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復讐の是非

よろしくお願いします。

「どういうことですか?」


 離れた場所にいるバルドウィン様に向かって叫ぶ。後退し続けたバルドウィン様、フィンさん、アルバン様の三人は、私たちから遠ざかっていったようだ。これもバルドウィン様の計算だったのかもしれない。


 それよりも私は、バルドウィン様が何に気づいたのか知りたかった。


 バルドウィン様は、どこか気遣うような視線をフィンさんに向ける。


「フィン。君の目的は、伯父上への復讐なんだろう?」

 

 これには、フィンさんどころかアルバン様も無言を貫いていた。それが私には解せなかった。


 フィンさんが下手に答えてボロを出したくないからと無言なのはわかる。だけど、アルバン様なら怒りそうなものだ。自分がここまでお膳立てしたから当主の座が近づいたと、思うのではないのだろうか。


 バルドウィン様はまた気づいたようで一人で頷く。


「……なるほど。伯父上も承知の上でフィンをそばに置いたと。余程、寝首をかかれない自信があるらしい。つまりは、伯父上はフィンの弱みを握っているのか?」


 予想だにしないバルドウィン様の分析だったけど、私は納得した。甥であるバルドウィン様の弱みを握ろうと、私やクリスティンに危害を加えようとした人だ。実の息子にも同じことをしていてもおかしくない。


 案の定、フィンさんの顔色が変わった。だけどこの場合、フィンさんの弱みと言ったら……。


「孤児院の、子どもたち……。フィンさん、そうなんですね?」


 私の問いに、フィンさんは逡巡した後、諦めたように俯き加減で頷いた。それを見てアルバン様が激昂する。


「フィン! そんなことを言っていいのか⁈」

「……バルドウィン様にはもう全てわかっているようですよ。もうあなたに手出しはさせない。バルドウィン様なら子どもたちを守ってくださるでしょう。どちらが信頼に値するか、よくわかりました。バルドウィン様。これまでの非礼をお詫びいたします。本当に申し訳ありませんでした……。ですが、一つだけ。孤児院や子どもたちには罪はありません。お許し願えないでしょうか」

「それはもちろんだ。だが……」

「私を許して欲しいとは言えません。孤児院や子どもたちさえ守っていただけるなら、もう充分です」


 ……ちょっと待って。この言い方っておかしくない?

 まるで遺言のような……。


 私の頭の中で、様々な言葉がパズルのピースのようにはまっていく。


 当主になってやりたいこと。孤児院や子どもたちを守ること。アルバン様への復讐、そして──遺言のような先程の言葉。


 ──間違いない。フィンさんはアルバン様と一緒に死ぬつもりだ。


 気づいた私は堪らず三人の元へ駆け出した。隣にいたクリスティンが私を引き止めようと後をついて来ようとして、私は鋭い声で制止した。


「クリスティン、こちらに来ては駄目!」


 バルドウィン様にもフィンさんの考えがわかっているようで、今度はバルドウィン様が「メラニー、来るな!」と叫ぶ。アルバン様は何が何やらわからないようで、フィンさんのそばから離れない。


 本当にこの人、当主候補だったの?


 アルバン様は自分を基準に考えるから他人の気持ちを推し量れない。だからフィンさんはずっと鬱屈した怒りを抱えてきたのだろう。


 母親を捨てただけでなく、血が繋がっていなくても本当の家族のように共に過ごしてきた人たちを人質に取られて。


 復讐したくても今は立場上アルバン様の方が上だ。だから自分が当主になれば復讐もできるし孤児院や子どもたちも守れる、そう考えたのかもしれない。


 だけどそれなら、どうして今この瞬間に全てを明かすようなことをしたのかわからない。三人の元へ到着したのはいいけれど、走ったせいで息が苦しい。弾む息を整えようと深呼吸を繰り返してから私はフィンさんに向き直った。


「……っ、フィンさん! なんで今なんです? バルドウィン様に勝って当主になればあなたの目的は果たせたのに」


 フィンさんはくしゃっと顔を歪め泣きそうな顔で笑う。


「……当主になれば、確かに孤児院は守れるかもしれません。だが、それ以上に私の中でこの男を許せない気持ちが膨らんでいったんです。母はこの人への怨嗟の言葉を吐きながら亡くなりました。そして、そんな母と同じくらい大切な人たちも見下して、私の弱味だと言って排除しようとしました。

 人の価値って何ですか? 孤児には生きる権利がないとでも言うのですか? いや、違う。生きる権利がないのはこの男の方だ」


 ギリッとフィンさんは歯軋りをする。目はアルバン様への怒りに満ちている。これまで感情をあまり出さなかったのは、一度憎悪が噴き出すと際限が無くなりそうだったから、自分を抑えていたのかもしれない。そのくらいフィンさんの怒りは激しいものだった。


 だからといって、復讐を容認するわけにはいかない。もしフィンさんがアルバン様を殺した場合、フィンさんも死刑になるだろう。だけど、彼には思い思われる相手がいるのだ。だから私は──。


「……アルバン様を攻撃しては駄目です」


 アルバン様を庇うように、フィンさんの前に立ちはだかった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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