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インタールード アルク3

春休みに入り、頭も春になっていたようです。

遅くてすいません。

Another view アルク3


「はっ!!」

「おかえりなさーい」

「ようやく戻ってこられましたわね」

「うん。ただ、いま?」

 さっきまで私は何をやっていたんだろう。

 何か楽しいことをしていたような気がしたけど。

「ええと、私何してたのかな」

「愛しのパルくんと一緒の世界に飛び立っていたんじゃないんですかー」

 え? 私が、パルくんとどこかに飛び立っていた?

「ええ。どこかここではない場所で、私たちではなく特定のある男性と一緒に何かをしていらしていましたわよ」

 特定の男性と一緒に何かをしてた?

「ふ、二人ともどういう意味だよぉ。大体この場には2人しかいないじゃないかぁ」

「これは……」

「今までのアルクさんの行動から察するに、素だと思いますよー」

「くっ、これだからアルクは手ごわいのですわ」

「ねぇ、二人ともどういう――」

 突然、うちの教室のドアが開いた。

 その人物は真っ直ぐにパルくんの席を目指しそこに掛けてあったカバンを取った。

「ちょっと、そこの方――」

 カメルンさんが注意しようとして、止まった。

 その人が先輩であること、そして生徒会長であることに戸惑ったのだと思う。

「…………」

 会長さんは無言で私の方をじっと見つめ、少しした後に教室を出て行った。

「…………」

「…………」

 私たちはみんな無言。唐突に起こった出来事に何を言っていいのか分からなかった。

 少し経って、最初に口を開いたのはカメルンさんだった。

「今の、会長さんです……わよね? どうしてパルミラさんのカバンをあの人が持って行ったのかしら」

「もしかしてー、パルミラくんは呼び出されたのですかねー」

「でも、そんな呼び出されるようなことする人じゃないと思いますけど」

「あの人とパルくんは知り合いだよ」

「へ?」

 ボソッと言った私の言葉に、カメルンさんが反応した。

「へー。ここの会長さんは交友関係すら分からないものでしたけどねー」

「確かにそれも意外ですけれど、私にはどうしてアルクがそれを知っていたのかが気になりますわ」

「それは簡単だよ。私、会長さんに会ったことあるもん」

 あの日は買い物に行ったら、たまたまイザちゃんと会って、その後にパルくんたちと会った日だ。

「会っただけでは本当に知り合いかどうか分からないのではないかしら?」

「その時に一緒に……」

 いや、あの時はパルくんとしか結局……

「いや、あれ、えっと、もしかして」

「これはーまさかー」

「デデデデデデートですわね、そこを詳しくお話しなさい!!」

「ほほー。アルクさんそこまで進んでいらしたとは。なかなかやりますなー」

「え? 二人とも私がどうかしたの?」

 気づいたらカメルンさんの顔がすごく近くにあって、シロエちゃんがニコニコ顔でこっちを見ていた。

「どうかしたのはアルクさんでしょう!! ふふふふ不純異性交遊は禁止されてますわよ!!」

「さすがに話が飛びすぎだよー。ちょっと落ち着こうかー」

「?」

 ふじゅんいせいこうゆうってなんだろう。帰ってお父さんに訊こ。

「とにかく、私は2人がお友達だってことぐらいしか分かんないよ」

「そんなことはどうでもいいのですわっ!!」

「ふえっ!?」

 いきなり机叩かれたからびっくりして変な声出ちゃった。

「アルクさんはパルミラくんと、その……デッ、デートしたのですかとお訊ねしたいんですのよ」

「でーと?」

「……これがもしも演技なら、やっぱりアルクちゃんは相当手ごわいですねー」

「精神衛生上のためにも素だと思っていた方がいいですわ」

「でーとって、なに?」

 ダメだ。文字から意味が読み取れない。

「デートというのはですねー、恋人かもしくはそれに近しい関係にある男女が一緒に買い物に行ったり遊んだりすることのことですよー」

「ほえっ」

「この年の女の子なら一度くらい聞いたことがあるはずですわよ、普通なら。というか女の子なんですから変な言葉を発しない」

「それはどうでもいいの、シロエちゃんもう一回言ってくれる?」

「どうでもいいって……」

 となりでカメルンさんが沈んじゃったけど、とりあえず置いといて。

「基本的には男女一人ずつで一緒に遊びに行くとなったら大抵がデートと言われることでしょうねー」

「へー…………それで、カメルンさんは私に」

「さっきアルクさん『いや、あの時はパルくんとしか』って呟きましたわよね。その時もしかしてパルミラさんと一緒に遊んでいたのではないかしら」

「ほえー。なるほどー」

 …………

「へ?」

「どうなんですの?」

 確かにあの時は他にも後輩ちゃんとかイザちゃんとかいたけど、結局私はパルくんとしか遊ばなかったけどそれってもしかして、カメルンさんの言う通り、デッデデデデ

「ほわぁ」

 その時私は、もう一回あの時のことを思い出していた。

 後思えば、この時の私は相当美化された、というか事実とは全然別のものを見ていた気がする。


「ひゃぁう!!」

「お帰りなさい」

「おかえりー」

「ただいまー」

 あれさっきもこんなことあったような。えっとこういうのってなんて言うんだっけ?

「さて、アルクさんも帰ってきたことですし今日は帰りますわよ」

「アルクちゃんこれってどこに収めればいいの?」

「あ、それは持って帰るつもりだから、ってもうこんな時間なの?」

 時計の針は下校時間の直前を指していた。いつのまに……

「アルクさんがどこかに飛び立っている間にですわ。今日終わらなかった分は明日も手伝って差し上げますから今日はもう帰るとしましょう」

「え? 明日もいいの?」

「どうせパルミラさんの怪我は一日で治るようなものじゃないでしょう。乗りかかった船ですし。いいですわよ」

「わたしもー、ちょっと上の人に掛け合ってみますねー。たぶん大丈夫って言ってくれますからー」

 思ってもみなかった。

「本当にいいの?」

「いいに決まってますわよ」

「わたしも明日にならないと確かなことは言えませんけどー、手伝うことに関してはいいですよー」

「うわーーーん!! 二人ともありがとう!!」

「どうして泣いて――ちょっと、飛びつくのはいいですけど鼻水が」

「ちーーん」

「こら!! 私の服で鼻をかまないでください!!」

「アルクちゃん、落ち着いてくださいよー」

 私はこの後もこの2人にはいろいろとお世話になったのだった。本当に、いろいろと。



 そして、今日は湖曜日。休日だ。

 パルくんが怪我をして、今週はずっと参加できない代わりに、二人が手伝ってくれた。

「助かっちゃったな」

 感謝、感謝なのですよ。

「ふぅ」

 ベッドに倒れこむ。今週は細かいことを決めてそれでいいかの確認をとるだけだったけど、結構忙しかった。

 来週は向こうがOKって言ってくれたらいいけど、それまではやり直し作業になってしまう。商品にはあまり関係ない、店のレイアウトとかも決めなきゃいけない。

 再来週からは試作とか、装飾とかに必要なものを買って、作り始めることになる。

 その次の週はもう、学園祭だ。週の終わりの20日に学園祭がある。

「大変だなぁ」

 って思うけど、私自身はあんまり大変じゃないと思う。

 パルくんは手が動かせないけど話し合いのまとめとか、何すればいいみたいなのの指示を出してくれてたし。でも、病院には通ってるし、それを他のみんなには隠しているし。

「パルくんってすごいなぁ」

 本当にそう思う。

「やっぱり人気あるのかなぁ」

 優しいし、かっこいいし、先生ともちゃんと話してたし……。でも、みんなの話の中には出てこないなぁ。なんでだろ。

 他には

「会長さんは多分……」

 だって、パルくんの荷物持って行ったし、あの日も一緒に……

「あの日かぁ」

 パルくんと一緒に……あれ?

 あの時の私ってたしか、一人だけ目的のクレーンゲームで格闘していたような……。

「うぁ」

 これは別にデートでもなんでもないよぉ……。

「はぁ」

 でも、パルくんとデートかぁ……

「楽しいだろうなぁ……」

 一緒にお買い物に行って、一緒にご飯を食べて、一緒に遊んで。

「ほわぁ……」


 この日、私はお母さんが呼びに来るまで意識が飛んでいたみたいだった。


前回、残り10話で終わり、続きを自分のwebの方でやると書きましたが、今後の展開の影響でそうすることにいたしました。


納得はいかないかもしれませんが、最後まで見届けてくださると嬉しく思います。

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