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狂乱の羽と封じられた心

その朝、ルーナの様子がどうにもおかしかった。いつもは上品で知識を感じさせる声色に、どこか妖艶な雰囲気を漂わせながら話す彼女だが、今日は突然笑い出したかと思えば、遠い目をして泣き出すなど、まるで感情のコントロールができていないかのようだった。


「ルーナさん、どうしたんでしょう…?」

おっとりとした声で、ミリアが真人に問いかける。彼女の話し方はいつも通り従順で、仲間に対しても敬語を使っていた。

「わからないな…。普段は落ち着いてるし、あんなことしないのに…。何かあったのかもしれない」

真人も心配そうに答える。


その日も探索を続けていたが、ルーナの異常な様子は続いていた。モンスターとの戦闘でも、普段なら的確なアドバイスを出してくれるはずのルーナが、今日は曖昧な指示しか出せない。それでも真人とミリアは連携を取って何とか対処し、モンスターを撃退していたが、戦闘後、ルーナが大泣きしながら真人に謝罪してきた。


「ごめんなさい…ごめんなさい、真人…!」

ルーナは地面に膝をつき、涙を流しながら震えていた。彼女の茶色と白が混じる美しい羽が揺れ、肩にかかっていた。


「ルーナ、大丈夫だ。俺たちは無事だし、気にするな」

真人はそっと彼女の肩に手を置き、優しくなだめた。しかし、ルーナの涙は止まらず、彼女はその場で泣き続けていた。


その日は終日、ギリギリの戦闘が続き、ようやく夜になって休息を取ることができた。真人はいつものように粘土細工に集中し、少し際どい作品を作りながら気分を紛らわせていた。しかし、静寂を破るかのように、ガサガサと何かが動く音が聞こえてきた。


「…なんだ?」

真人は音のする方に目を向けた。仲間たちのいる場所へそっと近づくと、そこには異様な光景が広がっていた。ルーナが自分の美しい茶色と白の羽を毟っていたのだ。大切にしているはずの羽を、無意識に自分の手で引き抜いている。


「ルーナ、やめろ!」

真人は驚いて声をあげ、ルーナを優しく抱きしめた。彼女はその瞬間、動きを止め、真人の腕の中で小さく震えていた。


「大丈夫だ、そんなことしちゃダメだ。お前の羽はすごく綺麗なんだぞ」

真人は優しく彼女の背中を撫で、落ち着かせるように語りかける。ルーナは彼の言葉に少しだけ安堵したのか、胸の中で泣き始めた。

「…ううっ…ごめんなさい…」

かすかな声で謝りながら、彼女は泣き疲れて次第に眠りに落ちていく。真人は心配しながらも、ルーナを抱きしめたままその晩を過ごした。


その状態が3日ほど続いた。ルーナの情緒不安定な状態は一向に改善せず、真人とミリアは彼女の様子を気にかけながらもダンジョン探索を進めていた。そして、4日目の朝、ついに事態は急変する。


泥のような不気味な液体が溜まっている場所から、突然異形のモンスターが現れた。そいつは巨大なスライムのような姿をしており、体は半透明で、その中には無数の小さな顔のようなものが浮かび上がっていた。黄色く光る目が、じっとこちらを見つめている。


「なんですか…これは…」

ミリアがおっとりとした声で驚きながら後ずさる。スライムは重たそうに見える体を揺らしながら、しかし意外と素早く滑るように地面を這って接近してくる。その巨大な体からは、鋭い触手がいくつも伸び、粘液を飛ばしながら鋭く振り下ろされる。


「ミリア、ルーナを守れ!」

真人が叫び、剣を構えてスライムに立ち向かおうとする。しかし、スライムの動きは予想以上に速く、真人が間合いを詰める前に、ルーナに向かって石のような塊を弾き飛ばした。その塊はルーナの腹部に直撃し、彼女は呻き声をあげて地面に崩れ落ちた。


「ルーナ!」

真人は急いで駆け寄り、彼女を抱きかかえる。しかし、その時、ルーナの口から薄紫色の石が吐き出された。

「これって…何だ…?」

真人は驚いて石を見つめる。石は地面を転がり、壁にぶつかると同時に消えてしまった。


しばらく意識を失っていたルーナは、ゆっくりと目を開けた。彼女は周りを見渡し、ほっとしたように息をついた。

「助かった…」

弱々しく呟く彼女の顔には、どこか安堵の表情が浮かんでいる。


「ルーナ、その石は一体なんだったんだ?」

真人が問いかけると、ルーナはかすかに微笑みながら答えた。

「あの石が原因だったの…。数日前、戦闘中に魔法攻撃を受けた時、体の中に入り込んでしまったの。あれがずっと私の感情を乱していたのよ…」


ルーナはその間、ずっと自分の感情を抑えきれずに苦しんでいたという。薄紫色の石は、彼女の中で長い間、感情を揺さぶる存在として影響を及ぼしていたのだ。


「だから、あんなに不安定だったんだな…。でも、もう大丈夫だよな?」

真人が優しく問いかけると、ルーナは微かに頷いた。


「本当に、ご迷惑をおかけしました…真人さん、ミリアさん…」

ルーナは申し訳なさそうに言い、ミリアは穏やかに微笑みながら答えた。

「いえ…ルーナさんが元に戻られて本当に良かったです」


ルーナの状態が回復し、いつもの彼女に戻ったことで、三人は再び安心してダンジョンの探索を続けることができるようになった。



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