喧嘩するほど仲がいい?
よろしくお願いします。
「振り回すだけ振り回して、はいさようなら、なんて許せるわけがないだろう! 母上は乗り気になってるんだぞ? どうしてくれるんだ!」
「ご自分で何とかされてはどうですか? そもそもあなたの態度に問題があるからこうなったんでしょう。アーレンス夫人から聞きました。せっかくお見合いを用意しても、あなたがご自分でお相手の令嬢方に失礼な態度を取るせいで敬遠されてしまい、今では探すのが大変だとか。夫人はこうも仰っていましたわ。あの子は男色家なのかと」
「ぶっ! そんなわけがないだろう! 私はただ、飾り立てることにしか興味のない頭の軽そうな女に興味がないだけだ!」
真っ赤になって怒るエルンスト様。男色家と聞いた途端にバルドウィン様も微妙にエルンスト様から距離を取った。私も余計なことかもしれないと思いつつ、バルドウィン様に突っ込んでしまった。
「バルドウィン様……。例えエルンスト様が男色家だとしても、無闇に襲ったりはされないと思いますよ? 警戒する方が失礼かと」
「いや。まあ、わかってはいるんだが、昔のことを思い出してしまって……」
バルドウィン様はどこか遠い目になる。一体何があったのか気になるところだ。
二人でそんな会話をこそこそとしていたら、耳聡いエルンスト様が睨んできた。
「失礼なのはあなた方二人ともだ! 私の好みはミュラー卿では断じてないし、襲うつもりもない!」
「じゃあ、どういった方が好みなのですか?」
ついつい私も突っ込んで聞いてしまう。というか男色家であることは今、否定しなかった。まさか男爵、とか?
私のよこしまな思考をよそに、エルンスト様は腕を組んで自慢気に語る。
「自分をしっかりと持った強い女性がいいな。それに、私と対等に接してくれること。あとは私の機嫌を取ろうとしないこと……」
うん? それって……。そこまで聞いていたけど、私の頭には一人しか浮かんでこない。だけど指摘をするとまた烈火のごとく怒りそうだし。そう思って黙っていたのに、バルドウィン様がボソッと言った。
「ユーディットだな」
「言っちゃいましたね……」
「ん? どうした?」
「いえ、別に。空気って読めないものですからね……」
「君が何を言いたいのかわからないんだが」
「気にしないでください。それよりもほら……」
怒鳴るかと思ったエルンスト様はみるみる内に赤くなる。
え、まさか無自覚だった?
絶句するエルンスト様ではなく、ユーディット様が慌てて否定する。
「ち、ちがっ、わたくしじゃ、ありませんわ……! あなたからも何か言ってください!」
ユーディット様に促されて、エルンスト様が何度も頷く。そんなに頭を振ると目が回りそうだけど……。案の定、エルンスト様はぐったりと言葉を紡ぐ。
「……そうだ。こいつの場合は私と対等じゃなくて、私を見下している。よって当てはまらない!」
「……そんな悲しい事実を自信満々に言わないでくださいよ……」
不憫すぎる。エルンスト様は被虐趣味でもあるのだろうか。だったら、少々加虐趣味のありそうなユーディット様とはお似合いだと言える。
そしてユーディット様はまた明後日の方向から否定する。
「見下されているのはわたくしの方ですわ! 飾り立てることにしか興味のない頭の軽そうな女って何ですの! 立場上飾り立てなければならないこともあるのに、そんな女性の努力を真っ向から否定するなんて。あなたこそ何様ですの! だから男色家と思われるのです!」
「だから違うと言っているだろう!」
まあ、そうでしょうね。だって……。
「エルンスト様はユーディット様が好きですからね」
私の言葉に間髪入れず二人は声を合わせた。
「違う!」
「違いますわ!」
……物凄く気があっている気がするのは私だけ? もうこのままくっついてしまえばいいのに。
私の言葉を否定した後は、また二人で口喧嘩を始めてしまった。二人の会話についていけない私とバルドウィン様は、二人が私たちの存在に気づくまで放置されるのだった。
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