髪をセットされて
「伊斗ー!早く起きないと、はる君来ちゃうわよー!」
「うわぁっ!ななななんじ?!」
「7時15分!」
「やばっ」
模試の翌日、久しぶりに寝坊してしまった。
昨夜、遅くまで模試の復習をしていて、寝るのが遅くなったのだ。
とにかく顔を洗って着替えて、急いで玄関に向かった。
まだ7時28分だったが、はる君は家の壁を背に立っていた。
「はる君っ!お待たせ!」
「おはようございます。全然待ってないですよ。むしろ、約束の7時30分よりちょっと早いです」
「そうだけど!でも、待ったでしょ?」
「待つのは嫌いじゃないですから。僕が好きで待ってるんです。それより伊斗先輩、ちょっとこっち来てください」
「ん?どしたの?」
はる君においでおいでをされて、忠犬よろしく近付いた。
はる君は私の背後に回ると、髪の毛を弄り始めた。
「寝ぐせ、ヤバかった?」
「可愛いですよ。でも、他の人に見られたくないので、ちょっとまとめちゃいますね」
「わぁ。ごめんね」
「いいえ、むしろ役得です。好きな人の髪の毛触れるのって、恋人同士みたいで」
「はわぅっ!・・・ごめん、変な声出して」
「照れてる伊斗先輩も、可愛いですよ」
「朝から集中砲火浴びせないでっ!私の許容範囲超えてる・・・」
「すいません。僕の為に早く準備してくれたのが嬉しくて」
「もう・・・聞き流そう」
朝から疲れ果ててしまった私を横目に、はる君は器用に髪を纏めていく。
お姉さんがいるから、たまに髪の毛やってあげてるんだっけ。
あっという間に、ちっちゃい三つ編みと編み込みをツインテールにまとめてくれた。
ヤバい。
女子力で負けてる・・・
「できました。行きましょう」
「こんなにちゃんとセットしたの、いつぶりだろ・・・。はる君、ありがとう」
「いいえ。あんまり時間ないですし、結構適当です。あとで直してください」
「どこをどう直せばいいのやら・・・全くわかりません。このままを維持するね!」
「それなら、お昼に直しましょうか?」
「ぁあー・・・お昼は、友達とご飯食べるから・・・」
「わかりました。なにかあってもなくても、連絡くれたら行きますからね」
今の、なにかフラグ立ってないよね?
まさかね。
それからは、昨日の模試の話とか趣味の話で盛り上がった。