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招かれて






あれから15年ーーー


平凡モブ子な私、鈴木伊斗は高校3年生になりました。

前世の記憶があるからって、チート的ななにかはなく。

フツーの人生。

あえて言うなら、幼馴染ガチャは当たりだったなー。


「伊斗ー。今日は奏吾君の所?」

「そだよ。今日から家庭教師してもらうんだ!」

「よろしく言っておいてね」

「はーい」


幼馴染の杉崎奏吾君は、私より1個上の大学1年生。

なんとあの名門大学T大に現役合格する頭脳である。

新入生として忙しい毎日を過ごしているであろう奏吾君は、なんの暇つぶしか私の受験勉強に付き合ってくれるらしい。

可愛かったそう君は、長身・イケメン・優しいと、いつかの誰かのような完璧人間に育っていた。

あお君なんか目じゃないくらい、優しい良い人だけど。

でも、なんだろう・・・

私からすると完璧すぎて怖い。

出来過ぎる幼馴染は持つものじゃない。

でも、勉強教えてくれるっていうから、そこは甘えとこう!


学校終わりに、お母さんから渡されてたお金で買った菓子折りを持って、そう君の部屋を訪ねた。

勉強教えてくれる条件として、この春から一人暮らしを始めたそう君の部屋で、と言われたのだ。

あんなカッコいい人と、2人きり?!

なーんてドキドキする事はなく。

お母さんと綾菜ママの仲だし、そう君に限って変な事はないし、という根拠のない信頼の元に許可された。


ピンポーン


約束の時間5分前だから、そう君はいるはず。


ガチャ


ほら、やっぱりね。

本物のイケメンは玄関先で女の子を待たせるような事はしないのよ。


「いらっしゃい、伊斗」


扉が開いた瞬間に、ほんのりと甘い匂いが鼻腔をくすぐった。

爽やかイケメンって、いい匂いだわ。


「お邪魔します」


そう言って一歩中に足を踏み入れたら、なぜか悪寒がした。


「そう君、エアコン効きすぎじゃない?」


そう君はニコッて笑った。

昔からよく見てた笑顔。

でも、大きくなるにつれ、その笑顔が胡散臭く見えてきちゃった。

まぁ、イケメンにも色々あるのよね。


「エアコンつけてないから。気のせいだと思うよ。中へどうぞ」

「はーい」


部屋に入ると引っ越ししてまだ1ヶ月くらいなのに、綺麗に片付いてた。


「片付いてるね」

「伊斗来るし。そりゃ片付けるよ」

「ふーん」

「はい。伊斗はこっちに座ってね」

「はーい。あ、そだ、これあげる」

「ありがとう。勉強終わったら、2人で食べよっか」

「うん」

「それで、伊斗はどこ受けるの?」

「んー、H大かな?」

「了解。じゃあ、今日は伊斗の学力がどれくらいか、テストしよっか」

「おねしゃす」


3時間くらいテストして、疲れた脳にご褒美をあげる事に。


「あ、このメレンゲクッキー、美味い」

「でしょでしょー?私の最近のオススメ!」


一口食べて目を見開いたそう君の顔を見て、得意げにニヤニヤする。

そしたら、そう君がクッキーを一つ手に持ってこちらに差し出してきた。


「はい、伊斗。あーん」

「・・・は?」

「あーん」

「何やってんの?キモい」


どこのバカップルだ?

いや、私とそう君は恋人でもなんでもない。

キモいと言われてもニコニコしてるそう君をジト目で睨み、差し出しているクッキーを奪って自分で食べる。


「そーゆーノリやめてよ。気色悪い」

「食べさせてみたかったんだ」

「私はペットか?」

「ペットにしていいの?」

「やめて」

「残念」

「もう帰る」

「送ってくよ」

「いらない」

「伊斗は女の子なんだから、ちゃんと送らせて」


そう君は私の手を掴んでぎゅと握る。

そんなに強くないから、痛くはない。

そーゆー加減ができるところは、なんかズルい。


「ほら、いこ」


暖かくなってきたとはいえ、まだ4月の夜。

いつの間にかキレイめなコートを着たそう君が、私の手を引いて笑ってる。


前世の元幼馴染あお君のせいでイケメンが苦手な私は、なんで今世でもこんなイケメン幼馴染が側にいるんだろう。

昔は可愛かったのになぁー。

なんでイケメンになっちゃうのかなぁー。

あーあ、眼鏡君が恋しい・・・





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