走れ、俺!ミリアとルーナが待ってる!
真人は隠れ蓑に籠り、今日も粘土いじりに没頭していた。迷路のようなダンジョンを進めども、どこにも出口が見えない。このダンジョンは、まるで彼の進路を嘲笑うかのように、幾度となく方向感覚を狂わせ、どこに進んでも同じような風景が続いていた。それでも、彼の中でひとつだけ確信していることがあった。それは、このダンジョンの作りが、転移前の世界で見てきたものと似ているということだ。特に、あの光――彼を別の場所に飛ばしたあの瞬間――が、いわゆる場所を移動させるトラップの一種だと気づいたのだ。ならば、ミリアやルーナもこの階層にいるはずだと、彼は希望を捨てずにいた。
しかし、現実は厳しい。いくら声を出しても、このダンジョンの壁は吸音材のように音を吸い取り、彼の叫びは遠くまで届かない。ミリアやルーナに声を届けたくても、彼らの名を叫んでも、響かない。それが真人の心をじわじわと焦らせ、もどかしさを募らせる原因となっていた。彼は、思わずため息をつきながら、手元の粘土細工に集中した。
真人の手元には、すでに精巧に作り上げられた女性フィギュアがあった。かつてから彼の趣味であった粘土細工、その腕前は異世界に来ても健在だった。フィギュアは、細かなディテールまでリアルに再現されており、真人のこだわりを強く反映している。露出が多めの服装、体のラインが強調されたデザイン…「やっぱりこの感じがいいな」と彼は一人ごちた。そんな時間が、彼にとって現実逃避のひとときだった。
とはいえ、ずっと同じ場所に籠り続けていると、次第に眠気が襲ってくる。真人も例に漏れず、粘土いじりに満足したあとは、ゆっくりと目を閉じ始めた。「少し休憩しよう…」そう思った瞬間、彼はすぐに意識を手放した。
だが、その安らかな眠りを破るかのように、突然あの声が響いた。「お前はまだ何もなしていない。」――それはどこかで聞いたことがある声だった。転移してきた際にも、同じような言葉が頭に響いたことを思い出す。その声は、真人を責めるように、さらに追い打ちをかける。
「また、大事な仲間を失うのか?」
その一言で、真人は飛び起きた。仲間を失う…? その言葉が胸に刺さり、瞬時に浮かんだのは、ミリアとルーナの姿だった。
「まずい…! 」
彼は焦りを感じ、すぐさま隠れ蓑から飛び出した。足音が鳴り響くほど、勢いよく走り出す。心臓がバクバクと高鳴り、冷や汗が額ににじむ。ミリアとルーナに、何かが起きているのではないか――そう感じた真人は、何度も二人の名を叫びながら、無我夢中で進んでいった。
「ミリア! ルーナ! 聞こえるか!」
だが、静寂の中に響く彼の声は、すぐに壁に吸い込まれてしまい、虚しく消えていく。まるで自分の声が無意味なものになってしまったかのような感覚に、真人は焦燥感を覚えた。しかし、それでも彼は立ち止まることはできなかった。
道中、突然現れたモンスターたちが、彼の行く手を阻もうとするが、真人はその度にクレイクラフトで即席の壁を作り、進路を確保しながら進んでいった。
「今は、モンスターなんか相手にしている場合じゃない…!」
彼は必死に自分に言い聞かせる。今、彼が優先すべきことはモンスターの撃退ではない。ミリアとルーナを探し出すことこそ、最優先事項だ。それに、もう仲間を失うなんてことは二度と繰り返したくない。あの二人だけは――彼の胸の中で、強い思いが燃え上がる。
「どうか…無事でいてくれ…」
そう願いながら、真人はさらにスピードを上げ、暗く狭い迷路のような通路を駆け抜けていった。体力はすでに限界に近づきつつあったが、それでも彼は足を止めることができなかった。頭の中で、ミリアやルーナの笑顔が何度も浮かび、それが彼を突き動かす原動力となっていた。
そんな中、彼の視界の隅に白いものが映った。思わず足を止め、真人はそれに駆け寄る。
「これは…」
手に取ったそれは、間違いなくミリアの服の一部だった。柔らかな手触りの白い布が、切り裂かれたように破れている。それを見て、真人の心臓がさらに高鳴る。
「近くにいる…!」
彼は確信した。ミリアもルーナも、この近くにいるはずだ。二人を救わなければ――焦りと決意が彼の中で渦巻き、慎重に周囲を見渡しながら、足音を殺してゆっくりと進んでいった。今度こそ、彼は彼女たちを守らなければならないのだ。
心の中で、何度も「どうか無事でいてくれ…」と祈りながら、真人は息を潜め、次の一歩を踏み出した。
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