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甘い罠にかかるミリア、ルーナの救いの手

霧がさらに濃くなり、薄暗いエリアを進む中、真人たちは新たな階層に踏み入れた。冷気が肌を刺し、霧の中を歩くたびにじわじわと寒さが体に染み込んでいく。周囲には何も見えず、静寂の中で耳鳴りがするような感覚すら覚える。


「この霧、何かおかしいな…」

真人が警戒しながら歩を進めると、耳に心地よい音楽が流れ込んできた。どこからともなく奏でられる優美な旋律は、心を安らげ、緊張感を一瞬にして解きほぐす。


「この音楽…」

気づけば、真人はその音に誘われるように立ち止まり、目の前に突然現れた豪華な食卓に目を奪われていた。家族と過ごした懐かしい食事の記憶。おかしいと思いつつも、その感覚はあまりにも現実味を帯びていた。

「懐かしい…これ、母さんが…」

手を伸ばそうとした瞬間、頭に痛みが走った。


「痛っ!」

真人は驚きの声を上げ、目を覚ますと、ルーナが自分の頭を叩いていた。鋭い目で真人を見つめ、彼女が幻覚を見破ってくれたことに気づく。

「幻覚よ、しっかりして!」

ルーナの一言で、真人はすぐに状況を理解し、慌てて指示を出す。

「このエリア、危険だ!すぐに逃げるぞ!」


走り出そうとするが、その瞬間、背後から優しい声が響いた。

「真人…」

聞き覚えのあるその声。振り返ると、そこには現世での両親の姿があった。亡くなったはずの母親が微笑みかけてくる。

「真人、よく頑張ったね…少し休んだ方がいいよ」

心の中に込み上げてくる懐かしさと安心感。誘惑に負けそうになるが、真人は自らの手にフォークを突き刺し、痛みで現実に引き戻される。

「これは…幻覚だ…!」


冷静さを取り戻し、周囲を確認すると、ルーナはすでに対応している。しかし、ミリアの姿に気づいた瞬間、真人は凍りついた。


ミリアは目の前で、恥じらいながらも虚空に向かって話しかけていた。頬を赤らめ、蕩けるような笑顔を浮かべて、まるで何かに酔いしれているかのようだった。

「あなた様…どうか、私を…好きにしてください…」

彼女の声は震え、どこか甘美で、切なげな響きを帯びていた。顔は恥ずかしさに赤く染まり、その手は自身の服に触れ、胸元に手を滑らせていた。

「な…何してるんだ、ミリア!?」


真人の心臓が跳ね上がり、急いで声をかけたが、ミリアは聞こえていないようだった。彼女の瞳は遠くを見つめ、手はゆっくりと服のひもにかかる。

「あなた様…どうか…この身をお望みのままに…」

その声はさらに艶やかになり、彼女の手は少しずつ服を脱ぐかのように動き始めた。


「やめろ、ミリア!」

真人は慌てて駆け寄ろうとするが、その姿がどうしても止められない。彼女の唇は軽く震え、蕩けるように柔らかい声が響く。

「私…あなた様に…すべてを捧げます…どうか、私を…」

彼女の指先が自分の胸元に触れ、服を少しずつ下げようとする瞬間、真人は意を決して彼女の頬を思いっきり叩いた。


「目を覚ませ!ミリア!」

彼の手が頬に当たると、彼女の体が一瞬ピクリと震えた。そして、しばらくの静寂が続いた後、彼女の頬が赤くなり、目が覚めたように瞬きを繰り返した。

「えっ…?えぇっ!?ち、違うんです!そ、そんなつもりじゃ…!」

ミリアは慌てふためき、すぐに自分が何をしていたかに気づくと、その顔はさらに真っ赤になった。

「い、今のは…幻覚で…私…そんな…!」

彼女は必死に言い訳しようとするが、すでに言葉にならない状況を悟り、涙目で縮こまる。


真人もルーナも冷ややかな視線で彼女を見つめ、何も言わない。その光景に、ミリアはますます顔を真っ赤にして俯いた。

「す、すみません…」


それでも幻覚の影響はしばらく続き、ミリアは時折、意味のわからない言葉を呟いたり、遠くを見つめたりしていたが、なんとか意識を保ちながら進み続けた。もちろん、彼女が幻覚にかかっている間、真人もルーナも冷ややかな目で見守るしかなかった。



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