受講して
ピピピピ
ピピピピ
「・・・ふぬぁ」
起きぬけのぼんやりした頭で、なんとかアラームを止める。
時間を確認すると、7時。
まだ寝れるじゃん。
布団を頭まで被ろうと引っ張ったら、なんか引っかかった。
ん?
ぐいっといったら、引っ掛かりが外れた感触がしたけど・・・
「さむっ」
って言って何かがくっついてきた。
は?
「いと?」
何かが喋った。
「いま、なんじ?」
「ぎゃああぁぁぁー!!!!」
爽やかな朝に似合わない悲鳴が響いた。
「伊斗、元気だね」
「そそそそそそそう君っ!!なななななんでっここここっちのベッドででででてっ!いたっ!」
噛んだ。
「よしよし」
「・・・お腹空いた」
「朝食、食べに行こうか」
「・・・うん」
朝から疲れてしまった。
◆◆◆◆◆
朝食を食べて荷物をまとめて後は帰るだけって時に、そう君が寄りたい所があるって言い出した。
「運転するのはそう君だし、私はいいよ」
「決まり」
そう君が借りたレンタカーに乗って、しばらくするとーーー
「わぁ!きれい!」
「でしょ?車のCMとかでも使われてるんだって」
木々のない高原の道路は、手を伸ばせば触れられそうなくらい、すぐそこに青空が見える。
吹き抜ける風は少し冷たいが、それが心地いい。
「空気が美味しー!」
「気に入った?」
「うん!癒されるー!」
「美味しいソフトクリーム、食べる?」
「食べるー!」
途中に立ち寄った牧場で美味しいソフトクリームを2人で分けっこして、楽しい旅行は終わりを告げた。
◆◆◆◆◆
そう君との旅行で心の充電がMAXになった私は、そう君におんぶに抱っこでは申し訳ないなと思って、夏期講習を受講することにした。
家から近くて、それなりに評判のいいところ。
受けてみてわかったのは、そう君の教え方がめちゃ上手だってことだった。
でも受講料もったいないし、ちゃんと最後まで通おうと今日も1限から出席していた。
お昼休憩には空いてる教室で1人お弁当を食べる。
さすがに外食するだけのお金の余裕はない。
「んー、やっぱ煮物は一晩置いた方が美味しいな」
ニヒヒと1人で笑いながら、全体的に茶色いお弁当を消費していく。
他に人がいないから、自然と独り言も多くなる。
ガチャ
「ーーーあ」
「へ?」
扉を開けて入ってきたのは、いつか保健室でお世話になった松下君だった。
「えーと、お久しぶりです」
「あ、その節はどうも」
「いえいえ、大した事してませんから」
「・・・」
「あ、じゃあ、失礼します」
「ままま待って!」
?な顔した松下君が首を傾げる。
そんな仕草する男子、記念物級じゃない?
「この前助けてくれたお礼!まだ、してないから・・・」
なぁんだって顔して、松下君が小さく笑う。
「いいですよ、お礼なんて。先輩が元気そうで良かったです」
「いやいや、良くない!えーと・・・なにか、そだ!今度ご飯奢るよ!」
「それは申し訳ないので・・・自販機で奢ってくれるだけでいいですよ」
「そう?・・・でもそれだけじゃ、助けてくれたお礼には足らないような・・・。じゃあ、なんでも1回だけ言う事聞く!なんでも言って!」
「・・・わかりました。何かあったら、お願いします」
「うん!じゃあ、早速自販機行こ!」
松下君も同じ塾に通ってるって事で、私と同じようにお弁当を食べようと空いてる教室を探していたらしい。
学年を確認したら、高2って話だった。
高2の夏休みって私はもっと遊んでたなぁって話したら、行きたい大学があるとかで夏期講習に来てるんだって。
それからも、塾で会うと度々話をするようになった。