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フィンの真意はどこに?

よろしくお願いします。

 まさかバルドウィン様の想像が当たるなんて……。だけど当の本人は落ち着いたものだ。アルバン様が手紙で宣戦布告をしてきた後も、いつも通りに見えた。

 朝食の席でバルドウィン様は淡々と話す。


「あの伯父上が何もしないとは思っていなかったから驚きはしないよ。ただ、局外者を、ましてや認知もしていなかった血の繋がった息子を利用するなんて下衆(げす)なやり方をするとは思いたくなかったが」


 ……いえ、訂正するわ。これは怒っている。フィンさんではなく、捨て置いていたフィンさんを利用しようとするアルバン様に。


 だけど、平民であるフィンさんをアルバン様が当主候補にさせた理由って、()()しか思いつかないのだけど。


「……バルドウィン様。例えフィンさんがアルバン様の隠し子だとしても、それだけでアルバン様が認知はしませんよね? ひょっとしてフィンさんも魔法が使える、というか、当主に相応しいほどの魔力の持ち主ってことですか?」

「おそらくそうだろう。私もこれで謎が解けたよ。魔法の暴発は彼が干渉したからかもしれない。だが、自分を傷つけてまでそんなことをする必要はあったのか……?」

「そうですよね……。なんでしょう、これまでのことってフィンさんから直接聞いたことじゃなくて、あくまでもバルドウィン様の想像の範疇(はんちゅう)で起きたことじゃないですか。わからないなら直接ご本人に聞きませんか?」

「いや、だが……」


 バルドウィン様は渋る。それももっともだ。相手は好敵手(ライバル)。そんな相手が全てを答えてくれるとは思えない。前はフィンさんの正体を知らなかったから私たちはそれに関する質問をしなかった、いえ、できなかった。だからこそ彼は全てに答えてくれたのだと私も思う。


 だけど、私はアルバン様とフィンさんが一枚岩だとは思えなかった。


 それはバルドウィン様が言った通り、一度は見捨てたくせに利用価値があると見做(みな)すと手のひらを返したアルバン様に、フィンさんだって複雑な感情があるはずだと思ったからだ。


 アルバン様の思い通りにさせたくないのもあるけれど、何より、フィンさんがどんな気持ちでアルバン様に従っているのか、それが気になって仕方がなかった。どうしても悪い人に思えなかったから。


 立場上、疑わなければいけないのはわかっている。その判断の甘さが命取りになるかもしれないことも。だからバルドウィン様のように、悪い予想をつけておいて不測の事態に備えるのが正しい。それなら実際に起きた時に被害を最小限に抑えることができる。


 だけど──。


「……君は君のやりたいようにすればいい」


 バルドウィン様は不意にそう言った。あれ? もしかして私、全部口に出していた?


 するとバルドウィン様が苦笑する。


「顔に全部出ているよ。彼を疑いたくないんだろう? それが何だか妬けるが」

「え? 妬ける?」


 思いがけない言葉を聞いて、私は何度も目を瞬かせた。


「だってそうだろう? ずっとベタ褒めじゃないか。いい人だ、もっと話したいって。それに、今日は朝からずっと彼の話題だ。面白くないと思ってもおかしくないと思うが?」

「いえ……。だって敵を知らないと対策ができないじゃないですか。それに、私の気持ちはバルドウィン様もわかっているはず……」

「わかっていてもどうにもならないのが人の心だろう。それに、この場合の君の敵というのは、伯父上であってフィンではないと思うが、どうだろう?」


 ……バルドウィン様にはお見通しなのね。いたずらっぽく笑うバルドウィン様に、何だか試されたような気がして悔しい。


「そうです。フィンさんにはフィンさんで何か事情があるんじゃないかと思うんです。アルバン様とは違う考えを持っていて、今のところ利害が一致しているから従っているとか。あ、だからといってフィンさんが好きとかそういうことではないですよ? 私がフィンさんの立場だったらって考えたら、感情的にアルバン様を許せないと思うからです」

「ああ、私も許せないだろうとは思うよ。だが、人というのは立場によって気持ちも変わるものだ。許せないという気持ち以上に、権力や金銭に目が眩んだら? 私はこれまでにそういう人も見てきた。必ずしもこうなる、という先入観は捨てた方がいいとは思う。ただし、これは私自身の考えだ。君は違うだろう? だから、君は君の思う通りにして欲しい。私は考えを押し付けたくはないし、感情は強制するものではないから」

「バルドウィン様……。はい。それなら私は私のやり方でアルバン様を止めてみせます」


 バルドウィン様に宣言して、ぐっと拳を握る。こうした問題が長引けば長引くほど、バルドウィン様に解決能力がないとみなされ、当主不適格と判断されて、いつその座を引きずり落とされるかわからないのだ。頑張らないと。


「……フィンに統治能力があればその座を譲ってもいいと一度は思ったが、背後に伯父上がいると考えると、私も、はいそうですかと素直に渡す気にはなれない。いろいろ苦労をかけて申し訳ないが……」

「いいえ。私も同じ気持ちです。……それにいろいろな問題が解決しないと、本当の夫婦に……なれませんからね」


 ですよね、と不安になりつつバルドウィン様を上目遣いに見ると、「待たせてすまない」と苦笑されてしまった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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