慰められて
「ふーん。松下と登下校してるんだ・・・。ま、アイツの事だから、伊斗の嫌がる事はしないか」
「え?会ったの1回だけなのに、そこまで分かるの?」
「分かるよ。それで、伊斗はどうしたいの?」
「・・・卒業まで、学校に行きたい・・・」
「先生に説明して、保健室登校にする?」
「・・・そ、うだね。・・・でも、それじゃ解決にはならないんじゃ・・・」
「わざわざ、そんな奴らと向き合う必要ある?」
「保健室に行ったって、逃げられると思えない・・・」
「先生もいるし、心配なら鍵かけちゃえばいいと思うけど」
「うん・・・」
「なにが引っかかってるの?」
「・・・」
優しく問い掛けてくれるそう君に、上手く説明できなくて黙り込む。
そう君は私の言葉をずっと待ってくれて、私はまとまらないながらも口を開く。
「・・・このまま、なのは嫌なんだと思う・・・。こうしたい、とか、そういうの、ないけど・・・もう少し、頑張ってみるよ・・・」
「・・・伊斗がそう言うなら、俺は見守るよ。でも、どうにもならない時は、ちゃんと呼んで?どんな時でも、何があっても、どれほど離れてても、助けに行くから」
「ふふ・・・スーパーマンみたい・・・」
「・・・伊斗は、強くなったね」
「そ、そう?」
「うん」
いつにも増して、優しい瞳がこちらを見つめていて。
極上のイケメンがそんな顔をしていたら、なぜか顔が赤くなってきた。
「・・・可愛い」
「ちょっと!その雰囲気、やめて!」
「どんな雰囲気?」
「なんか、あああま、甘ったるい、感じ・・・」
「大丈夫。こんな時に全部食べたりしない」
「食べる?!私は美味しくないよ!!」
「伊斗は美味しいよ、きっと」
「ひぃぃーーー!!!」
「ははは。雰囲気、ぶち壊しだね」
「慰めてくれたのは感謝してるけど、もう帰って!」
「今日は言うこと聞いとくね」
そう言うと、そう君は私の右手を優しく掴んで持ち上げた。
すごくさりげなくて、手を引き抜けなかった。
持ち上げた右手の甲に、そう君の唇が重なった。
その一瞬で、更に熱が上がった。
まるでお伽話のお姫様にするみたい。
「俺が、伊斗を守るから」
唇が離れて、そう君の真剣な声にはっとする。
少し見えたそう君の瞳は、唇の感触と違って今にも殺されてしまいそうな程の鋭さがあった。
その瞳にビクッと身体を震わせる。
それに気付いたそう君は、ふっと笑った。
瞳は真剣なまま。
「伊斗を傷付けたりしないよ。伊斗が俺を裏切らない限り」