きみへ。
どこが好きかといえばどこと答えることができないようなくらいの子だった。
ただ、ふと目につく、食べてる時の顔や笑顔が頭から離れないで。まるで息をするように恋に落ちた。
でも、誰にでも優しくて距離感が近くて、世間一般によくいるような君には「恋人」がいた。
相手がいることがわかってした告白。結果はだれが見ても明らかだった。ただひとつあった誤算は、君が恋人に対してたくさんの不満を持っていたことだ。だから俺はそのすべてを利用したのだ。
君の悩むすべてのことを受け入れ、君が抱え込むすべての秘密を共有した。
あなたのすべてを受け入れるように、あなたも俺のすべてを受け入れていった。
少しずつ少しずつ「俺」という存在を埋め込んでいった。
俺がいつか君にとって水のような存在になりますようになんてそんな思いを込めて。
そんな時、俺に恋人ができた。聞くところによると俺があなたを好きだったころからずっと好きだったらしい。
最初はどうでもよかった。しかし月日が経つうちに俺とその恋人を重ねてしまっていたらしい。同情から生まれた親近感と虚しさは俺をむしばみ、知らないうちに黒く染めたのだ。
ああ早くこの報告をあなたにしないと、どんな反応をするのだろう。喜ぶのか悲しむのか怒るのか。そんな気持ちたちを抱え込んで会ったあなたは、自身が恋人と別れたことを告げた。
なぜこのタイミングで、なぜ俺が報告するよりも先に。
焦りと動揺と一緒に、ずっと考えていた言葉も真っ白になって。考えていた言葉も出てこなくて、ただ単純に恋人ができたというとあなたは笑って、
「そんなの、きみを好きなんだから見てたら気づくよ」
「でもまだ君を好きでいてもいいかな。取り返しのつかないくらい好きになっちゃったみたい。」
これは贖罪。俺が犯した罪の告白。
どうか、俺がそばにいないときにもあなたが幸せであることを望みます。