告白されて
「先輩、塾辞めたんですね」
「まぁ、夏期講習だけのつもりだったしね」
「伊斗先輩に絡んできてた奴らも、あの後すぐに辞めたみたいです」
「えっ?あの人たち同じ塾だったんだ・・・」
「知らなかったんですか?あいつら、前から伊斗先輩のこと狙ってましたよ。お昼に空き教室で1人でいるの知って、声掛けようとしてましたけど」
「なにそれっ!・・・全然知らなかった・・・」
「伊斗先輩、可愛いのに無自覚だから・・・」
幻聴が聞こえた気がするけど、ここはスルーする。
「だから、いつもお昼とか帰り、一緒にいてくれたの?」
「僕じゃ力不足ですけど、威嚇にはなるかなと」
「・・・本当、ありがとうね」
「それより、あの後・・・大丈夫でしたか?幼馴染さん、すごく怒ってるみたいでしたけど」
「うん、怒ってた。けど、気付いたらまたいつも通りになってたよ。大丈夫」
「・・・伊斗先輩、あの幼馴染さんと付き合ってるんですか?」
「はぁ?!まさかっ!私はもっと落ち着いてて、一緒にいて癒されるような人がタイプなの!」
「・・・へぇ。あの人がそんなの許すかな・・・」
「ん?どゆこと?」
「いいえ、こちらの話です。
とにかく、先輩が無事で良かった」
「ありがとう・・・心配かけて、ごめんね。はる君には助けられてばっかりだし、今度なにかお礼させてね」
「・・・それなら、お願い聞いてもらえます?」
「うんっ!なんでも言って!」
「一緒に登下校してください」
「え?そんな事でいいの?」
「十分ですよ」
「あ、でも、家庭教師の日はダメなんだ。それ以外の日は、一緒に登下校できるよ」
「家庭教師?あの幼馴染さん?」
「よく分かったねっ!」
「それ以外、許してくれそうにないですし・・・わかりました。今日はもう帰るだけですか?」
「うん!」
「じゃあ、一緒に帰りましょう。あ、伊斗先輩は拐かされそうになった経験あるので、手を繋ぎましょうね」
「私、一個上なんだけど・・・わかりました」
無言で笑顔の威圧がすごくて、諦めた私は大人しくはる君の差し出された手を握った。
その初めて繋いだ手が、すごくしっくりきて不思議と落ち着いた。
帰り道は趣味の話に盛り上がって、家に着いたのもあっという間だった。
「送ってもらっちゃって、ありがとう」
「いいえ。僕がお願いしたことですから」
「明日は家庭教師の日だから、また明後日かな」
「いえ、明日の朝家の前で待ってます。朝は何時くらいに家出ますか?」
「え?いやいやいや、なんかそれって・・・勘違いされちゃうよ」
「僕は構いません。幼馴染さんとの差が開きすぎているので、まだ足りないくらいです」
「ん?どゆこと?」
「伊斗先輩が好きって事です」
私はポカンって言葉通りに、口を開けてはる君を見上げた。
思考が停止した。
「ごめんなさい。あんな事あった後なのに・・・
でも、僕は隣にいても嫌がられていないようなので。言わないと、伊斗先輩は考えないようにして逃げちゃうでしょ?」
「・・・」
「あれ?伊斗先輩?せんぱーい・・・伊斗?」
「・・・」
「・・・キス、してもいいですか?」
「はぁっ!ダメっ!」
「良かった。意識ありますね。それじゃ、明日8時くらいで大丈夫ですか?」
「いや、7時30分かな・・・」
「わかりました。また明日」
「えっ。ぅ、うん」
こうしてはる君はあっさり帰ってしまった。
頭と心がごちゃごちゃな私を残して。