肯定されて
出来たてホヤホヤ
「伊斗」
今日の夢は、なかなか覚めない。
私を呼ぶ声が、いつまでも聞こえてる。
「伊斗。近付いても、いい?」
優しい声に、涙が溢れてきた。
これは夢。
黙って頷く。
私の返事を見て、そう君は私の側まで近寄ってきた。
「隣に、座ってもいい?」
申し訳なさそうにお願いされたら、私は断れない。
だって、側にいる人はそう君だもん。
私をいじめてた、あお君じゃない。
頷いた私を認めて、そう君は隣に座る。
「・・・蒼芭に、会った?」
その名前がそう君から出てきて、余計に涙が溢れた。
言葉が・・・止まらなかった。
「そ、そう君がっ・・・あお君の、生まれ変わりだって・・・嘘でしょ?嘘だよね!・・・だ、だってっ・・・だって・・・、いつも優しくて・・・、私に好意を向けてくれたっ!・・・私をっ!・・・大事に・・・して・・・・・・くれた」
言いながら、自分でも嘘じゃないって分かってた。
このどうしようもない葛藤を、苛立ちを、ぶつけたいだけ。
騙していたのかと、詰ってしまいたかった。
「・・・そう君の・・・向けてくれる感情に・・・嘘はなかった。私、分かってる。分かってるのにっ・・・じゃあ、なんで“私“を殺したの?!前世の“私“はダメで、今世の私は好きってっ・・・・・・なんでっ!!なんで・・・なんで・・・」
「伊斗」
「・・・また、私を殺すの?」
「・・・殺さないよ」
「私が、・・・もう、生まれ変われないから・・・?」
「それは・・・」
「今までの“私“も、殺したの?」
「・・・そうだね」
顔を上げた私は、自分がどんな顔でそう君を見つめているのか、分からなかった。
目が合ったそう君は・・・酷く苦しそうで。
・・・なんで、加害者のそう君がそんな顔するの?
こちらに伸ばしてきた手を、強く払った。
「触らないで」
「伊斗」
「いやっ」
「触らない。触らないから・・・そんな顔をさせて、ごめん」
「・・・謝るなんて、ズルいよ。そんなの・・・」
「そうだね・・・」
言い訳、してよ。
私の心を納得させて。
このまま、苦しいままでいたくない・・・
「伊斗が嫌じゃないなら、蒼芭の・・・“俺“の話を聞いてくれる?」
「うん・・・」
そう君は、静かに話し始めた。