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話し合い

よろしくお願いします。

 姉妹で入浴した後同じベッドに入ると、クリスティンはシーツを肩まで上げて、嬉しそうに話しかけてくる。


「お姉様とこうして寝るの、久しぶり。昔は一緒に寝てたのにね」

「昔って、あなたまだ十二歳でしょう。まだまだ子どもよ。もっと子どもらしくてもいいと思うわよ?」


 ベッドヘッドにもたれて、クリスティンのサラサラな金髪を撫でる。本当に懐かしい。一人では寝たくないと駄々をこねるこの子を寝かしつけるのには苦労した。


 すると、クリスティンは頬を膨らませて顔を背ける。


「子どもなんて嫌です。こうしてお姉様が大変な思いをしているのに、私は何も知らずにのうのうと暮らしてたんです。私はお姉様に守られてばかりで、まだ恩を返せてないのに」

「恩なんて。私はクリスティンが大切だから守りたかっただけなのよ。そう思ってくれるのは嬉しいけど、私は恩返しなんて望んでないの。そうねえ……。どうしても恩返しをしたいと思うなら、幸せになって」

「それのどこが恩返しなんですか? 結局私が得をするだけじゃないですか」

「馬鹿ねえ。クリスティンが幸せになってくれることが私の望みなんだから、叶えてくれたら私は嬉しいのよ」


 愛は見返りを求めることじゃない、と両親も言っていた。あなたたちには裏切られてばかりよ、と母は嘆きながらも、その成長を喜んでくれた。その気持ちが今ならわかる。


 思い通りにならなくても、家族には変わらないのだ。クリスティンがこうして私の意に沿わないことをしてもやっぱり可愛いものは可愛い。


 ただ、やっぱりクリスティンには、大切な存在であるバルドウィン様を認めてもらいたい。だけど結局、この日は平行線のまま、クリスティンは眠ってしまった。


 ◇


 そして翌日。

 本当ならクリスティンとバルドウィン様と三人で過ごして打ち解けてもらいたいところだ。だけど、今日はアルバン様とフィンさんが来ることが決まっている。私は朝からクリスティンに口を酸っぱくして部屋にいるように言っていた。もし私たちと敵対する人たちが来るとわかれば、クリスティンが無茶をしないとも限らない。そんな一抹の不安を抱えながらもその時を迎えた。


 応接室でアルバン様、フィンさんと対峙する。相変わらず退廃的な雰囲気を醸し出しているアルバン様と、一陣の風を思わせる爽やかなフィンさんとでは正反対だ。だけど、並んでいると、二人の造作が良く似ていることに気づく。やっぱり親子なのだ。


 まず口火を切ったのはバルドウィン様だった。


「わざわざ来てもらって申し訳ない。私としては、当主を譲るにしても、信頼に値する人物に渡したいものでね」


 アルバン様は馬鹿にするように、バルドウィン様を睥睨した。


「譲る、ねえ……。奪い取られるの間違いじゃないのか? 今のお前がその座に相応しいとは思わないんだが」

「魔法のことですよね。それは私の不徳の致すところです。だが、それと領地を守ることはまた別だと思いませんか?」


 アルバン様の言葉に、バルドウィン様は顔色一つ変えることなく答える。むしろ、聞いている私の方がハラハラして顔色が変わっていることだろう。


 そしてフィンさん。無表情で黙って二人の会話を聞いているのが不気味といえば不気味だ。


 そして、アルバン様が更に追撃する。


「魔力の強さは爵位に比例する。その力を行使して国の礎になる。それが私たち貴族だと思ったんだが、私の解釈違いかな? ああ、それに、領地を守ると言うが、お前にはそれができているとでも? 更に言えば、お前の人望についても当主不適格との声が上がっているが、まさか知らないわけはないだろう?」


 バルドウィン様は真剣な表情で頷く。


「いえ、伯父上の仰る通りです。私には強い魔力があってもそれを行使することが今現在できていない。人望についても、一族の中で争いを生んでしまった私に人望があるとは言えません」


 私は思わずバルドウィン様を凝視する。相手の言い分を認めてしまってどうするのか。案の定、アルバン様は我が意を得たりといった感じで、ニヤリと笑った。


「じゃあ……」

「ですが、領地に関してはお言葉を返すようですが、フィンにできるとは思えません。彼は領地経営に関しては全くの素人です。いきなり領地を任せて、すんなりいくとでもお思いですか?」


 アルバン様の言葉を遮って、バルドウィン様は告げる。バルドウィン様はそれが一番言いたかったのかもしれない。私たちは国のために働く立場でもあり、そこに生きる人たちのためにも働く立場でもある。それを忘れてはいけない。


「それなら問題ない。私がいるからな。私がフィンについて共に領地を守っていけばいいだけの話だ」


 ……嘘くさい。アルバン様が言うと、どうしてこんなに空々しく聞こえるのか。領地経営はフィンさんに任せて、自分は美味しいところだけ持って行こうとしているような……。


 バルドウィン様はここで切り込んでいった。


「伯父上はフィンを傀儡にして、自分が実権を握るつもりですか?」

読んでいただき、ありがとうございました。

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