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クララはどこへ?

よろしくお願いします。

 ツェーザル様は逆らうでもなく黙って頷く。それほどまでにクララ様を心配しているのだろう。


 私も前回クララ様が来たときのことを思い出しながらツェーザル様に尋ねる。


「ご実家は考えられませんか? クララ様にはご友人が少ないと仰ってましたし」

「いや、今の状態だったら、実家に帰ったとしても追い出されるような気がする。里帰りではなく、家出みたいなものだからな。ミュラーに睨まれるのはあの親父は嫌がるだろう」

「ですが、家族では?」


 そう言いながらも、ツェーザル様の言葉がわかるような気がした。ユーディット様のお母様もそうだった。子どもは親の持ち物。そう思う方もいるのだ。


 この問いにはユーディット様が答える。


「……家族だから分かり合えるなんて幻想ですわ。近くなればなるほど、相手が見えなくなるもの。その相手に心があることを忘れていくのでしょう」


 ユーディット様はご自分のことを思い返しているのだろう。視線はどこか遠くを見ていた。


「……そうかもしれませんね。ですが、手がかりがない以上、クララ様のご実家を訪ねてみませんか? 何かわかるかもしれません」

「そうだな……。ただ、俺が行くのはまずいかもしれない。俺の機嫌をとるためにクララの親父が何をするかわからないからな……」

「それだとミュラー現当主夫人の私が訪ねるのもまずいのでしょうか。バルドウィン様とツェーザル様は当主の座を争っているとあちらも思っているでしょうし。ご自分に都合の悪いことは隠すかもしれませんよね」


 私がクララ様に何か都合の悪いことを吹き込むと思って、クララ様の行方を教えてもらえないかもしれない。だとしたら。


「わたくしが参りますわ。わたくしはバルドウィン様と婚約しないと明言できますし、ツェーザル側に寝返ったように見せれば、あちらも信用してくださるのではありません?」

「そうかもしれませんが、お一人で大丈夫ですか?」

「でしたら、メラニー。あなた侍女の振りしてわたくしに付いてくればいいでしょう。地味な容姿をしているから、侍女の服を着ればきっと気づかれませんわよ」

「……さりげなく貶してますよね」

「いいえ。褒めていますのよ? それも一つの才能。裏工作にはもってこいの容姿ではありませんの」

「裏工作って……。私は一応伯爵夫人なんですが? まあ、いいです。それじゃあ私は侍女の扮装をしてきますから、ユーディット様はクララ様のご実家に先触れを出してください。で、ツェーザル様は……」

「俺も行く」


 まあ、大人しくここにいるような方じゃないとは思っていたからいい。むしろ、人任せにして何もしないような方だと失望するところだ。私は頷いて続けた。


「もちろんです。ただし、馬車の中で待機していてください。もしご実家を訪ねていらっしゃらなかった場合、情報収集が済んだら次の場所にすぐ移動しますから。あと、護衛をお願いします。騎士爵は飾りではありませんよね?」


 挑発的に私が言うと、ツェーザル様は不敵に笑う。


「ああ、荒事なら任せておけ。俺に喧嘩を売ったことを後悔するぐらいに痛めつけてやる」

「いえ、そこまでは望んでませんから。あくまでも護衛です。ご自分から喧嘩を売ったり、過剰に攻撃するのは控えてください。クララ様がそれを知ったら悲しみますから」


 クララ様がツェーザル様が喧嘩することを望まないのは、相手を傷つけることもだけど、きっとツェーザル様に怪我をして欲しくないのだと思う。


 そんなクララ様の女心がわかっているのかは甚だ不明だけど、ツェーザル様はぐっと言葉に詰まったものの頷いてくれた。


 支度を整えて、執事にバルドウィン様への伝言を残すと、私たちは馬車でクララ様のご実家へ向かった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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