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13話 進化の力




━━━━━━━━━━━━━━━

 進化を開始します。

━━━━━━━━━━━━━━━




「この光……まさか、進化!?」


 遠くからセラフィーナの声が聞こえる。


 俺の体が青色の淡い光で包まれる。イモムシの体が丸まり、得体の知れない殻のような膜で覆われた。


 熱い。体が溶けていく。


 ドロドロと溶けるように体がなくなっていき、完全に液体となった上で再構築がされる。体全体が丈夫な硬膜で覆われていく。脚が形成され、鉤爪が創られて力が入る。


 イモムシからセミの幼体へと俺は進化していく。


 俺は、俺は……ッ!


 異世界まできて何を見てきた! くそったれな人生が終わってイモムシに転生して、それで俺は……ッ!


 初めて出来た友達を! 誰一人も助けられないなんてあっていいわけないだろうがッ!




━━━━━━━━━━━━━━━

 『ムルムル』から『マンネゼミ』へと進化が完了しました。

 スキル『粘着糸』が消滅しました。

 スキル『噛み千切り』が消滅しました。

 新たにスキル『硬質化』を獲得しました。

 新たにスキル『グランドディグ』を獲得しました。

 称号『■■■■■?』によりスキルギフトを贈呈されます。

 『土魔法』のLvが0から2にあがりました。

 新たにスキル『スティングエッジ』を獲得しました。

━━━━━━━━━━━━━━━





 ―――――――――――カッ!




 殻を破った。新しい、鉤爪が付いた手で。


 俺はそのままセラフィーナの前に飛びだし、鉤爪を頭上へ掲げた。




 ガチィィイイッン!




 受け止める。いや……受け止めた(・・・・・)


「キ……?」


 不思議そうな顔をしながらクイーンスパイダーは八つ目をまばらに動かした。


 『硬質化』のスキルを発動し鉤爪がより強固となる。金属音に似たような金切り音が静かに鳴り響き、振るわれたクイーンスパイダーの牙を完全に防いでいた。


「アキヒロ……?」


 ナラトの声が、掠り切れたように聞こえてきた。俺は横目で振り向き、二人に向かって頷いた。


 おう。少し待ってろ。



 今、助けてやる!



「キュイキュイ!」


 鉤爪に力を込める。ギリギリと拮抗するが、『硬質化』のスキルを何度も重ね掛けすることで鋼鉄を凌駕する硬さへと変貌する。


「キュ……イッ!」


 限界まで硬くした鉤爪で上方に弾き飛ばした。牙が陶器が割れるような音を立てて砕け、クイーンスパイダーが宙へ舞った。


 さあ、行くぜ。


 ――土の第一詠唱……ロドッ!



 ガッッッッッッ!



 突如、吹き飛ばされていたクイーンスパイダーの地面が盛り上がり、大地の槍が膨らんだ腹部を穿った。


「キシャッ!?」


 クイーンスパイダーは驚きながら身をのぞける。串刺しにされた箇所からは青い血液が溢れ出していた。


 これが俺の……土魔法! 


 嬉しさよりも初めて使った筈なのに身体によく馴染む感覚を覚えた。

 既視感だとかそんなものではなく、やっと使えたという懐かしさだった。


 鉤爪を構え戦闘態勢をとった。産まれて初めて、俺はこの世界で戦う覚悟を決めた。


 行くぜ蜘蛛野郎共。こっから反撃開始だ!


「キピッ!」

「キシャアアアアッ!!」

「シャシャ!」


 背面から残った三体のジャイアントスパイダーが俺目掛けて飛びかかる。


 丁度いい、残りの雑魚も処理してやるぜ!


「キュイキュイ!」


 『硬質化』、そして――スティングエッジ!


 硬質化させた鉤爪を勢いよく後ろへ振り切った。先頭の大蜘蛛の顔面が爆ぜ、木々を倒しながら仰向けに転がっていく。


 残りの二体も怯まずに噛み付こうとしてきたので『ロド』を使って土壁を作り出す。土壁によって阻まれた牙は俺に届かず、その場で停止した。


 まだまだ行くぜ? 

 『ロド』を連打して土壁を更に押し出してぶつける攻撃……その名も、土石杭!


「キシッ!?」

「シャッ!?」


 それはまるで、パイルバンカーの様。


 まさか牙を突き立てていた壁面から攻撃を喰らうなど予想していなかっただろう。


 ひび割れが起こったかと思えば中から複数の土の巨槍が飛び出した。二体のジャイアントスパイダーをまとめて串刺し、甲高い断末魔をあげなげら木の幹に磔にされる。


 腹部に刺さった土槍を抜こうともがくが無駄だ。既に『ロド』を複数回詠唱し終わっている。


 哀れな蜘蛛共の末路は――細分化された土の槍によって体内から棘だらけにされるのだから。




━━━━━━━━━━━━━━━

 ジャイアントスパイダーを討伐しました。

 経験値を104獲得しました。

 ジャイアントスパイダーを討伐しました。

 経験値を104獲得しました。

 Lvが2にあがりました。

━━━━━━━━━━━━━━━



 『世界の声(アナウンス)』による討伐メッセージを確認した後、俺は横に目を向ける。


 そこには顔面を鉤爪で破壊され、今にも倒れそうな残りのジャイアントスパイダーがよろよろと立ちあがっていた。


 そいつは生意気にも俺に牙にかけようと口を開いていた。砕けた目が朧で焦点があっていないが、大きな身体故に飛びかかれば当たると考えていたのだろう。


「キシャアァァァッッ!!」


 声を張り裂けながら仕掛けてくる。対する俺は鉤爪を引いて、正面に突き出すように力を込めた。


 俺たちを襲った罪は重いぜ。――スティングエッジ!




━━━━━━━━━━━━━━━

 ジャイアントスパイダーを討伐しました。

 経験値を104獲得しました。

━━━━━━━━━━━━━━━




 圧倒的だった。


 鉤爪の先端が蜘蛛の目に触れると同時に粉々に吹き飛んだ。頭部から腹部まで閃光が貫き、完全に息の根を止めたのだった。

 爆風が森を駆け巡り、セラフィーナが顔を腕で抑えている。あまりの衝撃で木々が揺れ、轟轟と森がざわめいた。


「凄い……こんなことが……」


 白煙を鉤爪から噴き上げている俺を見てセラフィーナが呟いた。


 正直俺も驚いている。進化しただけでここまで強くなれるとは一欠片も思っていなかった。


 だがそれでいい。好都合だ。


 『磁界の感覚(トレ・クオリア)』に反応があった。どうやら俺の土槍は『惨爪』のスキルで破壊して出てきたようだ。


 子分を殺されたことで腸が煮えくり返ったのか、はたまたお腹にどデカい穴を開けられたことで怒ったのか。

 クイーンスパイダーは苦々しく俺の姿を八つの目で見つめると『惨爪』のスキルで勢いよく攻撃する。


 木の幹さえも簡単に切り裂く『惨爪』のスキルは確かに脅威だ。


 だがな、クイーンスパイダー。俺は進化した。イモムシだった頃の俺とはひと味もふた味も違うんだよ!


 ――スティングエッジ!


 俺の鉤爪が煌めく。

 スキルの影響で俺の鉤爪は一回り大きくなり、クイーンスパイダーの爪を砕いて勢いを保ったまま頭部へと突き刺さった。


 木々を揺らすほどの快音。


 顔面がひび割れ青色の血液が飛び散り、クイーンスパイダーは顔を歪めながら吹き飛んだ。


「クイーンスパイダーを押し飛ばした……!?」


 セラフィーナが驚きの声をあげる。


 ……! なんてパワーだ。


 改めて感じる。イモムシだった頃と違って力が漲ってくる。


 これが、セミの幼虫となった俺の進化。


 そして、クイーンスパイダー。お前を捻り潰す俺の姿だ!


「キシャアァァアアァァァ!!!」


 『スティングエッジ』によって吹き飛ばされたクイーンスパイダーは最大の怒りを露わにし、奥地まで震わすほどの咆哮をあげた。


 口から毒液を滴らせながら鎌足を振るった。大木がいとも容易く切断され、蜘蛛糸を絡めながら投げつけてくる!


 野郎ッ、めちゃくちゃだ! いくら『硬質化』があるとはいえ当たればひとたまりもない。


 それなら――『グランドディグ』!


 刹那、俺の頭の上を大木がすり抜けた。

 身をかがめたのではない、潜ったのだ。


 そのまま高速で地中の中を移動して一気に距離を詰める。『磁界の感覚』で視界が確保できていなくても充分、既にクイーンスパイダーの位置は割れている!


 ――スティングエッジ!


 土の中から飛び出してきた俺はクイーンスパイダーと交差する。爪と鉤爪がぶつかり合い火花を散した。

 しかし空中では分が悪い。クイーンスパイダーの膂力(りょりょく)によって俺は力負けし、木々をへし折りながら地面へと叩き付けられた。


 ちぃっ、強いな! 『硬質化』がなかったら今頃俺はぺしゃんこだ!


 近接戦は不利だが俺は念願の魔法を覚えたんだよ! 出血大サービスだ、喰らいやがれ!


 ―――ロドッ!


 今度は対角線の地面が盛り上がり鋭利な土槍がクイーンスパイダーの関節を抉った。

 ボキャリ、と忌避感を抱く音を出しながらクイーンスパイダーの脚が根元から千切れ飛び、茂みの中へと消えていった。


「キキキキィィィ!?!?」


 はっはー! お返しだ馬鹿め! ざまあみやがれ!


 あまりの痛みに半狂乱となったクイーンスパイダーは出鱈目に暴れ回り、鎌足をそこらじゅうに打ち付けた。土塊が飛び散り、木々がズタズタに裂けていく。


 流石の魔物であろうとも、脚がなくなれば痛みは感じるだろ!


「ッ! 今よアキヒロ!」


 その時、暴れ回るクイーンスパイダーの横から立ち直ったフィーナが『シエラ』を飛ばす。


 俺が『スティングエッジ』で傷をつけた顔面へと吸い込まれるように直撃し、盛大に爆ぜる。


「キィ、キイィアアッ!!」


 ナイスだセラフィーナ!


 クイーンスパイダーはのけぞり、痛みに怯んでいる。トドメを刺すなら今しかない!


 行くぜ――ロド!


 幹から飛び降り、すぐ下の地面を土魔法を使って盛り上がらせる。

 そのまま飛び出す勢いを利用して、俺は大砲が弾丸を撃ち出すが如く自分を射出した。


 ――スティングエッジ!


 鉤爪が光り輝く。


 フィーナの『シエラ』によって俺から視界が外れる。気配に気付こうにも、直弾跡から噴き出している白煙に紛れ、クイーンスパイダーは俺の姿を捉えられなかった。


 終わりだ、デカブツ!



「キュイ!」



 ギインッッッッッ!!!



 剣爪一閃。金属音を鳴らして俺の鉤爪は首元を切り裂き、ぐるんと生首が回転して宙を舞った。


 射出した勢いを殺しながら俺は地面を滑走し立ち止まる。そして鉤爪に付いた血を三日月状に払うと同時に、クイーンスパイダーの首元から青色の血液が噴水の如く溢れ出した。


 凄まじい飛沫音。クイーンスパイダーの巨体はぐらりと揺れるとそのまま力を失い倒れ伏した。




━━━━━━━━━━━━━━━

 クイーンスパイダーを討伐しました。

 経験値を758入手しました。

 Lvが4に上がりました。

━━━━━━━━━━━━━━━




 『世界の声』による確認がとれ、俺は内心で一息付く。


 勝った、勝ったんだ。


 イモムシの面影は何一つない、自分の血が付いた鉤爪を見て俺は視線を上にあげた。


 ……終わった。良かった。


 手元に気色悪い感触は残っているが……俺は二人を守れたんだ。

 後は――ナラトの怪我を処置にしてヘイラブルで治療して貰わなければいけない。


現在のアキヒロのステータスです。


━━━━━━━━━━━━━━━

 種族名:マンネンゼミ (脅威度E)

 個体名:アキヒロ

 Lv4/20


 ・所持スキル

 『土魔法Lv2』『硬質化Lv1』

 『スティングエッジLv1』

 『グランドディグLv1』

 『鑑定Lv-』『磁界の感覚Lv-』

 『世界の声Lv-』『共通言語理解Lv-』

 『ステータス共有Lv-』


 ・称号

 『大いなる血統』

  『特殊個体』

 『■■■■■?』

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