体調不良のせい
よろしくお願いします。
「体調はどうだ?」
「はい……なんだか頭がぼうっとします……」
バルドウィン様に声をかけられ、ベッドの中で寝返りをうつ。
そうなのだ。別に体調はおかしくないと思っていたのだけど、夜になって熱が出た。あの意味のわからない不整脈は、体調が悪くなる前触れだったのだ。そうに違いない。
「色々と忙しかったから疲れが出たんだろう。しばらく休むといい」
「そうは言いますが、ユーディット様の件がまだ片付いてませんし、アルバン様、ツェーザル様も不穏な動きをしているみたいです。私が休むわけには……」
「いいんだ。元々は私の問題なんだから。君は気にせず休んでくれ」
体調が悪いと考え方も後ろ向きになる。私の問題だとバルドウィン様に線引きされたことがなんだか寂しく感じた。
「……私は頼りになりませんか?」
「いや。そうではなくて、病は気からと言うだろう? 思いを巡らせるのは結構だが、それだと良くなるものも良くならない。君の体調が回復したら頑張ってもらうから、今は休むのが仕事だと思えばいい」
「いえ……これでお金はもらえません……お金に見合った働きをしないと家族に顔向けが……」
「もう充分良くやってくれているよ。だが、何故そんなにお金にこだわるんだ? いや、もちろん、お金は大事だが……君の場合、それだけではないような……」
熱が上がってきたのか、頭がふわふわして考えがまとまらない。何を聞かれたのか、自分が何を言いたいのかもわからないまま言葉を紡ぐ。
「あの子たちを守らないと……私は姉ですから。両親はいつも私を頼りにしてくれる。信じてくれるから、その思いに応えたい」
「そうか……だが、君一人で背負う必要はないだろう? 君も家族で助け合ってきたと言っていたと思うが。兄弟も君を守りたいと思っているはずだ」
「……それは、駄目。あの子たちを傷つけるものから私が守るの。私は強いから……」
「それなら誰が君を守るんだ?」
「……いらない。私は一人で大丈夫。だからバルドウィン様も放っておいてくださっていいんです」
自分の足でしっかりと立たないと。誰かに寄りかかっては自分の芯がしっかりしないだろう。私には守るべきものが、守りたいものがたくさんあるのだから──。
バルドウィン様は私のそばに椅子を持ってきて座った。そして横たわる私の手を握る。
「そんなわけはないだろう。君は勘違いしている。強さというのは一人で何でもやることじゃない。自分では無理だと思ったら相手を信じて任せること。それも一つの強さだと私は思う」
「……私はちゃんと信じています」
「いや。愛してはいるのだろうが、信じてはないだろう。相手を守らなければならない存在だと決めつけて、相手の本質を見ようとしていない。それでは君の家族も悲しむよ」
思考力が低下しているとはいえ、バルドウィン様の言葉は胸に刺さった。私は結局、押し付けているだけなのだろうか。涙腺が緩んで視界が滲む。これも体調が悪いせい。そのせいで心が弱っているだけ。
「私の、自己満足……でしょうか」
バルドウィン様は指先で私の涙を拭ってくれた。
「体調が悪いときに責めるようなことを言ってすまない。だが、君は元気な時ははぐらかすから。ちゃんと向き合って話せる時に、と思ったんだ。自己満足とは言わないが、あれもこれも背負い込むことはない、と言いたかったんだ。兄弟もそうだが、今は私もいる。私は君の夫なのだから、家族、だろう? 甘えていいんだ」
「違う……あなたは雇い主で……」
「それならそれでいい。雇い主であっても、部下を守る責任がある。だから私に任せて休んでくれ」
「は、い……」
私の意識はそこから静かに沈んでいった。だけど、何となく覚えている。私の手を握ってくれた手の温もりと、髪をなでる優しい手を。
悲しい気分は何処へやら。温かい気持ちに満たされたのだった──。
読んでいただき、ありがとうございました。




