助けられて1
私、鈴木伊斗には残念な・・・というか、特殊能力がある。
イケメンを見たり、近くにいると動悸がして気持ち悪くなるのだ。
名付けて、イケメン恐怖症。
これは前世のあお君のせい。
だから友だち達がキャッキャッしながらイケメン'sに群がるのはいいのだが、私は近づきたくない。
断固拒否!
そう君は幼馴染で、抗体があるから唯一側にいられる。
待ち合わせ場所で当たり前の様に友だち達と談笑しているイケメン5人を総称してイケメン'sとしたが、見てるだけで気持ち悪い。
そんな中、よく見ると1人場違いな雰囲気の人がいた。
というか、あれ、そう君じゃん。
伊達眼鏡に、髪を顔にかかるようにして涼しげな目元を隠してる。
ボサボサ頭に、オシャレでもなんでもないフツーのTシャツにスラックス。
長身なのを隠すためか、猫背にしてる・・・
私はそう君の元に小走りで向かって、手を引いた。
「なに、その格好?」
「変装。俺、これでもモテるからさ」
「なんで変装なんて・・・」
「それより、よく分かったね。俺だって」
「気付くよ。そう君だもん」
「はは。やっぱ伊斗だね」
そう君と話してると、友だちが寄ってきた。
「伊斗ー。この人たち知り合い?」
「ちょっと、こんなイケメンの知り合いいるんなら紹介してよ」
「えっ、いや、知り合いなのはこの杉崎君だけで、他の人は知らない・・・」
「へぇー?杉崎君って伊斗の彼氏?」
「お似合いじゃん」
「この人たち、杉崎君の友だち?どーゆー関係?」
なんと答えればいいのか困っていると、キラキラしたイケメンその1が来た。
「俺たち、杉崎の友だちなんだ。これから富士急行くんでしょ?俺らも一緒してい?」
爽やかイケメンその2も近付いてきた。
「俺、車出すし」
「男ばっかだとつまんないし。可愛い子が一緒だと嬉しいな」
大人っぽいイケメンその3と、チャラいイケメンその4も来た。
ここのイケメン出現率がおかしな事になってる。
うぅ、気持ち悪い・・・
私がイケメン恐怖症なのを知ってるそう君が、さりげなく私を引き寄せてイケメン'sから離してくれた。
うぅ・・・それでも近い・・・
「えー、じゃあ、一緒に行く?」
「うっそ、マジ?ちょっとメイク直しさせてっ!」
友だち達は満更でもない感じでイケメン'sと一緒に歩き出した。
「・・・伊斗ちゃん、気分悪そうだから。キャンセルさせてくれる?」
そう君がボソッと呟いた。
「えっ?伊斗、具合悪いの?ちょっと、ここで帰るなんてシラけるじゃん」
「みんなで楽しんできてよ」
断るそう君に、イケメン'sも加勢した。
「俺たちだけじゃ、ダメ?」
「伊斗ちゃんは杉崎に任せて、行こ?」
イケメン'sの言葉に、友だち達は私の事を離してくれる気になったようで、
「しょうがないなぁ」
「まぁ、無理させても良くないよね」
「伊斗の分まで楽しんでくるからねー」
心配してるフリの友だち達は、あっけなくイケメン'sと行ってしまった。
「・・・行ったね。伊斗、少し休む?」
「うぅ〜ん・・・休む・・・」
「ほら、タカノまで歩ける?」
「うぅ、・・・歩ける」
そう君に手を引いてもらってなんとかタカノまで歩いた私は、なんか急に元気になってパフェを奢ってもらった。