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やり方を変えてもう一度

今回は会話が多いです。すみません。

会話と地の文のバランスって難しい……。

「どうしたんだ? しょんぼりして」


 先に帰っていたバルドウィン様に玄関ホールで見つかるなり、そう言われた。


 落ち込まないようにしていたのに、そんな顔をしているのだろうか。ついペタペタと顔を触ってみる。するとバルドウィン様は苦笑する。


「あからさまではないから気づきにくいが、一緒にいる時間が増えたおかげでわかるようになったのかもしれないな」

「バルドウィン様、すごいです。私なんてフィンさんのことがわからなくて怒らせてしまって……きっともう心を開いてはくれません……」


 弱音を吐くつもりじゃなかったのに、バルドウィン様の優しさに甘えそうになる。頭を振って弱音を吹き飛ばす。


「ああ、駄目駄目! バルドウィン様、私を甘やかしては駄目です! 駄目な子一直線になりそうです!」

「いや、別に甘やかしてるわけじゃない。それに、これを言ったら怒られそうだから黙っていたが、正攻法で話をしようと言っても、フィンは頷かないだろうとは思っていたよ」

「何故ですか?」

「……貴族である伯父上に振り回されてきた彼が、ミュラーの血縁にいい印象を持っているわけがないだろう。それでもクララ様に好意的だったのは、彼女自身が孤児院の救済に尽力したからだ。信用というのは一朝一夕に積み上げられるものではないからね。特に君は彼の敵である私の妻なのだから、並大抵のことでは信用を得られるはずがない。それに、私たちが彼を伯父上の息子という先入観で見ているように、彼だって私たちを先入観込みで見ていると思う。母親を苦労の末に死なせた男と同じ貴族だと。それにあの伯父上を基準に考えるなら、貴族というものはろくでもない人間の集まりにも思えるんじゃないか」


 実の伯父を評するにはあまりにも辛辣だ。だけど、私もバルドウィン様の言葉には頷いてしまう。


「そうですね……。私が甘かったと思います。もう何度か会っているし、その時のフィンさんがあからさまに私を拒絶しなかったから、少しは私という個人を見てくれていると錯覚しちゃったんです。私も肩書きを背負っていること、ついつい忘れて接し方を間違えてしまいました……」


 私は善人でも悪人でもないつもりだ。だけど、私にフィンさんを攻撃しようという意図はなくても、相手がどう感じるかなんて、その人にしかわからない。

 項垂れる私に、バルドウィン様は頷く。


「そう。肩書きというのは厄介だ。肩書きでその人の人となりを判断する材料にしがちだからね。時間をかけてわかってもらう努力をするしかないだろう」

「……だけど、そんなことをしていたらバルドウィン様が」

「心配してくれてありがとう。だが、私は大丈夫だ。君が頑張ってくれているのに、簡単に諦めたりはしないよ。君が今回一対一で話したことは無駄じゃない。つまり、フィンは私たちにも不信感を抱いているわけだ。そんな私たちが何かを言ったところでフィンには響かない。だったら、フィンだけでなく伯父上を巻き込めばいい。二人と話をするんだ」


 え? アルバン様と?

 あの方ものらりくらりとかわしそうな気がするけど……。


 私は拳を顎に当てて思案に(ふけ)る。バルドウィン様はそんな私の疑問を感じ取ったのか、説明を加える。


「貴族に不信感を抱くほどに、フィンは伯父上の人となりに疑問を抱いている。だから伯父上がその場で言うことに反発もするかもしれない。そこから二人の協力関係に亀裂を入れることができるんじゃないか? そうすればフィンの本音を引き出しやすいような気がするが」

「確かに……。疑いを持っていたら、アルバン様が軽蔑するようなことを言ったら言葉通りに受け取って腹が立つでしょうし、まともなことを言っても嘘をつくなと、フィンさんは反発するかもしれませんね。結局は自分が信じたい方に動くというわけですね」


 バルドウィン様の言うことはもっともだ。フィンさんのアルバン様への先入観を利用すればいいということだろう。


「そういうことだな。ということで、すでに伯父上に手紙を送っておいた。フィンも交えて話し合おうと。伯父上からは三日後にこちらへ来るという返事をもらったよ。君も……同席するかい?」


 フィンさんとのことで落ち込んでると思っているのか、バルドウィン様は気遣わしげに私に尋ねる。


「もちろんです!」


 一度失敗したからといって諦めては駄目だ。それに、あのアルバン様のこと。きっとバルドウィン様を馬鹿にするだろう。バルドウィン様は聞き流すかもしれないけれど、私は嫌だ。もう慣れたなんて寂しそうに笑うバルドウィン様は見たくない。


 心の痛みに慣れてはいけない。それは慣れじゃなくて麻痺しているだけかもしれないのだから。そうして深く刻まれた傷はいつのまにか取り返しがつかないほど深くなっていることもあるかもしれない。私はそれが怖い。


「……あなたを一人で戦わせたりなんて、しませんから」


 バルドウィン様は破顔する。


「ああ。すごく心強いよ」


 予定は決まった。あとはその日に備えるだけだと二人で顔を見合わせた。

読んでいただき、ありがとうございました。

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