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裏切りのトラウマ!でも俺は負けない!

真人たちは次の階層へと進むことができたが、その道のりは簡単ではなかった。霧のエリアでの幻覚が、まだ頭に残っている。ミリアがあれほどまでに惑わされ、体を震わせる姿は、今でも忘れられない。彼女の赤らんだ頬と、ちらちらとこちらを伺う瞳の動きは、どうしても気になってしまう。


「ここ…ヤバすぎたな。ミリアがあんな風になるなんて、思いもしなかったよ。」真人は呟き、作り笑いを浮かべた。目の前にいるミリアの様子を見ながら、胸の内で少し申し訳ない気持ちと、どこか可愛らしく感じる自分がいた。


ミリアはまだ体力的にも精神的にも限界が近いのか、虚ろな瞳で真人をちらちらと見ながら、「…はぁン…」とか、息を漏らしながら何か言いたそうに口を開きかける。しかし、その度に顔を真っ赤にして言葉を引っ込めるのだ。


「…ふぅ。」真人は深く息をつきながら、ミリアに視線を向ける。「大丈夫か?ミリア。顔がまだ赤いぞ。」


「んっ……はい…大丈夫です、少し…疲れただけで。」ミリアは小さな声で答えたが、その声には未だに熱がこもっている。どこか発情しているような様子が見え隠れし、真人は思わず視線をそらした。


その様子を見ていたルーナが、ため息混じりに言葉を発した。「私は平気よ。幻覚には強いから、あんなもの大したことないわ。でも、ミリアは幻覚耐性が低いみたいね。真人も、まぁ普通って感じかしら。」


真人は苦笑いを浮かべた。「俺もあの音楽にやられかけたけど、なんとか自分を叩いて目を覚ましたよ。油断してたら、今頃どうなっていたか分からない。」


ミリアは依然として顔を赤らめたまま、ちらちらと真人を見上げている。真人の目はその無防備な仕草に引き寄せられ、自然と微笑んでしまった。


「とにかく、今は安全な場所を見つけて休むしかないな。」真人は決意したように声を上げ、クレイクラフトを使って即席の隠れ蓑を作り始めた。何度も使い慣れた技術で、簡単に周囲から隠れることができる小さなシェルターが完成する。


3人はその隠れ蓑の中で一息ついた。目の前のミリアが少しずつ落ち着きを取り戻しているのを確認しながら、真人はクレイクラフトの有難さを改めて実感していた。


「ふぅ…ここなら安心して休めそうね。」ルーナが言い、安心したように肩をすくめた。「それにしても、このダンジョンって本当に面倒ね。次から次へと厄介な仕掛けばっかり。」


「まぁな。でも、少なくとも今は少し休む時間ができたから良かったよ。」真人はそう答え、地面に座り込んだ。


ミリアも静かに息を整えていたが、どこか真人に何かを話したそうにしている様子がうかがえた。それに気づいたルーナが、ふと話題を変えるように問いかけた。「ねえ、真人。あなたがこのダンジョンに来たのって、どんな感じだったの?私たちとは違う世界から来たって言ってたけど。」


その言葉に、真人はしばし黙り込んだ。自分がこのダンジョンに来た日のことを思い出すと、胸の奥にじわじわとした不安と怒りが湧き上がってくる。


「…最初は、ただの会社員だったんだよ。」真人はようやく口を開き、静かに話し始めた。「毎日毎日、仕事に追われて、何もかもが嫌になって…。ちょっとしたハプニングで異世界に転移した時、正直言って最初はパニックになったよ。誰もいない場所に放り出されて、何が起こったのか全然分からなかった。」


ミリアとルーナは、真人の話をじっと聞いていた。


「最初は…何もできなくて、ただ怖かったんだ。死ぬかもしれないって、本気で思ってた。それで、現実逃避みたいに粘土をいじり始めたんだ。クレイクラフトは、俺にとっては単なる趣味だったけど、今じゃ命を救うスキルになった。自分でも驚いてるよ。」


「そうだったのね…」ミリアがぽつりと呟いた。


真人は続けた。「でも、しばらくして仲間に出会ったんだ。佐藤、俺の昔からの友達だった。現実世界ではいつも頼りにしていたやつだったよ。他にも美咲、明るくて大人な雰囲気の女の子だった。山田は体力自慢で、鈴木は冷静で頭が良かった。理恵はメガネをかけた真面目そうな子で、料理がすごく上手だった。」


「へぇ、そんな仲間がいたんだ。」ルーナが興味深そうに言った。


真人はうなずいた。「ああ、最初は力を合わせて、このダンジョンから抜け出そうと必死だったんだよ。俺たち、ほんとにいいチームだった。お互いを信じて、助け合ってさ。」


その言葉に、ミリアもルーナも真剣な表情で耳を傾けた。だが、真人の声には次第に暗い色が混ざり始める。


「だけど…俺だけが成長できなかったんだ。みんなレベルアップして、どんどん強くなっていった。でも、俺はなぜか全然レベルが上がらなかったんだ。自分が役に立たないって感じるのが、どれだけ辛かったか…。」


真人の言葉に、ミリアは黙って視線を落とし、ルーナも息を呑んでいた。


「それで…」真人は言葉を詰まらせたが、やがて続けた。「理恵が作る料理が原因だったんだ。彼女が俺の成長を妨害してたんだよ。最初は気づかなかったけど、あの時、他のメンバーもだんだん俺を疎ましく思い始めてた。仲間だったはずなのに、気まずい空気が流れ始めて…。そして、ついに佐藤と理恵が裏切った。」


ミリアが驚いたように目を見開いた。「裏切った…?どうして…?」


「わからないよ。でも、あいつらは他の仲間を殺して、俺をも殺そうとしたんだ。何があったのか、未だに理解できない。でも…殺されそうになり崖から落とされた時、俺はもう死ぬかと思ったよ。」真人は拳を握りしめ、その瞳に怒りが浮かび始める。


「それでも、俺は死ななかった。崖を落ちる途中で、初めてスキルを使って命拾いしたんだ。それまで自分が無能だと思ってた分、その時は逆に復讐心が燃え上がったよ。」


真人の声は次第に荒くなり、怒りがこみ上げてくるのが見て取れた。「佐藤と理恵、あいつらを絶対に許さない。いつかこの手で…!」


声が震え、拳が固く握られている。ミリアはその様子を見て、そっと真人の肩に手を置いた。


「…あなた様、落ち着いてください。」ミリアの優しい声が、真人の耳に届いた。その瞬間、彼の体から少しずつ力が抜けていった。


「…すまない。どうしても、あのことを思い出すと怒りが止まらなくなるんだ。」真人は深く息を吐き、手で顔を覆った。


ルーナが静かに言葉を紡ぐ。「大変だったのね。でも、今は私たちがいるわ。もう一人じゃないわよ。」


ミリアも小さくうなずいた。「はい…私も、ずっとあなた様のお側におります。」


真人は二人の言葉を聞いて、ようやく少しだけ肩の力が抜けた。そして、再び静かな決意を胸に秘めた。


「ありがとう、ミリア、ルーナ。俺はまだあきらめない。このダンジョンを突破して、必ず奴らを見つけ出すんだ。」


ミリアとルーナは力強くうなずき、再び前を向いた。

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