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予想外の再会

よろしくお願いします。

 ユーディット様がいなくなっただけで、屋敷は火が消えたように静かになった。食堂の空席、客室から運び出される荷物。ユーディット様がここにいた痕跡が少しずつ無くなっていくことが嫌だった。ユーディット様より私の方がわがままかもしれない。


 ただ、その分をバルドウィン様が穴埋めしようと、私のことを気にかけてくれていた。だからその寂しさにも耐えられた。


 だけど、ここにきて私には気がかりなことがあった。


 バルドウィン様の魔法が一向に使えるようにならないのだ。フィッシャー男爵家、ツェーザル様の問題と片付いたのに、使えるようになる兆しさえ見つけられない。そのことを一番気に病んでいるのはバルドウィン様本人で。


 以前と二人の関係が変わったおかげか、バルドウィン様は少しずつ自分の気持ちを吐露してくれるようになった。


 バルドウィン様曰く、日に日に力の出し方がわからなくなっているそうだ。多分意識せずにできていたことが意識することで、変に力が入って発揮できないということなのだろう。攻撃したくないという精神的な抑圧と、反対に使えるようにならなければという焦燥もよくないのかもしれない。


 どうすればバルドウィン様が自信を取り戻せるのだろう。問題は解決しつつあるけれど、悩みは尽きないのだった。そして、そんな時にまた予想外の出来事も起こるのだ──。


 ◇


 朝一でバルドウィン様に今日は来客があると言われ、そうなんですね、と返していた。ここのところ来客続きでもう慣れっこだ。だから、誰が来るのかも聞かなかった。顔見知りのどなたかだと勝手に思い込んでいたのだ。


 だけど今、実際にその客人に会って驚いたというものではなかった。どうしてこの人が、と困惑を隠せない。


「またお会いしましたね、ミュラー夫人」


 爽やかな笑顔を浮かべた好青年。彼はクララ様を迎えに行った孤児院にいた男性だ。バルドウィン様は、困惑する私と、いたずらっぽく笑う男性とを交互に見やって首を傾げる。


「なんだ。二人とも知り合いだったのか?」

「いえ。ほとんど初対面のようなものです。以前クララ様を迎えに孤児院へ行った時に対応してくださったのがこの方だったのですが……。バルドウィン様こそお知り合いだったのですか?」


 私の問いに、バルドウィン様は気まずそうに視線を逸らす。


「ああ、まあ。私が巻き込んで怪我をさせたのが、彼なんだ……。その後も経過を知りたくて領地の方から連絡をもらっていたんだが、今は王都に来ていると聞いたので、いつでも立ち寄って欲しいと連絡を入れたら、こうして来てくれたんだ」

「そうなんですね」


 バルドウィン様の話を聞きながら、何か腑に落ちなかった。


 バルドウィン様が彼と知り合ったのはミュラーの領地で、魔法が暴発した時。私と知り合ったのは王都の孤児院。そんな偶然が重なるものだろうか。


 彼に感じた既視感もあって、何となく気持ちがざわざわして落ち着かない。気のせいだといいけれど……。


 怪訝に思い、ちらりと男性を見上げると、男性は目を細めて笑う。


「近い内にお会いしましょう、とあの時言ったでしょう?」

「え、あの、申し訳ないのですが、あの時は急いでいて聞き取れなくて……」

「あなたもこれが偶然とは思えないのではありませんか?」


 彼は挑むような真っ直ぐの視線を私に向けた。一体何が望みなのか、と私は警戒心から顔が強張る。すると彼は顔を緩ませた。


「あの孤児院はツェーザル様の祖父が援助をしてくださっているのですよ。クララ様もその縁で孤児院に慰問に来てくださっていた。つまりミュラー家とは繋がりがあるのです。全ては偶然ではなく、必然なのですよ」


 なるほど、と思いかけたところで、一番気になっていたことは解明されていないことに気づいた。


「ですが、あなたとあの孤児院の繋がりは? それに何故、王都と領地を行き来しているのですか?」


 そう、そこだ。ミュラーの繋がりはわかっても男性の正体は謎なまま。それにバルドウィン様のように領地を管理しているなら王都と領地を行き来していてもおかしくないけれど、彼は領地の住民ではないのだろうか。どうでもいいことかもしれないけれど、その彼が行き来する理由が気になった。


「二人とも。話が弾んでいるようだが、一旦場所を変えないか? ここでは誰に聞かれるか……」


 バルドウィン様に言われてはっと気が付いた。ここはまだ玄関ホールだ。思いがけない来客に、つい話し込んでしまった。


 早く答えを知りたいという思いに急かされながら、私たちは応接室へと向かった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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