決意の一撃!守られるだけの私じゃない
ミリアの一撃で後退したグリムクロウは、苦しげに体を震わせながらも、敵意に満ちた目でミリアを睨みつけた。その巨大な黒い瞳には、彼女を敵と認識した表情が浮かんでいる。だが、ミリアは怯むことなく、静かに相手の動きを伺っていた。その小柄な体には、これまでにない鋭い緊張感が漂っている。
その背後には、倒れたままの真人がいた。彼の体は疲労と痛みで限界に達しており、動くことすらままならない。しかし、目の前で戦おうとするミリアの姿に驚き、真人はかすれた声で彼女に呼びかけた。
「ミリア…お前、逃げろって言っただろ…。危ないから…。」
真人の声には、彼女を守りたい一心が込められていた。しかし、その言葉はミリアの耳に届くことなく、彼女は真人の言葉を遮るように、静かに返事をした。
「あなた様…いつまでも守られてばかりでは、いけません…。私も、大切な仲間であるあなた様のために…戦います。」
その言葉には、決意と自責の念が込められていた。ミリアは自分の無力さを長く感じてきた。奴隷として、そして弱い存在として、ただ守られるだけの自分を嫌悪していた。しかし、真人が命を懸けて戦ってくれた今、彼女もまた、戦わなければならないと覚悟を決めていた。
そんなやり取りの中、グリムクロウが低く唸りを上げると、突然その口から黒い火の玉を吐き出した。巨大な火の塊が、まるでミリアを飲み込むかのように迫ってくる。しかし、彼女はその火球に一瞬の躊躇も見せず、突進した。
「はぁぁっ!」
彼女は両手に握ったナイフを鋭く振り下ろし、火の玉を真っ二つに切り裂いた。火の粉が四散し、辺りが一瞬、赤い光で照らされた。しかし、ミリアの動きは止まらなかった。むしろその勢いは増し、グリムクロウに向かって一直線に突進していく。
「これで…終わりにします…。」
その小さな体からは想像もできないほどの力が、彼女の全身に宿っていた。彼女はグリムクロウの右の羽に狙いを定め、ナイフで連続攻撃を繰り出した。素早い動きで羽を切り裂かれたグリムクロウは、苦しげに体を揺らし、後退しようとしたが、ミリアはそれを見逃さなかった。
「もう…逃げられません…!」
ミリアは彼の背中に回り込み、素早くナイフで足や腹を次々に切りつけた。グリムクロウは痛みにうめきながら、最後の力を振り絞り、巨大な爪でミリアを踏みつけようとした。しかしその瞬間、真人がクレイクラフトの力を使って、グリムクロウの足を大地に固定した。
「今だ…!」
足を動かせないグリムクロウは、もがきながら頭を下げ、その足を解こうとしたが、その瞬間を見逃さなかったミリアが、ナイフを首に深く突き刺した。そして、さらに両目にもナイフを突き立てた。グリムクロウは苦しみのあまり、これまで聞いたことのないような悲鳴を上げた。
ミリアは一度距離を取り、壁に突き刺さっていたナイフを素早く引き抜くと、背後から再びグリムクロウの首筋に二本のナイフを深々と突き刺した。巨大な体が一瞬痙攣し、ついに力尽き、ゆっくりと倒れていった。
その一部始終を見ていたルーナは、驚愕とともに目を覚ました。グリムクロウが倒れている光景に、彼女は一瞬信じられない様子だった。
「…あのグリムクロウが…。」
目の前の状況が信じられないまま、ルーナは真人とミリアを交互に見つめた。ミリアは疲れた様子を見せることなく、すぐに真人の元へと駆け寄った。
「あなた様…ご無事ですか?」
彼女の声は、落ち着いた調子で、だが少し震えていた。真人はその声を聞きながら、弱々しく微笑みを浮かべた。
「ミリア…お前、すごいな…。俺…なんもできなかった…。」
その言葉にミリアはゆっくりと首を振った。
「いえ、そんなことはありません。あなた様がグリムクロウの足を止めてくださったからこそ、私も勝てました…。本当に、ありがとうございます。」
真人が彼女の感謝の言葉に戸惑っている間に、ルーナもそばに降りてきて、真人が無事であることを確認し、ほっとした表情を浮かべた。
「失礼いたします…。」
ミリアは小さく一礼すると、真人の頭を優しく持ち上げ、自分の膝の上に乗せた。彼女の膝の上で、真人はぼんやりとした意識の中、微かに呟いた。
「膝枕…?」
彼の呟きに、ミリアは一瞬驚いたような表情を浮かべたが、すぐに柔らかく微笑んだ。
「ええ…。少しの間、ゆっくり休んでください…あなた様。」
真人はその言葉に、何かを言い返すこともできず、ただ微かに「柔らかい…」と呟くと、そっと目を瞑った。ミリアは彼の頭を撫でながら、彼が安心できるようにと、優しく彼に寄り添った。
「どうか…安心してお休みください…。私が、あなた様をお守りします…。」
ルーナもそっと彼の手を握り締め、安堵の表情を浮かべていた。
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