾作りとかに入る。こればかりはみんなに手伝ってもらわないとどうしようもないだろう。
「そっか、明日からはパルくんとこうして会うこともないんだ」
「……あ」
それは、考えて、ない、こともなかった。
むしろ、結構考えたことだった。ここ数日の間に。
「でも、そうじゃないよね。パルくんは学園祭が終わっても、放課後はここにいるよね」
確信を帯びた発言だった。
僕は未来を見ることができる。自分に能力を適応させるのなら何日も向こうのことを覗くことも可能だ。
でも、出来なかった。
怖かった。
少しでも、ここに来ない可能性のあることが。
「アルク。話があるんだ」
平穏は簡単に崩れることを知っている僕は。
「なーに、パルくん」
彼女についてなにも見えなくても。いや、見えないからこそ。
「僕はアルカンシエル――君が」
唯、自分が後悔したくないという理由から。
「きみが好きだ」
「うん。わたしもパルくんのことが好きです」
そして僕はアルカンシエル・ソレイユという女の子の彼氏になった。
えー、告白回でした。
短いのは余計なものを挟みたくなかったので。
すんなり終わってるのにはちゃんと理由がありますので。