癒されて
そう君に家庭教師を頼んでから3ヶ月。
期末試験が終わってその結果をそう君に報告にきた私は、部屋の前で可愛い子に遭遇した。
前世の経験もあって、すぐに『そう君の彼女だ!』と想像をめぐらせて、わざとそう君の部屋の前を素通りして帰宅した。
元々約束していた訳じゃない。
私が勝手に来たのだからと、そう君には何も言わなかった。
そして夏休みが始まり、そう君の家と実家の往復の日々。
期末試験の結果が思ったよりも良くなってて、ご褒美って事で有名な花火大会に連れて行ってもらう事になった。
ホテルの目の前の湖に小島があって、そこから上がる花火をホテルのベランダで見ることができる。
ホテルに宿泊しないと観られないし、その予約を取るのも大変だから、諦めてた。
そんな話を以前そう君にしてた事も忘れてた。
そしたらなぜか勉強頑張ってるからって誘われて、両親への許可も取り付けてた。
私がお願いしても許してくれそうにない親なのに、そう君のお願いには許可出すってどゆこと?
実の娘より、知り合いの息子の方が信頼できると?
まぁでも、私だけじゃ一生行けなかっただろうし、お金もそう君持ちだし、行く以外にない。
友だち達も誘おうかと思ったけど、予約が2名1部屋分しか取れなかったそうで、2人きりで一泊二日の旅行になった。
その前に、私は一応確認しなきゃいけない事があった。
「そう君、確認したい事があるの」
「なに?」
「私いびきが酷いけど、本当に私と一緒でいいの?」
「いいよ。慣れてる」
「そっか。それならいいや」
「確認したいのって、それだけ?」
「うん。予め言っとかないと、耳栓用意できないでしょ?」
「はは、ありがとう」
彼女がいるんじゃないの?とか。
2人きりで泊まりで花火大会なんて、ただの幼馴染じゃないよね?とか。
そう君は私の事どう想ってるの?とか。
そんな事、確認する必要ない。
私はそう君の幼馴染で、モブで。
ただ、それだけなんだから。
◆◆◆◆◆
「8月とは思えないくらい!涼しいー!」
「伊斗、荷物持つから」
「ありがとうー!」
「いいえ」
花火大会当日。
ホテルに到着した私たちは、ホテルに荷物を預けてから、近くを散策する事にした。
到着したのがお昼前だったので、近くのレストランで昼食を取って、湖の周りを散歩する。
日差しは強いが、風が気持ちいい。
日陰にベンチがあったので、そこに座ってキラキラ光る湖の水面を見つめる。
「いいねぇ。癒されるー!」
「今日明日はいろんな事忘れて、楽しんで」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「この後、どーする?」
「あっちに美術館あるけど、行ってみる?」
「いいね!行ってみよう!」
優しいタッチの絵をゆっくり観て、併設されてるカフェでケーキなんて頂いて。
早いけどホテルに戻ってゆっくりしようなんて言って、2人並んでホテルまでの道のりを歩いた。