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不可解なフィン

よろしくお願いします。

 アルバン様が朗々とした声で説明する。


「これは一対一で、他の者の手出し無用。木剣と魔法を使って闘うこと。ただし、命に関わるほどの怪我を負わせることは、双方に許さない。降参するか、立ち上がれなくなるまで、というルールでどうだ?」

「ああ、構わない」

「ええ、私もそれで結構です」


 いやいや、おかしいでしょう! 何で誰も突っ込まないのかがわからない。ルールもアルバン様の都合のいいように動いている。


 まず手助けができないようにしているし、私闘で命を奪うようなことがあれば国に罰せられることがわかっているから、命を奪うことを禁じている。この場合得をするのは勝ち目があるフィンさんだけだ。


 とことんまで腐っているのね、アルバン様。水をぶっかけて頭を冷やせと言ってやりたい。


 ああ、でもこの場合、まだ良識のありそうなフィンさんが相手でよかったのかもしれない。


 そして二人は木剣を構えて向かい合い──アルバン様の声が響いた。


「始め!」


 合図があっても、どちらも動かない。私はてっきりフィンさんが合図とともに炎を出すのではないかと思っていたのだけど。


 フィンさんは魔法を使うから遠方からの攻撃に有利だ。対するバルドウィン様は木剣しか使えないから接近戦に有利。


 それにしてもフィンさんの考えが読めない。この勝負は完全に出来レースだ。フィンさんが勝つように仕組まれている。だけど、一向にフィンさんは仕掛ける様子を見せない。焦れたアルバン様が叫ぶ。


「フィン! 早く攻撃しないか!」

「伯父上。黙っていてください。あなたが手出しは無用と言ったのでしょう」


 バルドウィン様は木剣を構えたまま、アルバン様に目をくれることなく、フィンさんを見据えている。そしてすうっと息を吸い込んだかと思うと、フィンさんに向かって走り出した。


 フィンさんは木剣を構え直すと、腰を低くする。バルドウィン様に攻撃させる気だ。そしてバルドウィン様は正面から振りかぶると、勢いのまま振り下ろす。それをフィンさんは身を翻して避けた。


 ──そういえば、フィンさんは剣を使えるの?


 バルドウィン様は生粋の貴族だ。護身程度に習っていてもおかしくはない。いざという時、最後に自分の身を守れるのは自分しかいないのだから。


 だけど、フィンさんがもし剣を使えないとしたら、何故魔法を使わないの? その方が有利なのに。


 フィンさんに魔法を使う気配を感じないせいか、バルドウィン様が続けて斬撃を繰り出す。その度にフィンさんは避けながら後ろへ退がる。


 とうとう焦れたアルバン様が口出しをする。


「フィン! 何を考えているんだ! もうそこに当主の座が見えているというのに! さっさと決着をつけろ!」


 フィンさんは暗い笑みを浮かべる。


「……ええ。そうですね。この時が来るのを待っていました」

「フィン?」


 フィンさんの言葉にバルドウィン様の剣筋が乱れる。そしてフィンさんは木剣を左手で持つと、右手の手のひらを上に向けた。すると炎の球が手のひらの上に生まれ、みるみるうちに大きくなった。大きさは私の片手で収まるくらいだろうか。


「行け!」


 それを勢いよくバルドウィン様に向けて投げた──ように見えた。だけど炎はバルドウィン様をすり抜けて、一直線上にいたアルバン様へと向かっていく。


 アルバン様はそれを難なく避けて、唸る。


「……どういうつもりだ、フィン」


 フィンさんは何でもないように笑う。


「あなたがちょうどバルドウィン様の向こうにいるのが悪いんでしょう? わざとではないのだからそんなに目くじらを立てないでください」


 だけど私は疑問だった。フィンさんの動きはバルドウィン様と直線上にアルバン様が来るように誘導しているように見えた。本当にわざとじゃないの?


 怪訝にバルドウィン様を見ると、バルドウィン様は何かに気づいたように目をみはっていた。


 そして、ため息をつくと、振り上げていた木剣を降ろした。


「……フィン。君の狙いがわかった。こんな決闘に意味はない。私は君の片棒を担ぐつもりはないよ」

読んでいただき、ありがとうございました。

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