女子力が高いのは
よろしくお願いします。
「もう大丈夫なのか?」
観念して朝食の席に着くと、正面にはバルドウィン様。いたたまれなくて思わず目を逸らしてしまった。
「オカゲサマデ。アリガトウゴザイマス」
おおう。何だか喋り方もおかしくなった。私の隣のユーディット様が噴き出した。
「わかりやすすぎますわ……! あなた一体どこの国から来たのです?」
「ユーディット様、うるさいです! そんなこと言うと、エルンスト様にあることないこと吹き込みますよ!」
「それは嫌ですわ!」
「だったらやめてくださいよ。立場的には私たち同じなんですから」
バルドウィン様を意識し始めた私と、エルンスト様を意識しているユーディット様。それをいじって遊ぶのならこちらにだって考えはある。
バルドウィン様は目をぱちくりとさせた。
「いつからそんなに仲良くなったんだ? それに立場的には同じとはどういうことだ?」
「バルドウィン様には関係ありません!」
私が鼻息荒く言い切ると、バルドウィン様は途端にしょぼんと肩を落とした。バルドウィン様の頭に犬耳の幻が見える。それも垂れた犬耳が。捨てられた犬って、こういう感じなのかもしれない。なんだか可哀想で構いたくなる。
「よーしよしよし……」
「何を言ってるんだ、メラニー?」
「いえ、バルドウィン様が寂しそうに見えたので慰めようかと。そうですね……バルドウィン様が女性になれば仲間に入れてあげます」
「無理だ」
「でしょうね」
またまたバルドウィン様はがくっと肩を落とした。これは恐らく、わかってるなら初めから言うな、と言いたいのだろう。先程とは意味が違うのがわかった。ふむふむ、勉強になる。
なんだ。普通に接するのって結構簡単だわ。こうして弄ればいいのね。
ユーディット様に、さあどうだ、とばかりに自信満々な笑みを向ける。だけどユーディット様は冷めた目で見返していた。
「……色気のない。寝込んでいた時の方が可愛かったですわよ、メラニー。バルドウィン様には関係ありません、ではなく、せめて乙女の秘密です、ウフフ、くらい言ったらどうですの?」
「乙女の秘密です、ウフフ」
「棒読みではありませんか! そこが駄目なのです! もういいですわ! 今日はこれから可愛子ぶる特訓をしますわよ!」
「ユーディット様。可愛子ぶるって言っちゃってます。天然じゃないと可愛くないと思いますよ」
「〜〜〜もう! ああ言えばこう言う! あなたも仮にも女性なのだから、もっと殿方を意識して……」
「仮でなくても立派な女性ですけどね。はいはいわかりました。ということでバルドウィン様。今日の予定は決まりました」
成り行きを見守っていたバルドウィン様が気まずそうに頷く。
「ああ。なんだか覗いてはいけない女性の一面を垣間見た気がするよ……。そうか、可愛く見えるように演技をするのか……」
「バルドウィン様だったらどう言いますか?」
バルドウィン様は腕を組んで小首を傾げる。
「そうだな……。私なら、当てたら教えてあげる、かな」
私は思わずユーディット様と顔を見合わせてしまった。言葉もさることながら、仕草が可愛い。
……嘘。バルドウィン様が一番女子力高いなんて……。
「……ユーディット様。可愛気って、やっぱり天然が最高だと思うんですよ」
「ええ、そうですわね……。なんでしょう、この敗北感。メラニー。わたくしたちのライバルはバルドウィン様のようですわね」
「いえ。どうせだったらバルドウィン様に女子力をご教授願う方がいいのではないですか?」
「くっ……。男性に教わるなんて……。悔しいですわ!」
ユーディット様はギッとバルドウィン様を睨む。バルドウィン様はたじろぐ。
「い、いや。私は別にそんな大層なものでは……。二人とも素敵な女性だと思う……ぞ?」
「どうして疑問形なんです? しかも目が泳いでるし」
「はっ! わたくしたちを見下しているのですね。そうなのですね!」
ああ……。バルドウィン様がユーディット様の闘志に火を着けてしまった。やれやれ。どう収拾をつけようか。
だけど、予想外に二人の戦いはすぐに終息した。一人の来客によって。
執事が困惑を滲ませながら食堂に入ってきて告げた。
「クララ・ミュラー様がお見えです」
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