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マイペースな彼女

度々間隔が空いて申し訳ありません。

よろしくお願いします。

 着替え終わったユーディット様を連れて会場に戻ると、バルドウィン様が何かしたのか、静まり返っていた。これはこれで不気味だ。気にしつつもバルドウィン様に声をかけた。


「遅くなって申し訳ありません」

「いや。あれは私の落ち度だから、謝られると反対に心苦しい。すまなかった、メラニー、ユーディット」

「いえ、そんな……」


 そう言ってユーディット様は目を伏せる。先程とは打って変わって殊勝な態度だ。この変わり身の速さは見事だけど、それが反対にユーディット様の心の闇を映し出しているようで心配になる。


 だけど、私が大丈夫かと問うたところで逆効果になりそうだし……。パーティーの後でバルドウィン様に相談してみよう。バルドウィン様に向かって頷くと、バルドウィン様はわからないながらも頷き返してくれた。


 その後は滞りなくパーティーは進んだ。というのも、一番に突っかかっていたツェーザル様が妙に大人しかったから。これはきっとクララ様のお説教か何かのせいだろう。クララ様は悲しそうな顔でツェーザル様から距離を取っていたし。


 アルバン様はアルバン様で、何故か笑顔を浮かべて私を見ていた。はっきり言って気持ち悪かった。


 ユーディット様はまた強気な表情に戻っていた。それでも、時折苦しそうな表情を浮かべていて、私と目が合うとまた憎々しげに私を睨んでから目を逸らしていた。


 ユーディット様のご両親は、バルドウィン様に近づいてはユーディット様がいかに優れているかという話をひたすらするという徹底ぶり。ユーディット様を思いやる言葉の一つでもかければいいのに。ユーディット様を無視している二人の姿に複雑な気持ちになった。


 そうして初めてのパーティーは何とか終わった──。


 ◇


「お疲れ様」

「本当に疲れましたね……」


 最後の客を二人並んで入り口で見送る。正直、大きな魔法を使ってヘロヘロだったのを気力で乗り切ったのだ。今すぐにでも休みたい。


 屋敷に帰ろうと思って歩き出したら、足元がふらついた。


「あれ?」

「おっと」


 その場にへたり込みそうになったのをバルドウィン様が抱きとめてくれた。


「ありがとうございます」

「いや、それはいいんだが……」


 が? その後に何が続くのか。聞き返す前に何を思ったか、バルドウィン様は私を横抱きにした。


「バルドウィン様?」

「……罪滅ぼしにはならないが、これくらいはさせてくれ。巻き込んでしまってすまなかった」

「いえ、何かあるだろうなと覚悟してましたから。だから気にしないでください。これも業務のうち……でしょう?」


 そうそう。私だって忘れてたわけじゃない。ただあまりにも濃い方ばかりだったので頭の隅に追いやられそうにはなったけど。

 私の言葉にバルドウィン様は苦笑する。


「それなら手当を追加しないとな」

「ありがとうございます! というわけで下ろしてくださって結構ですよ。私は義務を果たしただけなので」

「まあ、いいじゃないか。これも手当だと思えばいい」

「ええ……?」


 それは違うんじゃ。だけど、バルドウィン様は下ろしてくれるどころか私を抱え直すと、しっかりとした足取りで屋敷へ向かう。


 困った。目のやりどころに困るのだ。目前にはバルドウィン様のはだけたシャツから覗く鎖骨。さすがにそこに顔を埋める気にはなれない。かといって顔を上げると至近距離にバルドウィン様のご尊顔が。離れていても美形だけど間近だと破壊力がある。仕事優先の私でもグラッときそうだ。


 ウロウロと視線を彷徨わせた私に、バルドウィン様は気づいたようで怪訝に覗き込んでくる。だから近いって。この方は自分の顔の良さをわかってやっているのだろうか。イラッとしたのでついついバルドウィン様の頬をつねってみた。


「ふぁにをふるんだ」

「近いんですよ。わざとやってるのならやめてください」


 言葉の最後に合わせてつねった手を離すと、バルドウィン様が眉間に皺を寄せる。


「意味がわからない。さっきから何か様子がおかしいから心配したのに」

「そりゃそうでしょう。急に抱き上げられて至近距離に顔があると、どこを見ていいのかわかりませんよ」

「どこでも好きなところを見ればいいだろう」


 バルドウィン様は不思議そうだ。本当に、この鈍さがユーディット様を追い詰めたんじゃないかと疑いたくなる。思い切りため息が漏れた。


「はあ……。いいですか? あなたは美形なんです。これだと気のなかった女性もグラッときそうですよ。わかってやっていたら本当にタチが悪い……もしかしてユーディット様にもこんなことをしました?」

「いや、こんなことはしたことはないが……って、待ってくれ。君もグラッときたのか?」

「は? そこで何で私が出てくるんです? 別に私がどう思うかは関係ないと思うんですが」


 バルドウィン様が何を気にしているのかがわからなくて首を捻って考える。どうして気にするのか……ああ、そうか。そこでようやく思い至った。


「ああ、契約結婚だから私に好かれると困るからですね。それなら大丈夫です。貰うものだけ貰えばちゃんとお別れしますから。それに、私は外見より中身重視なので」


 だからバルドウィン様の外見には惑わされない、と続けようとしたらバルドウィン様がブツブツと呟く。


「それは私は外見だけで中身が魅力的じゃないということだろうか……」


 徐々に小さくなる声が子守唄に聞こえてくるから不思議だ。バルドウィン様の温もりも相まって眠くなってきた。


「すみません、眠くなってきて……」

「ああ。後で起こすから眠るといい」


 そうして私はバルドウィン様に体を預けて眠ってしまったのだった。その後、バルドウィン様の服を掴んで離さなかったようで、寝覚めて一番に隣に横たわるバルドウィン様を見て思わず殴ってしまったのは仕方ないと思う。


 だけど、バルドウィン様にそのことでしばらく恨みがましく文句を言われるのだった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 鎖骨にはドキドキするのに匂いは大丈夫で逆にドキドキさせるとは… なかなかの魔性の女っぷりですねw
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