なし崩されて
R15・・・未満!
明後日は模試という日の放課後。
私はいつも通りそう君の家で追い込みをかけていた。
「はい!先生」
「なに?」
「ここなんですけど・・・」
「ここはね・・・」
ここのところ、本当に色々とあったけど・・・
勉強中は前と変わらない。
教え方も相変わらず上手い。
こちらが苦手なところを理解した上で、丁寧に教えてくれる。
「そう君は先生に向いてると思う」
「残念。教えたいのは伊斗だけなんだ。伊斗以外にはこんな優しく教えないよ」
「そっか」
私のスルー能力も変わらず健在だった。
ただ勉強が終わった後に、変化があった。
「明日は家で勉強するんだっけ」
「そうだよ。自分の部屋が1番集中できる」
「明日も明後日も会えないのか」
「そうだね」
「伊斗が足りなくなりそう」
「そっか」
「ね?」
「なにが、『ね?』」
「伊斗、嫌じゃないもんね?」
「・・・」
私は諦めたように目を閉じた。
いい匂いが近付いてきて、唇に触れる柔らかい感触。
啄むように繰り返されて、やがて唇を舐められた。
いつもビックリしてしまって、少し緩んだ口に優しく差し込まれる舌が嫌じゃない。
そう、嫌じゃないのだ。
困ったことに。
ふわふわして、とろとろして、温かくて。
きっと、私は気持ちいいと思ってる。
やっと離れた口元から唾液が垂れてきて、咄嗟にティッシュで拭く。
恥ずかしいやら何やらで、私は赤い顔を隠して鞄を掴む。
「帰る」
「送ってく」
「1m離れて歩いてよ」
「分かったよ」
こんな状態で、隣なんて歩いてほしくない。
そう言ったのは前回。
前々回なんて、家の前でしようとするから、だったらそう君の家でって言ってしまった。
いや、拒否してもなし崩し的に思惑通りになってしまうから、だったらってせめてもの抵抗だったのよ。
だったら家庭教師やめればいいとか、いろいろあるけど。
大学受かるまでの辛抱だったらいいかなって。
大学行ったらもうそう君とは縁を切って、
あわよくば彼氏なんて作っちゃって・・・
「伊斗。何考えてるの?」
「え?べ、べべべ別に」
「伊斗は本当に分かりやすいなぁ。大学に行ったって、離してあげないよ」
「出たっ、エスパー!てか、1m離れてよ!」
別にイチャついてる訳じゃないんだけど、
周囲の視線が痛かった。