待ち伏せされて
「伊斗、最近なんかいいことあった?」
出たっ!エスパーそう君っ!
「なんもないけど」
「んなことないでしょ。絶対なんかあった」
「ないって」
「ふーん・・・俺が教えてる日以外は、何してんの?」
「夏期講習」
「へー・・・どこの?」
なんだか、いつにも増して笑顔が怖い・・・
教えたらヤバいやつかな?
「・・・そう君には関係ない」
「知られたくない何かがあるみたいだね」
「そ、んな、事ない」
「じゃあ、言えるよね?」
何回か夏期講習に通って、松下晴君(以下、はる君と呼ぶ)とはだいぶ仲良くなった。
てか、同じ漫画見てたり、音楽の趣味もあってめちゃくちゃ仲良くなった。
これぞ友だち!って感じに。
だから、最近塾に通うのが楽しみになってる。
でも、前にそう君の前ではる君の話を出した時に、様子がおかしかったから話しちゃいけない気がする・・・
ま、塾の名前くらいならいっか。
「・・・T学院」
「駅前の?」
「そうだけど・・・、なんでそんな事聞くの?」
「放って置けないから」
「なにそれ。・・・そう君、たまによく分からない事言うよね」
「伊斗は分かんなくてもいいよ」
「私に関係する話なんでしょ?なのに、私には教えてくれないの?」
「伊斗は、俺とどうなりたい?」
「・・・は?」
「そんなんじゃ、教えてあげられない」
そう君はまたよくわからない笑みを浮かべて、私を見てた。
なんだか、怖くなって目を逸らす。
これ以上突っ込んだら、後戻りできなくなりそう。
自分から進んで面倒ごとに首突っ込まなくても、いいよね。
その後は勉強の事以外は話さずに帰宅した。
◆◆◆◆◆
「・・・なんで」
「放って置けないから」
涼しい教室から茹だるような夏の夜の街に出てきたら、外には女の子の人集りができていた。
なんか有名人でも来てるんだろうか、なんて考えていたら人集りが割れて1人の男性がこちらに向かって歩いてきた。
まさか、と思ったら案の定そう君。
「迎えに来たって事?」
「そうだよ」
「なんで」
「伊斗だから」
「・・・〜〜、意味わかんない!」
なんだかイライラして、色々ぶち撒けたい気持ちだったけど。
人前でそんな事したくない。
だからそう君の事は無視して歩き出した。
そう君は黙って隣に並んだ。
「置いていかないで」
「やだ」
「伊斗」
「やだ!」
「いーと」
「・・・」
「伊斗、心配してるのは本当だから。送らせて?」
「そう君は、ズルいよね」
「ごめんね」
「自覚があるなら、やめてよね」
「伊斗にだけだから、許して?」
「やだ」
イライラも、気付いたら凪いでいた。
今日ははる君が先に帰っていたから、まだ良かったかも。
そう君とはる君が会ったら、恐ろしい事が起こりそう。
なんとなく。