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レベルアップは嬉しいけど…佐藤の態度がヤバくてチーム崩壊寸前!?

チーム全員が次々とレベルアップを果たし、新たなスキルを獲得していく中、ダンジョン探索は順調に進んでいた。山田は力任せにモンスターを撃破し、美咲はヒーリングスキルで仲間の傷を癒す。鈴木も戦術を駆使して戦闘を指揮するなど、全員が目に見える成長を遂げていた。そんな中で、川島真人だけが依然としてレベルアップを果たせず、焦りを感じていた。


真人は皆の中で一人取り残されたような気持ちを抱え、夜になると一人でこっそりと粘土をいじっていた。粘土細工は彼の幼少期からの趣味で、仲間に打ち明けることは恥ずかしかったが、現実逃避としての唯一の楽しみだった。


待ちに待ったレベルアップの瞬間


ある夜、真人がまた一人で粘土をこねている時だった。突然、身体の奥から湧き上がるような感覚が彼を包み込んだ。それは今まで感じたことのないようなエネルギーで、全身が軽くなり、力が溢れてくるようだった。


「これって…レベルアップ?」真人は驚きと喜びに満ちていた。念願のレベルアップだ。今まで皆が次々とレベルアップしていく様子を見て、焦りと劣等感に苛まれていた彼にとって、ようやく自分も仲間の一員として認められるという期待が湧き上がった。


思わず声を上げそうになったが、粘土遊びをしているところを見られるのは恥ずかしいと思い、必死でこらえた。「やった…!」心の中で歓喜の声を上げ、静かにその場で喜びを噛み締めた。


しかし、獲得したスキル「クレイクラフト」についてはどう説明すればいいのか分からず、黙っていることにした。粘土細工が趣味だなんて、仲間たちに知られるのは嫌だったからだ。何より、自分が「クレイクラフト」というスキルを持っていることを話すのが恥ずかしかった。


翌朝、真人は皆に自分がレベルアップしたことを報告した。山田や鈴木、美咲たちは喜んでくれた。


「ついにレベルアップしたんだな、真人!」と山田は肩を叩き、鈴木も「よかったじゃないか、これで戦力も増えるな」と微笑んだ。美咲も「おめでとう、これで一緒にもっと頑張れるね」と優しい笑顔を見せてくれた。


しかし、佐藤は少し違っていた。彼は冷ややかに「へぇ、やっとかよ」と言って、横柄な態度を見せた。最近、佐藤の態度は変わり始めていた。特にレベルアップしてからは、他のメンバーに対しても強気で、時折横柄な発言や行動が目立つようになっていた。


1つ目の例は、戦闘中に山田がミスをした時だった。山田がモンスターの攻撃を避け損ね、少しのダメージを負った瞬間、佐藤は鼻で笑いながら「おい、山田!お前、そんなヘマしてんじゃねぇよ」と言い放った。今までの佐藤なら、こうした失敗にはもっと優しくフォローを入れたり、励ましの言葉をかけていたはずだったが、レベルアップしてからはあからさまに仲間を見下すような言動が増えた。


もう一つの例は、鈴木が戦略を考えている時のことだ。鈴木が次の戦闘に向けて戦略を練っていたところ、佐藤が突然、「おい鈴木、それじゃ遅すぎるだろ。俺がもっと効率的な方法を教えてやるよ」と言い出し、鈴木の計画を半ば強引に押しのけてしまった。鈴木は困惑しつつも、佐藤の成長を認めつつあったため、言い返すことはできなかったが、チーム内の雰囲気は少しずつ悪化していった。


さらに、美咲に対しても、佐藤は横柄な態度を取ることが増えた。ある日、彼女がヒーリングで仲間を回復させようとした際に、佐藤は「おい、美咲!もっと早くやれよ。お前が遅いから俺たちが危険になるんだ」と冷たく言い放った。美咲はショックを受けた表情を浮かべたが、何も言い返さずに俯いたままだった。


このような佐藤の態度は、次第にチーム内に緊張感をもたらし、皆が言いたいことを言えなくなっていた。真人もまた、自分が新たに得たスキル「クレイクラフト」を打ち明けることができずにいた。もし佐藤に知られたら、また何か皮肉を言われるのではないかと恐れていたのだ。


しかし、そんな状態でも探索は順調に進んでいた。ダンジョン内を進むにつれて、過去にここを探索していたと思われる冒険者たちの遺体を見つけた。腐敗が進んでおり、顔や体の形状はほとんど判別できなかったが、彼らが身に着けていた装備は辛うじて使えるものがいくつか残っていた。


「おい、これは使えそうだぞ」と山田が遺体に付いていた剣を持ち上げた。剣は錆びついており、使い物になるかどうかは微妙だったが、他にも槍や斧など、様々な武器が見つかった。


「やっと武器が手に入ったな。程度は悪いが、ないよりはマシだ」と鈴木が言った。


武器を手にしたことで、戦闘の幅が広がることに期待を持った皆は、少しずつ士気を取り戻し始めた。しかし、その中で真人だけは、他のメンバーの影に隠れるようにしていた。彼は一人で何もできないことに、ますます劣等感を感じていたのだ。


「真人、お前はこれを使えよ」と、佐藤が一本のナイフを手に取り、真人に渡した。ナイフは他の武器同様、かなり錆びついていたが、近接戦闘には役立ちそうだった。


「ありがとう…」真人は渋々受け取ったが、内心ではまだ佐藤の横柄な態度に対して不満を感じていた。佐藤が強くなったことは認めるが、それが仲間たちに対する態度の変化につながるのは、どうしても納得できなかった。


チームの中で孤立し始めた真人は、今後どうやって自分のスキルを活かすべきか、また、どうやってこの状況を打破するべきかを考え始めた。クレイクラフトというスキルは、仲間たちの役に立つ可能性があるが、今の雰囲気の中でそれを打ち明ける勇気はまだ持てていなかった。


「いつか、俺も役に立てるはずだ…」真人はそう自分に言い聞かせながら、仲間たちの後ろをついていくのだった。


探索は続く。武器を手にしたことで、これまで以上に順調に進むかもしれないが、佐藤の態度がこのままではチームの絆が崩れてしまうのではないかという不安も、真人の胸に重くのしかかっていた。

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