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アルク6

 週が開けた。

 その日からなんだかアルクの様子はおかしかった。


 普段から少し、ほんの少し人よりずれているところはある子ではあるのだが、なんだか普段よりはるかにおかしい感じがするのだ。


 まず、大抵反応が遅れたり、生返事だったりする。

 こんな感じだ。

「アルク、これから商品を決めようと思ったのだけど、これってクラスのみんなと話さないといけないと思うんだ」

「うん」

「だから、もう一回先生に頼むべきだと思うのだけど」

「…………」

「アルク?」

「うん」

「おーい、アルクさんやーい」

「……うん」

「お、こんなところにミトコンドリアが!!」

「…………。ミトコンドリアって何?」

「聞こえてはいるんですね」

 放課後だから僕たち以外に誰もいない。(ここだけ言えばとってもすてきですね。残ってる理由が全然違うけど)

だから、僕の話し相手はアルクしかいないから必然的に僕の話し相手はアルクになる。というか僕がアルク以外の人に話しかけてたらものずごくイタい子になってしまう。

 そうならないためにもアルクには返答してほしいのだけど、どうにも反応が鈍い。

 大抵返ってくるのは「うん」とか「…………」とか「うへへへへ」とか。……いや、最後のは嘘だけど。僕そんなアルクは極力いないでほしいけど。

 授業中や休憩時間のアルクを見る限り、僕と話しているときだけではなさそうだからなにか被害があるんじゃないかと心配である。


 次に、人とぶつかったり、物とぶつかったり、何もないところで転けたりする。

 一例を挙げると、

 曲がり角でそのまま直進して壁に当たる。(そして気にした様子もなく曲がる)

 ただの廊下で向こうから走ってきた人にぶつかる。(これは相手の方が悪いかも)

 教室で歩いていたときに転けた。(確かに物はそれなりにあると思うけど、一日に3回ぐらい転けるのはちょっとおかしい)

 体育の授業中、サッカーをしていたときにパスボールで転ぶ。(足がちょうどボールを踏んで転けた)

 同じ授業中、今度は高めのパスボールに直撃する。(ゆっくりなんだから避けるなり、少し下がって受けるなりできるのに)

 以上。これらはあくまで一例にすぎないことを明記しておく。


 最後に、ミスが多い。これは委員の仕事もそうだが授業の意味でも言うことができる。

 例えば、

 うちの担任の授業において。

「宿題ぐらいやっておけ」

「すいません」

 とか。(他の授業においても何回もあった)

 僕が今日の授業の時間を使わせてもらえることの確認にいった時のこと。

「パルミラ、俺はそんな話は聞いてないぞ」

「あれ? アルクが言いに来ませんでしたか」

「来なかったな。最近あいつ調子がおかしいようだ。気にかけといてやれ」

「はい。それじゃあ、明日の授業はいいですか」

「いや、今日でもどうにかなるだろ」

「ありがとうございます」

 とか。(先生はほとんど生徒と関わり合いがないはずなのによく気づいていたな。逆に言うとそれぐらい調子がおかしいのかもしれないのだが)

 店の構図を決めるときのこと。

「アルクそれ教室の方向が逆。入り口と出口は左側じゃなくて、右側にあるよ」

「あ……。ほんとだ。ごめんねパルくん」

「まあ、なおしてくれたら問題ないから」

 とか。(これは普段でもやりそうな気がする)


 これらに関連してか、委員会の日程を忘れていたり、衛生管理の人から話を聞くことも忘れていたり、したのだけど一番おかしかったのは、彼女自身の様子だ。

 いや、今までのことでも十分そうなのだが、まるで性格が別の子になってみたいになっているのだ。

 大人しいし、元気はないし、天然……だけは抜けてない気がするけれど。

 そして何かにつけて謝っている。自分のミスで人に迷惑をかけたときは特に。

 普段のアルクが何かやらかしたときに謝らないというわけではないのだが、その傾向が顕著すぎる気がするのだ。ささいなことでも必要以上に謝っている印象を受ける。


 以上。これが一日だけなら何か不調なのかなぐらいですむのだが、もう3日は続いている。とてもただの不調とは思えない。

「アルク、何かあったの?」

「え? 何かって?」

「最近調子悪いみたいだから何かあったのかなって」

「ううん。なにもないよ。それより私パルくんに迷惑かけてないかな」

「ううん。別に迷惑かかってるなんて考えたこともなかったけど」

 確かにミスはあったけどささいなものだから、それに比べると彼女の心配をする気持ちの方が大きい。

「そうならいいけど」

 あまり納得してなさそうだった。

 とはいえ、ミスしてるからって落ち込むことないよ、なんて言ったらさらに落ち込みそうだし。どうしたものやら。

 特に打開策も見つかることもないまま、普段より少し忙しい日々はあっというまに過ぎていった。




短くてすいません。

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