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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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灰の地の錬金王 〜追放された魔力ゼロの第一王子、実は【原子操作】の権能で神をも超える文明を築いていた〜

掲載日:2026/02/04

魔力が全ての社会で、魔力ゼロとして追放された主人公。

しかし彼が授かったのは、魔法を過去の遺物にする「原子操作」の権能でした。

科学の力で死の土地を聖域に変え、自分を捨てた王家が自滅していくのを横目に、悠々と新文明を築く物語です。


【警告】

※本作には一部、残酷な描写および、徹底的な「ざまぁ」要素が含まれます。

 苦手な方はご注意ください。

※主人公による圧倒的な内政・無双を楽しみたい方向けです。

「アルベルト・フォン・ルミナス。お前に授けられたのは――【無属性:物質変容】。魔力測定値、……ゼロ」


 神官の冷徹な声が、王宮の大広間に響き渡った。


 このルミナス王国において、15歳の成人式で授かる魔法属性は人生のすべてだ。  王族は代々「極大火炎」や「聖光」といった強力な属性を宿す。  魔力を持たない者は、人間としてすら扱われない。


「魔力ゼロだと? 王家の面汚しめ!」


 玉座に座る父、国王が忌々しげに吐き捨てた。


 隣では、弟の第二王子エドワードがニチャリと下劣な笑みを浮かべている。  彼は先ほど「雷鳴」の属性を授かり、次期国王の座を確実にしたばかりだ。


「兄上、残念でしたね。ゴミにはゴミにふさわしい場所が必要だ。……父上、こいつを『灰の地』へ追放しましょう。あそこなら、魔力がない無能でも死体として役には立つ」


「灰の地」――。


 火山の噴火によって常に灰が降り注ぎ、作物は枯れ、土壌は重金属に汚染された死の土地。  そこに送られることは、死刑宣告よりも残酷な処遇だった。


「待ってください! アルベルト様はこれまでに内政学や歴史で多大な功績を……!」


 僕を庇おうとした従女のセーラが叫ぶ。  だが、エドワードの容赦ない蹴りが彼女の腹部を抉った。


「ぐふっ……!」


「黙れ下女。無能を庇う者は同罪だ。おい、その女も一緒に連れて行け。せいぜい灰の中で飢えに苦しみ、指先から腐り落ちていく様を呪うがいい」


 衛兵たちが僕の腕を掴む。


 婚約者だった公爵令嬢のエレナは、僕と目が合うと、汚い害虫を見るような目で扇子を広げて顔を隠した。


「アルベルト様。わたくし、無能な殿方とはお話ししない決まりなんですの。……さようなら、出来損ないさん」


 嘲笑。蔑み。そして暴力。


 引きずり出される僕の視界の端で、セーラが床に血を吐きながら引きずられていくのが見えた。


 だが、彼らは知らない。


 僕の脳内には、前世……科学が極限まで発達した世界の記憶があることを。


 そして、僕が授かった【物質変容】というスキルが、魔力という不確かなエネルギーではなく、この世界の構成単位である「原子」そのものを支配する権能であることを。


     *


 追放されて一週間。


 僕とセーラは、灰がしんしんと降り積もる廃村にいた。


 セーラは高熱にうなされ、エドワードにつけられた傷が化膿して黒ずんでいる。  彼女の指先は凍傷と毒素で壊死しかけていた。


「坊ちゃん……逃げてください。私は、もう……」


「セーラ、黙ってて。僕が君を助ける」


 僕は地面に積もった灰を手に取った。


 鑑定眼で見れば、この灰はただのゴミじゃない。  アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、そして猛毒の砒素や鉛の複合体だ。


「――再構成リコンストラクト


 僕の脳内で、分子構造の設計図が組み上がる。


 魔力は必要ない。  必要なのは、物質の結合を断ち切り、再結合させる「イメージ」と「権能」だ。


 シュン、という音と共に、手のひらの灰がまばゆい光を放つ。


 次の瞬間、灰は「純度99.9%の抗生物質」と「清潔な精製水」へと姿を変えた。


 僕はそれをセーラに飲ませ、傷口に塗る。  さらに、周囲の灰から酸素を抽出し、彼女の呼吸を楽にさせた。


「……えっ? 坊ちゃん……痛みが、消えて……?」


「さあ、次は僕たちの家を作ろう」


 僕は立ち上がり、地面を叩いた。


 足元の汚染された土壌から、有害物質だけを抽出して一箇所に固める。  残った土に、空気中の窒素を固定して「理想的な肥料」を生成する。


 さらに、空気中の炭素を強引に結晶化させ、鋼鉄よりも硬い「ダイヤモンド構造の建築材」を生成。


 わずか一日で、死の土地の真ん中に、自浄作用を持つ高層シェルターと、四季を無視して実る農園が誕生した。


 僕のスキルは「魔法」ではない。  宇宙の法則そのものを書き換える「物理現象の掌握」なのだ。


     *


 半年後。  ルミナス王国は地獄と化していた。


 彼らが頼りにしていた「魔力」が、世界的なマナの枯渇により減退。


 魔法で維持していた農作物は全滅し、王都には飢え死にした人々の死体が転がっている。  ネズミがその死肉を喰らい、そこから発生した正体不明の疫病が蔓延していた。


「なぜだ! なぜ私の雷が出ない!」


 エドワードは狂ったように杖を振るが、出るのは小さな火花だけだ。


 国王もまた、やつれた顔で玉座に座っていた。  かつて僕を捨てた傲慢さは消え、死の影に怯えている。


「陛下……報せが。追放されたアルベルト様が住まう『灰の地』が、今や世界で最も豊かな聖域になっているとの噂です。そこでは病も治り、金色の麦が波打っているとか……」


「何だと……!? すぐに使者を送れ! 奴を王都に戻し、その技術を差し出させるのだ!」


     *


 灰の地――いや、今は「科学都市アルビオン」と呼ばれる場所のゲートに、ボロボロになった王族の馬車が到着した。


 馬車から降りてきたのは、かつての父と弟、そしてやつれ果てたエレナだった。


 彼らはゲートの先に広がる光景に絶句した。


 そこには、魔法の輝きとは違う、冷徹で合理的な光を放つ「街灯」が並び、人々は飢えとは無縁の健康な体で笑い合っていた。


 僕と、健康を取り戻し美しいドレスに身を包んだセーラが、彼らを出迎える。


「アルベルト! ああ、我が息子よ! 探したぞ!」


 国王が、よだれを垂らしながら僕の手を握ろうとした。  僕はそれを冷たく払う。


「陛下。ここはもう、あなたの国ではありません。僕がゼロから構築した独立領土です」


「兄上、生意気だぞ! その食糧を、この私に……うぐっ!?」


 エドワードがいつものように殴りかかろうとしたが、僕の横に控えていた自動警備のゴーレム(超硬タングステン製)が、彼の指を一捻りで粉砕した。


「あああああ! 私の指が! 指が腐り落ちるううう!」


「おや、エドワード。君がセーラに言った言葉を覚えているかい? 『指先から腐り落ちていく様を呪え』……。今の君の指、壊死を促進するウイルスの原子構成をちょっとだけ混ぜておいたよ」


「ひっ……! アルベルト様!」


 エレナが泥まみれのドレスで跪く。


「わたくしが悪うございました! あなたこそが真の王です! どうか、わたくしを妃に……この病を治して……!」


 エレナの顔は疫病の斑点で覆われ、かつての美貌は見る影もない。  僕は彼女を見下ろし、かつて彼女がしたように扇子を広げて笑った。


「残念ながらエレナさん。僕は無能な女性とはお話ししない決まりなんです。……それに」


 僕は背後のセーラを引き寄せた。


「僕の隣には、もう最高のパートナーがいますから」


「そんな……! 助けて、アルベルト! 私はお前の父親だぞ!」


 国王が叫ぶ。


「父上。あなたが信じる『魔力』で、自分たちを治せばいいじゃないですか。できない? なら、そのまま灰に埋もれてください。……あ、安心してください。死体はちゃんと分解して、僕の農園の『肥料』として再利用してあげますから。それがあなたたちが唯一、世界に貢献できる方法だ」


     *


 王族たちは衛兵によって、汚染された灰の荒野へと放り出された。


 彼らがその後どうなったか、僕は知らない。  ただ、風の噂では、王都は暴徒化した民衆によって焼き尽くされたという。


「坊ちゃん、そろそろ研究の時間ですよ」


 セーラが淹れてくれたコーヒーの香りが漂う。


「ああ。今日は核融合炉の安定化を終わらせよう。魔法なんて不確かなものに頼らない、誰もが幸せになれる世界を作るんだ」


 僕は窓の外に広がる、白銀の科学都市を眺める。  魔力ゼロの「無能」と蔑まれた少年の手には、今や神の如き科学の力が握られていた。


 追放されたあの日、僕の物語は終わったのではない。  この「灰の地」から、真の文明が始まったのだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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